Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

あなたの内なる天才

2008-04-25 09:43:01 | Weblog
昨日,外書購読の授業に現れたのは10数名。このあたりで安定化するかどうかは,まだわからない…なぜなら,人数が減ると発表に当たる回数が増え,「コスト」が増えるから(そのことに気づいた学生もいたようだ)。「均衡」に達するのは連休明けだろうか。

この授業で取り上げているのは,以下の本。創造的認知(creative cognition)の研究者たちが,一般向けにわかりやすく研究の解説をしている(逆にその分ボキャブラリが増えて,英文としては難しくなる)。その趣旨は,一握りの天才でなくても,誰もがクリエイティビティの芽を持っており,それを延ばすこともできる,ということ。

もちろん,天才的な芸術家や科学者との距離は無限に遠いように思える。確かにそのとおり。しかし,その道筋は不連続ではない。日常生活での些細な問題の解決と科学上の大きな発見の間に,認知科学的には共通の原理が見いだせるという。したがって,それを自覚して,意図的にクリエイティビティを発揮することが可能となる。非常に前向きな話である。

Creativity and the Mind: Discovering the Genius Within

Perseus Books

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同じ著者たちによる専門的な研究書は翻訳が出ている。

創造的認知―実験で探るクリエイティブな発想のメカニズム
Ronald A. Finke,Steven M. Smith,Thomas B. Ward
森北出版

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先日,科研費申請の件で同僚と打ち合わせたとき,クリエイティビティのマネジメントは可能だろうかという話題になった。マネージできるレベルのクリエイティビティでは,人々の望む「例外的な創造物」は生まれない,ともいえる。だがそれだけでは「例外は例外的にしか生まれない」といっているに等しい。

おそらくは「優れた例外が生まれるには偶然と必然の双方が作用する。最終的にはまさに例外的要因で決まるが,それ以前の部分はセオリー化できる」といったあたりが真実だろう。野球に勝つにもセオリーはある。だが最後の最後には,運とか天賦の才とか,説明不能な要因が加わる。それを語ることにおいて野村克也の右に出るものはいないだろう(脱線)。

誰もがスティーブ・ジョブズになれるわけではない(それはジョブズ自身にとってもそうだろう)。しかし,偶然よりは高い確率で,何回かはジョブズになることができるかもしれない。その方法の発見が,目指すところである。