最近立て続けに著書を出版されている安田雪先生の最新刊にして,おそらく最も一般向けに書かれた書物。大手書店で平積みされ,多くの人に読まれているようだ。ただし,本書の標題や帯を見て,上司や部下とうまくつき合う方法,あるいは友達づくりの方法を書いた本と期待するのは早計だ。
本書の冒頭には次のように書かれている:
本書の読者が「志の高い」少数の人々に限られるわけではない。夢は誰しも持つことができるし,多くの人々の心の底に必ずある。それをいかに顕在化させ,明確にするかだ。そして仲間たちとの旅が始まる。そのとき夢の大小とは関係なく,仲間力が人生の悦びの中心になるのではないかと思う。
本書を読みながらぼくの頭に浮かんだのは,最近亡くなったスティーブ・ジョブズのことだ。天才といわれ,暴君ともいわれる彼にどんな仲間がいて,どんな仲間力があったのかが気になる。断片的なエピソードでしかないが,ジョブズのもとで5年間働いた福田尚久氏のインタビューが参考になる。
NHK「クローズアップ現代」が放映した福田氏へのインタビューのうち,「仲間力」に関して面白い部分はカットされたが,ウェブで読むことができる。ジョブズがどんなときにどんな理由で部下を怒るのか,またどんなときに謝罪するのかが描かれており,非常に興味深い。
今後のアップルについて,福田氏は
ジョブズとルフィの仲間力には共通点もあれば,異なる点もあるに違いない。本書の最後で著者が述べるように「託す」ことができるかが,最終的に仲間力の真価を問うものになる。つまり「ジョブズの仲間たち」が,その精神を次世代に「託す」ことができるならば,その仲間力は賞賛に値する。
最後はスティーブ・ジョブズの話ばかりになってしまったが,個人的にはさらに,今後の共同研究への取り組み,ゼミの運営などについて大変参考になった(何かを成し遂げたあとの「宴」の重要性だけを学んだわけではない^^)。
ルフィの仲間力 『ONE PIECE』流、 周りの人を味方に変える法 | |
安田 雪 | |
アスコム |
本書の冒頭には次のように書かれている:
仲間は、夢を共有する人のこと。そう・・・本書で取り上げている仲間は,いつもお互いに毛づくろいしているような間柄ではない。大ベストセラーのコミック『ONE PIECE 』に描かれている,どでかい理想を共有し,そのために協働する仲間である。したがって,本書の最初のメッセージは以下のようになる:
もっと言うなれば、
仲間とは、一人では到底かなえられないような夢を共有する人たち―
仲間を集めて何をしたいのかを明確に持たない限り,仲間は集まらないのです。まず「旗を掲げる」ことから始まる。そこを出発点に,いかに仲間を集め,助け合い,信頼を強め,一緒に成長していくかが『ONE PIECE 』の様々なエピソードを引用しながら語られていく。その背後には,社会ネットワーク分析の指導的な研究者である著者の学識が隠し味として潜ませてある。
本書の読者が「志の高い」少数の人々に限られるわけではない。夢は誰しも持つことができるし,多くの人々の心の底に必ずある。それをいかに顕在化させ,明確にするかだ。そして仲間たちとの旅が始まる。そのとき夢の大小とは関係なく,仲間力が人生の悦びの中心になるのではないかと思う。
本書を読みながらぼくの頭に浮かんだのは,最近亡くなったスティーブ・ジョブズのことだ。天才といわれ,暴君ともいわれる彼にどんな仲間がいて,どんな仲間力があったのかが気になる。断片的なエピソードでしかないが,ジョブズのもとで5年間働いた福田尚久氏のインタビューが参考になる。
NHK「クローズアップ現代」が放映した福田氏へのインタビューのうち,「仲間力」に関して面白い部分はカットされたが,ウェブで読むことができる。ジョブズがどんなときにどんな理由で部下を怒るのか,またどんなときに謝罪するのかが描かれており,非常に興味深い。
今後のアップルについて,福田氏は
・・・スティーブは非常にシンプルな人なので。一貫しているのはシンプルなことなのですよね。あれだけのマネジメントチームが10何年、同じチームでやってこられないですよね。やっぱり、とことんどうにかするぞという気持ちをすごく強く持った人しかあそこにいないのですよ。と述べる。ジョブズのスピリットを「10何年叩き込まれている人たちがゴロゴロいる。すごい力だと思いますよ。だから次の課題は、その人たちが次の世代に同じように伝えられるかですよね、精神を」という。
ジョブズとルフィの仲間力には共通点もあれば,異なる点もあるに違いない。本書の最後で著者が述べるように「託す」ことができるかが,最終的に仲間力の真価を問うものになる。つまり「ジョブズの仲間たち」が,その精神を次世代に「託す」ことができるならば,その仲間力は賞賛に値する。
最後はスティーブ・ジョブズの話ばかりになってしまったが,個人的にはさらに,今後の共同研究への取り組み,ゼミの運営などについて大変参考になった(何かを成し遂げたあとの「宴」の重要性だけを学んだわけではない^^)。