ジュリアン・テンプルは、最早その筋では重鎮と言ってもいいほどの地位を確立している。
ただ、個人的に私はそれほど好きではない。映画だとカット割りが多く、それがスピード感を
出していると捉える事も出来るが、その編集の仕方が細かすぎて気になる場面が多々ある。
今回の映画「OIL CITY CONFIDENTIAL」も、如何にもジュリアン・テンプルという感じが
編集の端々から感じられる。
但し。今回は最初の着眼点が素晴らしい。
大体、ドクター・フィールグッドの映画を創るという、その意気だけでO.K.じゃないか。
生前のリー・ブリロー、ウィルコ、スパーコ、フィガーの4人のインタビューを軸に、そのエピソードを
わかりやすく説明する「再現フィルム」、数少ないライブ映像を挟んで構成される映画は、メンバーの生い立ち、
バンド結成からウィルコが脱退するまでがメインであるが、勿論リー・ブリローの死にも
焦点はあてられる。ウィルコ脱退のいきさつや、リーとウィルコの確執といった事は
ファンなら知っていることがほとんどだが、当事者達の口でそれらが語られると真実の重みが
一際増す。
演奏シーンのほとんどは75年のサウスエンド・カサールでの映像「GOING BACK HOME」と
テレビ番組O.G.W.T.からのもの。断片的な収録なので、過去にDVD化された「GOING BACK
HOME」はともかく、ボーナス映像でO.G.W.T.は曲が完奏する形で収録してくれたらよかったのにと
思うが、これは映画とは関係ない話なので仕方ないか。
私は勝手に「ウィルコは気難しい人」というイメージを持っていたのだが、映画でのウィルコは饒舌だ。
昔の恋愛から今の趣味に至るまで、とにかくよく話す。これは監督のジュリアンを信用しての所作で
あろうが、日本版のボーナス・ディスクでのインタビューでもよく喋るので、本来はこういう資質の
人なのかもしれない。ステージでのエキセントリックな動きからは想像もできないのだが。(笑)
あっ、でも相方がウィルコに話しかけたら気軽にサインしてくれたので、やっぱりいい人なのだろう。(笑)
動くドクター・フィールグッドを見たことがなければ、まずは「GOING BACK」を、そして今回の
映画「OIL CITY CONFIDENTIAL」と見れば、彼らの素晴らしさがより理解できるだろう。