ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/11/24 演舞場花形歌舞伎夜の部③海老蔵の澤潟屋型「四の切」!

2006-12-02 23:58:19 | 観劇
「四の切」の観劇は3回目。一昨年7月歌舞伎座の右近で澤潟屋型。昨年5月歌舞伎座の菊五郎で音羽屋型。そして今回の海老蔵。市川家の弟子筋の澤潟屋の型を宗家の海老蔵が継承するということで話題になっていた。猿之助が新しい歌舞伎創造への挑戦を続けてきたことを尊敬しているという海老蔵が申し入れ、猿之助も喜んで指導したというエピソードを葵太夫のHPの「今月のお役」で読んで嬉しかった。実は私、元三之助のうち海老蔵だけが宙乗りデビューがまだだったのでこの演目を選んだのではないかという推測もしていた。それにしてもまぁ海老蔵が大先輩の猿之助の芸の継承にあたりきちんと敬意をもってのぞんだというのは喜ばしいことだ。猿之助のそれは未見で終わりそうだが、右近だけの継承では大きな劇場での上演はされないだろうから海老蔵も継承したことの意義は大きいと思う。澤潟屋型だからこそ笑三郎・段治郎・猿弥らの一門も活かされたという面もあるし。さてさてどうだったかというと.....。

3.『義経千本桜 川連法眼館』市川海老蔵宙乗り狐六方相勤め申し候
義太夫狂言の大作『義経千本桜』の四段目の切(最終)部分にあたるので通称が「四の切」。あらすじは以下の通り。
義経が身を隠す吉野の川連法眼の館。奥州に戻っていた佐藤忠信は1年ぶりに義経の元に帰参。義経は静御前の所在をたずねるが知らないという。義経は自らの九郎の名も与えて静御前を預けたのにおかしいと、忠信の詮議を亀井や駿河に命じる。そのところへ静と忠信が到着したという知らせ。久しぶりの再会ののちに静に忠信の所在をたずねるが姿が見えないという。きけば度々姿を消すが初音の鼓を打てば現れると静は不思議な体験を話す。二人の忠信を分かれて詮議することにし、静は同道してきた忠信を調べることに。初音の鼓とは帝よりそれを賜った義経が静と伏見で別れた時に与えていたもの。果たして鼓を打つと忠信が現れる。静が問い詰めると観念した忠信は本性を明かす。その鼓は千年生きた狐の夫婦の皮からつくられ、自分はその子どもだという。狐が忠信に化けて鼓を慕ってついてきたことに驚く静だが、やがて親を慕う狐の情に打たれ、義経ともども兄弟で争っているような人間よりも情の深い狐に鼓を返してやることにした。
大喜びの源九郎狐は、館を襲う僧兵を化かしてやっつけた上で鼓ともども姿を消す。
今回の配役は以下の通り。
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐=海老蔵
源義経=段治郎  静御前=笑三郎
亀井六郎=猿弥  駿河次郎=男女蔵

義太夫の葵太夫は昼の歌舞伎座「先代萩」とこちらをかけもちする大活躍。海老蔵にも頼りにされての奮闘だ。
海老蔵の忠信での登場は生締姿もなかなか似合っていい感じ。段治郎の義経も堂々としている上に気品まで出てきて一昨年からの成長を感じた。猿弥と男女蔵の亀井と駿河も落ち着いていて、なかなかいい滑り出し。
そこに笑三郎の静御前が登場。「山吹」の主演もよかったが、段治郎ともどもこういう時代物の芯をつとめているのを観るとこちらも感慨深い。皆、義太夫の糸に乗ってくれていて気分よく観ていられるのも嬉しい。

さて狐忠信の登場。右近や菊五郎と比べるのがおかしいのだが、かなり痩せていて運動神経もよさそうな狐くん。しゃべりだしたら.....ズッコケそうになる。人間ではない狐らしさの表現はカーンと高い声だとばかり思っていたらさにあらず。オカマさんたちのような弱弱しい優しい声。狐の子どもとはいえ千年生きた狐の子だもの何百歳かにはなっているだろうにまるで10代前半のような子どものような感じがした。まぁいつもの台詞でも高音域になるとひっくり返ってしまうこともある海老蔵なので狐らしい高音は出せなくて人間でない声として工夫して出している声なのだろうと納得してみた。

とにかく動きは敏捷でいい。館の庭から欄干のところからくるりと上がったり4段の階段のところをいきなり縁のところまで飛び上がったりの動きは体育会系狐という感じ。反り身もしっかりと決めてくれるし、日頃のジム通いの成果がダイエットだけでなく動きのよさにも出ているのだろう。表情も子狐の稚気あふれる可愛らしさにあふれている。これはなかなかの見もの。

最後の宙乗りがまたスゴかった。鼓をもらって大喜びしている様子を空中で身体をかなり動かして表現している。空中ではしゃぎ回っている感じ。またあんなにお尻のところを持ち上げて吊っているのはなぜかと最初気になったが後で納得。吊られた姿勢で反り返る動きをかなり入れてあるのだった。最後は盛大に桜吹雪が舞う中を3階の鳥屋に消えていった。
これは狐が喜んでいるというのもあるが、海老蔵が初めての宙乗りをしたらその面白さにハマってしまってノリノリでつとめているという感じもしてしまった(笑)
この海老蔵の狐忠信の宙乗りの魅力を可愛い動くイラストにされている「てぬぐいぶろ」さんの記事もご紹介しておきたい。→こちら
澤潟屋型の「四の切」は情感が少なくケレンで観客を喜ばせるものだからという批判もあることも知っている。それでも今回の海老蔵の澤潟屋型での上演はよかったのではないかと思う。今回の「花形歌舞伎」の一大目玉になったし、宙乗りデビューも大成功のようだし。体育会系狐さんには情感で見せる音羽屋型はまだまだ荷が重いのではないだろうか。台詞も高音域をきちんと出せるようになってから音羽屋型の上演もお願いしたいと思う。

