安値で売っているブートレグを見つけると、つい買ってしまう。掲載写真のザ・フーのブートレグも
そんな1枚。CDR2枚とDVDR1枚で1700円くらいなら、いいだろうという感じで。(笑)
CDRには2010年3月30日のロイヤル・アルバート・ホールでの演奏が、まずまずのオーディエンス録音で
収録されている。この日は「四重人格」を全曲演奏したことで、ファンには広く知られた日である。
なんだかザ・フーは、「トミー」と「四重人格」を一定の年数を置いて交互にフューチャーするショーを
やっているようにも思えるが、得意な出し物が複数あるということは良いことだ。(笑)
外(社会)を見つめた「トミー」と内(個)を覗いた「四重人格」。社会を巻き込んだ分だけ「トミー」の方が
大きく世の中を動かしたのは明白だが、どちらが優れているとかでなく両方揃ってこそのザ・フーである。
「皆と一緒」で「皆で楽しく」だけではやってられない。
「わかってたまるか。」「俺は俺」という、個人と世間との葛藤を抱え、例え見つけたのが妥協の接点だとしても
それを乗り越えないで、何がロックなんだという思いが、「四重人格」を聴く度に込み上げてくる。
このブートレグを聴いていると「四重人格」を初めて聴いた18歳の「ある一日」が鮮明に記憶に蘇る。
あの日も雨だったなあ。
このブートレグに添付されたDVDRには2010年のスーパー・ボウルでの映像が収録されている。
実際に日本でリアル・タイムで見た映像は、音と画がシンクロしていないシロモノだった。後日発売された
スーパーボウルの試合のDVDのボーナスで収録されたライブ映像も、音と画がシンクロしていないという
書き込みをどこかで見たことがあり、どうしたものかと思っていたのだが、このDVDRで見ることができる
映像はしっかり音と画が同期していて、一安心であった。
11月には遂に「四重人格」のスーパーDXエディション
が発売される。なかなか大袈裟な装丁で場所塞ぎではあるが、万全の態勢で臨まなければならない。
正直なところ、私の好きなファッションはどちらかというとモッズではなくロッカーズ寄りである。
パーカーにもベスパ(もしくはランブレッタ)にも、何の興味もなかった。
それでも「四重人格」は私には思い入れの深いアルバムだ。
ロックが本来担った役割である個のフラストレーションの発散。それは、単純に気の済むまで己の好きな事をして
解消するか、ほんの少しの理解を得て拡散するか、時の流れと共に緩やかに消化するか・・・・。
そんな幾つかの方法を上手に組み合わせて大人になればよいと、教わったのがこのアルバムなのだから。