掲載写真はロジャー・ウォータースの5種のソロ・アルバム(7枚)とDVD1枚の計8枚が、
コンパクトなボックスに収納されたもの。未発表曲や未発表テイクといったボーナスは
一切無いので、過去盤を全て所持する方には無用の箱だが、私のように2枚しか持っていない
者には便利な箱である。私の購入価格は3379円あったので、値段的にも満足だ。
解散するまでのピンク・フロイドの作品の中でも最後期の「THE WALL 」「FINAL CUT」は
どちらかというと、テーマが重いことや音響的音楽的遊びが少ないこともあって、一般的な傾向として
好きな作品の上位に挙がることはあまり無い。それでも私は、この明らかにロジャー主導の
2作は好きで、その延長でロジャーのソロ作も買っていた。だが、それもいつしか個人的に
退屈な感じが強くなって以降は興味が向かなかったのだが、今回は遅れを取り戻す良い機会である。
とはいうものの、流石に2枚組のオペラ「CA IRA」は辛くて、まだ全てを聴いていない。
こういうことを書くと自分がいかに了見の狭い人間であるかの証左に他ならず、恥ずかしい限りなのだが
伝統的なクラシックに何の興味も無いし、フランス革命にも興味は無い。ピンク・フロイドを牽引した
ロジャーが、どんな音楽をつくるかという一点のみが興味の対象なのだが、ロジャーが歌う訳でも
ない、この作品をどう取り扱うか、正直なところ持て余している。
「これはアーティストとして『取り組むべき作品』であり、極東の島国の人間に欧州の崇高で格式高い伝統と
歴史なんざ理解してもらわなくて結構。」と、ロジャーに言ってもらったほうが、余程気が楽になるのだが。
87年の再結成ピンク・フロイドには最初は喜んだが、やがて私には特に意味の無いように映った。
それはギルモアよりロジャーに肩入れする私にとっては当然の帰結だったのだが、今回の箱にも
添付されている2000年に収録されたDVDを見ると、フロイドの楽曲はやはりロジャーに歌って欲しいと
思うのだ。
「ロジャーはザ・ウォールに固執し過ぎだ」という意見もあろう。再結成の際にギルモアのフロイドは、
ロジャー抜きでフロイドを名乗る条件の一つとして、ザ・ウォールに関する権利をロジャーのものと
したので、ギルモア・フロイドではザ・ウォールを再現できなかった。これを逆手に取ったかどうかは
知らないが、ロジャーがザ・ウォールをメインの演目に据えることは、何ら不思議ではないのだ。
DVD『IN THE FRESH』はNTSCでリージョン・フリー。ザ・ウォール~アニマルズ~炎、そして
狂気の主要楽曲の演奏で話題になった映像だ。
未見の方は、この後E.C.の相棒となる若きドイル・ブラムホールの雄姿を、是非見ていただきたい。
スノーウィー・ホワイトと並んでギターを弾くシーンは、ドイルが左利きということと二人が使用する
ギターが対照的なこともあって、実に格好良いのだ。