Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Marketing Science Classic Hits

2008-04-04 20:45:43 | Weblog

Marketing Science (INFORMS) の最新号では,これまで同誌に掲載された論文のうち,引用が最も多いものを再録している。

1. Richard H. Thaler, Mental Accounting and Consumer Choice

2. Peter M. Guadagni, John D. C. Little, A Logit Model of Brand Choice Calibrated on Scanner Data

3. Abel P. Jeuland, Steven M. Shugan, Managing Channel Profits

4. Erin Anderson, The Salesperson as Outside Agent or Employee: A Transaction Cost Analysis

5. John R. Hauser, Steven M. Shugan, Defensive Marketing Strategies

6. Timothy W. McGuire, Richard Staelin, An Industry Equilibrium Analysis of Downstream Vertical Integration

7. Alan Pasternack, Optimal Pricing and Return Policies for Perishable Commodities

 1. の著者は行動経済学者として有名だ(東洋経済4/5号「これからの世界はこう動く! 経済超入門」で,インタビューに応じている)。この論文では,基本的にはプロスペクト理論に依拠しつつ mental accounting を主張。何となく総花的な印象があるものの,その後の研究に大きなインパクトを与えた論文だ。ちなみに最近,彼の著書の新訳が出た。ずっと前に原書を読み,さらに旧訳を買ったぼくは,まだ新訳を買っていない。

セイラー教授の行動経済学入門
リチャード・セイラー
ダイヤモンド社

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2. の Guadagni and Little は80~90年代のスキャナーパネルデータ・ブームのなかで最も引用された論文であることは間違いない。確かに「古典」という位置づけに相応しい論文といえるだろう。スキャナーパネルデータを用いた研究は,その後計量手法を高度化しつつ発展しているが,当時期待されたような「マーケティング情報革命」が起きたかどうか。

Little を含むマーケティング・サイエンティストたちが,(インターネット以前の)90年代前半に寄稿した「革命」に関する論集。いまでもHBS出版が売り続けているのは,現在でも通用する議論が含まれていて,それなりに売れているから?

The Marketing Information Revolution

Harvard Business School Pr

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5 の Hauser and Shugan も一世を風靡した。競争をより明示的にモデル化することで,マーケティング・サイエンスは戦略的意思決定にも使えるのではないかという希望を与えてくれた。その延長線上に,より高度なゲーム論モデルが展開している。しかし,こちらのラインも理想に近づいたといえるかどうか・・・。

にしても,ここで二度も顔を出している Shugan さんはすごい・・・。

この3つ以外の論文は(残念ながら?)読んだこともなければ,名前を聞いたことさえない。自分の勉強範囲が限られていることを,いまさらながら思い知る。これらの「古典」を輪読するような大学院クラスのゼミが,日本のどこかで開かれているだろうか? そうだとすれば,日本のマーケティング・サイエンスにはまだ未来がある。

といいつつ,ぼく自身はあまり読む気がない・・・。


拡大するブロガーと縮小するブロガー

2008-04-04 02:16:57 | Weblog

興味深い調査結果が発表された:

 ビデオリサーチとニフティ、ブログサイトに関する共同研究調査を実施

その結果によれば,

アクセス数の多いブロガーは、記事を書く際に、読み手を強く意識して記事の更新を行っており、商品やサービスに関する記事を更新する際には、自分の体験を踏まえると同時に、他者が発信する情報も収集・処理することで、偏りのない記事にすることを心がけていることが分かった・・・

という。「読み手を強く意識」するといっても,ターゲティングがうまくいってないと,アクセス数は増えないだろう。当ブログのように,マーケティング・サイエンス&エージェントベース&クリエイティブ・マネジメント・・・などなど,ニッチを次々掛け合わせたようなポジショニングでは,ターゲットは極小化していく(まさに segment of one ! )。

ブロガーには,アクセス数拡大を狙うブロガーと,ニッチで満足しているブロガーがいる。これは,先日発表したアフィリエイト広告のシミュレーションで仮定した,コミッションを狙うフィリエイトと,自己主張にこだわるフィリエイトの類型化と似ていなくもない。ただ,拡大型のブロガーは金銭目的の有無に関わらず,自己の思想の拡大を狙っている。ターゲットをより広くとるという,戦略の差がそこにある。

ぼく自身は,いまのところ完全に小さなニッチにこだわっている。ただし,複数のニッチを結びつけて,いずれはそれが活性化して,「それなりの」コミュニティにならないかと夢想している。