写真は今回の公演の筋書表紙の上に「四の切」最後の宙乗りで降った桜の花びらを乗せて撮影。下の方の小さなものは猿之助のスーパー歌舞伎で降ったもの。比べると今回のものが一回り大きく色も濃い。海老蔵宙乗り特別バージョンの花びらなのかもしれない。もしそうだとすると海老蔵の宙乗りってかなりスペシャル物なのかな。
関連の感想記事はこちらm(_ _)m
11/4昼の部①ヒートアップの「勧進帳」
11/4昼の部②菊之助の「弁天小僧」
11/4昼の部③奴隷と主人の恋「番町皿屋敷」
11/24夜の部①「馬盥」で松緑を見直す
11/24夜の部②菊之助の「船弁慶」


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いずれ音羽屋型も (六条亭)
2006-12-03 22:04:36
こん♪♪は。TBを二つうちました。

まだまだ課題を残していますが、海老蔵の果敢な挑戦は高く評価して良いでしょうし、澤潟屋型の後継者が出来たことは何より嬉しいです。

でも、たしかに音羽屋型も観てみたいですね。
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こんばんは♪ (真聖)
2006-12-03 23:06:29
花形歌舞伎は夜の部のみ鑑賞でしたがこの演目は心に残りました。
そうなんですよね、海老蔵くんってほんと物怖じしないというかあの自然体が良いのかも?

今思えば猿之助さんの源九郎狐見ておいて良かったなあと思います。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-12-04 01:26:04

★六条亭さま
海老蔵の「四の切」はなかなか面白かったです。高い声をきれいに出せるようになったらスゴイ役者になるんじゃないでしょうか。
それにしても11月の東京は、歌舞伎座・演舞場・国立劇場と3箇所とも話題が盛り上がりましたね。私は国立の「元禄忠臣蔵」まで観劇予定に組み込む余力がなくてパスしてしまいました。皆様のところでレポを読ませていただいているのとエッセンスをTV放映の録画で楽しませていただく予定です。
その分、歌舞伎座と演舞場に力が入りました。六条亭さんの演舞場「花形歌舞伎」の感想、概観版に続く本格感想の連続アップを楽しみにしています。
★真聖さま
>海老蔵くんってほんと物怖じしないというかあの自然体が良いのかも.....今はいいんじゃないでしょうか。30代半ばになって今のままじゃちょっとまずいと思いますが(笑)
猿之助丈の最後の数年の舞台を観ることができただけで私は間に合ったという気持ちです。
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キュートでチャーミング♪ (midori)
2006-12-04 23:58:13
カキコは、お久し振りになってしまいすみません。
(^^;
拙ブログへのトラバ、ありがとうございました!
感想アップまでいたらず、月締めの演目まとめに
簡易アップしていたので、なんだか恐縮です。

継承する“型”は、歌舞伎ならではのことですし、
私には未知の世界です。
目撃することができた演目の中での感想や感激で
語ることしかできませんが、今回の忠信@狐は、
愛らしさといじらしさで、猿之助さんの忠信狐と
又、別の趣で楽しむことができました♪
笑三郎さんの静が観れたのも、個人的に、とても
嬉しく感慨深かかったです!
段治郎@義経の主君然とした雰囲気も、ほれぼれ
しました。
観る事ができて、嬉しかったです。
(ーー*)
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どーもこの度は、 (てぬぐい…)
2006-12-05 00:57:07
TBありがとうございます。つたない手なぐさみを紹介していただき感謝しております。
あらすじまで織り込み、きちんとした感想を書き続けるぴかちゅうさんの姿勢にいつも感心しています。
 :
私の方は、まじめに感想書けないので、画像などのケレン?でお茶を濁してばかりですが……。
今後もなにとぞご贔屓に。
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続・皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-12-05 22:33:40
★midori様
お互いに観ているわりには全部アップできないタイプですよね。書き出すと簡単に止められない点が共通(笑)私の観ていない舞台もmidoriさんの感想を読めば満足できるという丁寧さに私も感謝しております。
>今回の忠信@狐は、愛らしさといじらしさ.....本当に可愛かったですよね。あんなに大きいお兄ちゃんがあんなに可愛いなんてと感心しきりでした。
>笑三郎さんの静.....私も期待してました。段治郎の義経も自分のものになってたし、今回の義経・静コンビには満足できました。

★「てぬぐいぶろ」のてぬぐい…様
毎回学生時代のレポート気分で書いてます。いや学生時代より真面目だったりして(^^ゞ
こちらこそ、てぬぐい…様の記事をご紹介させていただけて感謝しております。どうも私の記事は固いものですから写真を入れるようにしているのですが如何ともしがたい(笑)
ケレンは大事です。バランスよくいきたいものです。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
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