私の世代だとクインシー・ジョーンズといえば「THE DUDE(愛のコリーダ)」ということになるのだが、
クインシーのポピュラー・ミュージックにおける貢献というのは、ジャズやソウル、ポップスという枠を
軽く飛び越えるという意味で素晴らしいと思う。
今、クインシーの音楽をわざわざジャズの枠組みで聴くのもどうかと思うのだが、ジャズ・ファンが
100枚のアルバムを選んでも名前すら登場しないだろうから、ロック者が選べばこういう名前が
でてくるという意味で「門外漢が聴くジャズ100枚」に登場してもらうことにした。
掲載写真は71年のアルバム「SMACKWATER JACK」。アルバム・タイトル曲はキャロル・キングの
カバーだし、マーヴィン・ゲイの『WHAT'S GOING ON?』のカバーもある。この2曲をとりあげることから
して、ジャンルを軽く飛び越えそうな感じがする。実際、アルバムの音は71年にこの音は早かったのだろうなと
思わせる音で、フュージョンという言葉が指す音の3歩先を行っていたのだなあと思わずにいられない。
各曲ごとにソロイストの名前が明確に記されているのが有り難い。例えば『WHAT'S GONG ON?』では
ヒューバート・ルイス、フレディー・ハバード、トゥーツ・シールマンズ、ミルト・ジャクスン、ジム・ホールといった
錚々たる面子の名前が確認できる。もう、立派なジャズの人達ばかりである。(笑)
最後の曲『GUITAR BLUES ODYSSEY:FROM ROOTS TO FRUITS』では、ギターという楽器が
果たしてきた役割をコラージュ感覚を活かして端的に表わしていて、ブルーズから始まり、バンドの中で
コードを弾く地味な存在から、華麗なソロを担当する場面までをバック・ミュージックの変遷とともに辿るのが
面白い。ここでもジム・ホールやトゥーツ以外に、エリック・ゲイル、ジョー・ベックがクレジットされ御丁寧に
何番目のソロが誰のものかも判るようになっている。ほとんどハード・ロックというような音を経て最後は
ブルーズに回帰するのがクインシー自身あるいは多くのアフロ・アメリカンの想いを代弁しているようでもある。
下世話な話だが私を含む一部の日本人にとっては、収録曲である『IRONSIDE』は「鬼警部アイアンサイド」と
いうより「ウィークエンダー」といったほうが通りがいいというか、話が早い(笑)のだが、そういう楽しみ方もできる
というわけでクインシー・ジョーンズに関しては、アルバム「SMACKWATER JACK」を選んだ。
それにしても。私が『愛のコリーダ』のオリジナルがブロックヘッズのチャズ・ジャンケルだと知るには、
かなりの時間がかかったのであった。(笑)