ザ・ジャムが79年にリリースした4枚目のアルバム「SETTING SONS」の
スーパー・デラックス・エディションがリリースされた。一昨年の「THE GIFT」の
箱と同様に今回も3枚のCDと1枚のDVDで構成され、当時のツアー・プログラムや
ファン・クラブ・マガジンのレプリカが添付されている。
よく知られているように、このアルバムは三人の幼馴染が成長してそれぞれの人生を
歩むというコンセプト・アルバムになるはずだったが、コンセプトとしては未完成に
終わっている。それは三者三様の道を歩いた後に再び集まることに意味を見出すのが
難しい、或いはその価値が無いとポール・ウェラーがアルバム製作中に感じたから
ではないか、というのが私の勝手な思い込みである。
ここまでたった3年で4枚のアルバムを出し、疾走してきたウェラーがふとそれまでの
歩みを振り返ってしまい、これからもこんな音でいいのか、成長した自分のやりたい音を
具現化できるのがこのメンバーなのか、ということを考え出した時期なのではと
確固たる根拠もないのに私はそう思ってしまうのであった。モッズが好きなモータウンの
曲ということで『HEAT WAVE』をカバーするにあたり、ホーンやピアノを加えている
ところに次へのステップの萌芽を感じる。
当初、コンセプト・アルバムの製作を意図していたせいか、アルバム収録曲とは別に
シングルとしてリリースされた曲の数々の方に好きな曲が多いというのも、複雑な
気分を増幅させる。
そんな重い思いもあって、特に熱心に聴いた盤でもないのだが、こうやってデモや
ライブに更に映像をまとめて見聴きすると、最早ノスタルジーと同レベルではあるが
「ああ、ジャムっていいなあ。」と安直な地点に落下するのであった。(笑)
72ページのハード・カバー・ブックには、例によって雑誌や新聞の記事に各国の
シングルやライブのチケットの写真が大量に掲載されている。目を惹いたのは
本盤のテスト・プレス盤の写真で、当初の曲順が全く違っていたことがわかる。
やはり世に出た盤の流れがスムースだ。そして、『HEAT WAVE』がラストに配された
意味をまだ考えている私がいる。