以前、カバー・ソング100選を選定するにあたっての「縛り」の一つとして、ブルーズのカバーは選ばないと書いた。
その理由の一つとして、ロックから遡ってブルーズを知ったので何となくカバーと言われてもピンとこなかった
というのがある。レッド・ツェッペリンやクリーム、ジョン・メイオールに勿論ストーンズといった連中の演奏を聴いて
その元歌を探したので、「どちらを先に聴いたか、どちらに先に親しんだか」という微妙な感覚が、先の
「縛り」に結びついたのだ。もっと正直に言えば、今更クリームやジョニー・ウィンターのブルーズ・カバーを
わざわざ100曲の中に入れたくなかった、というのもあった。ブルーズのみの名演・名カバーを集めた
CDRを編むなら、話は別だが。
ところが。自身のルーツの一つにブルーズというのは間違いなくある。レゲエやジャズのカバーは選んで
ブルーズのカバーを選ばないのも何となく片手落ちのような気がして、少々モヤモヤしていた。
そんな時、何気に聴いたグルーヴァーズの『GROOVAHOLIC』の中のワン・フレーズが耳に突き刺さった。
蘇るスクリーミンJay・・・・
R&Bだろうとブルーズだろうと、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスは、どちらのジャンルからも正統派として
扱われることは余り無い。それでは当ブログではブルーズの代表として登場願おうではないか、という訳である。
ジェイと言えば何は無くとも『I PUT A SPELL ON YOU』である。掲載写真左の「FRENZY」は82年に出た
コンピレーションで56/57年のオーケーでの録音を収録している。右の盤「PORTRAIT OF A MAN」は95年に
出たコンピレーションで、こちらはオーケー時代から90年代半ばまでの曲まで広く集めていて、
どちらの盤でも『I PUT A SPELL ON YOU』のオリジナル録音を聴くことができる。
この曲のカバーは多くあるが、おそらく最も有名なのがC.C.R.の
バージョンだろう。この混沌とした感覚はオリジナルのバージョンが持つ不気味さに、オリジナルには無い当時の
アメリカの若者が抱えていた苛立った気分を加えて出来あがったような気がする。アーサー・ブラウンや
C.A.クインテットといったところのカバーも面白いのだが、やはりここはC.C.R.のバージョンを選出したい。
ジェイは人を驚かせ楽しませることを、何より自身が楽しんで
ライブ活動をしていた。ライブの冒頭に棺桶の中から登場するなんて、この人くらいのものだろう。
上の画像は、相方がジェイ・ホーキンスに書いてもらったサインである。字が丁寧なので笑ってしまった。
きっと、真面目な人だったのだろうなぁ。