T. レックスの71年のアルバム「ELECTRIC WARRIOR」のスーパー・デラックス・エディション(掲載写真左)が
リリースされた。オリジナル・アルバムとシングルを収録したCDが1枚、デモや別テイク等を収録したCDが
1枚、プロモやテレビ出演時の映像を収録したDVDが1枚の計3枚組。上品な装丁のブックレット
(掲載写真右)やメモラビリア、コースターといった付属品も楽しいボックスである。
オリジナル・アルバムの素晴らしさは今更とやかく言うまでも無いものの、初めて聴いてから30年弱の年月が
経つのだが、今聴いても異様に盛り上がってしまう。震えるようなマークの声、覚えやすいリフと正反対の
何だかよくわからない垂れ流しのギター・ソロ、流麗なストリングス・・・・。全てが最高だ。
学生時代に、サークルの新入生勧誘の際の立て看板に「SLIDER」を使ったのは、あのジャケットが明るい
感じだったから採用したのであって、本当はコレを使いたかった。(笑)
アルバム冒頭の曲が『MAMBO SUN』という比較的地味な曲なのが凄い。あの『JEEPSTER』は3曲目なのだから。
マークとブルーズの取り合わせと言われると、何だかダラダラしたジャムを想起するのだが、A面最後の
『LEAN WOMAN BLUES』は大好きだ。特に何て事のないコード進行なのだが、マークの声とギターが
巷で持ちあげられる数多のホワイト・ブルーズの方々とは一線を画す出来にしている。
B面頭は、勿論『GET IT ON』。フロ&エディのクールなコーラス、イアン・マクドナルドの熱気を孕んだサックスが
心地よい。初めて聴いた時から今に至るまで思うことは、簡単なリフやコードを弾き続けることは傍から見て
「あの人はギターが上手だ」なんて思わせないのだけど、それ以上に誰もが口ずさめて真似出来て、一度聴いたら
忘れられない音を出すことのほうが余程記憶に残り、重要であるということだ。
『GIRL』『LIFE'S A GAS』の美しさも特筆すべきだろう。『GIRL』は、ギターの後ろで鳴るホルンの美しさにも
惚れ惚れした。勢いに溢れていたであろうが、狂乱の一夜を繰り広げていたT.レックス御一行様以上に
トニー・ヴィスコンティーは実に冴えていたのだ。大抵の感覚ならアルバムの真ん中に配しそうな『RIP OFF』で
終わるというのも凄いと思う。今回はシングルのB面をまとめてくれたのも嬉しい限り。
この箱の目玉はディスク2に収録されたデモや別テイクということになろうが、それらの幾つかは初登場では無い。
まず「ELECTRIC WARRIOR OUTTAKES 1971」というブートレグで、このアルバム関係のセッションを
聴くことができ、次いで96年に出た「ELECTRIC WARRIOR SESSIONS」で更に多くの曲の別テイクを
聴くことが出来た。『GET IT ON』が実は完奏することを知った時の感激と驚き、わかっていただけるだろうか。
「SESSIONS」には滅茶苦茶格好良い『SUMMERTIME BLUES』を、「OUTTAKES」には、今回のボックスに
収録されていない長尺の『MONOLITH』を聴くことができるので、この2枚の役割は終わらない。
勿論、今回のボックスで初めて聴くことができるテイクも多数ある。
DVDに関しては、正規DVDとして初登場の謳い文句のある『HOT LOVE』収録が目玉だろうが、熱心な
ファンなら、ここに収録された10曲は全て既に見たことがあるだろう。まあ、エルトン・ジョン参加の
トップ・オブ・ザ・ポップスでの『GET IT ON』やプロモ・ビデオをまとめてくれたのは便利ではある。
何はともあれ、T.レックスの最高傑作を味わいつくすには、至れりつくせりのボックスである。
贅沢は言わないので、「SLIDER」も同じような箱をお願いします。贅沢か・・・。(笑)