ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/12/25 十二月大歌舞伎夜の部①「神霊矢口渡」

2007-01-18 01:47:38 | 観劇
とっくに松もとれた頃だというのに、写真は門松が準備されたばかりの昨年末25日の夜の歌舞伎座正面入り口。照明に照らされて不思議な色に撮れた。十二月大歌舞伎夜の部の思い出し記の開始。
1.『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』
平賀源内が福内鬼外の筆名で書いた浄瑠璃「神霊矢口渡」。菊之助のお舟は初役で皆さんの評判もいい。私は全く初見だが期待いっぱいで観にいく。今回の配役は以下の通り。
お舟=菊之助 渡し守頓兵衛=富十郎 
新田義峯=友右衛門 うてな=松也
六蔵=團蔵
あらすじは以下の通り。
六郷川の矢口の渡し守の頓兵衛の家。足利と新田の争いに破れた新田義峯が一夜の宿を申し入れる。頓兵衛のお舟は宿ではないからと断るが、義峯をひと目見ると態度を急変。ひと目惚れしてしまったのだ。義峯が傾城姿に身をやつさせた妻のうてなを伴っているのを見つけると誰かと問いただす。そして妹と聞くと安心して迫っていく。恋に積極的なのは歌舞伎に登場する娘の常だ。
頓兵衛という男は、褒美の金欲しさに義峯の兄・義興もこの川で溺死するように仕向けた強欲者。手下の六蔵はお舟に惚れていて、男を匿っているのを知ると殺そうとする。お舟は自分の男ではなく新田の落人と言い、お前の望み通り嫁になってやると言いくるめて時間を稼ぐ。六蔵からの知らせで戻ってきた頓兵衛は、床下から義峯を狙って刀を突き刺す。
その刀に手応えを感じた頓兵衛は、そこに義峯ではなく苦しむ娘の姿を見つける。お舟は先に船で彼らを逃がし、身替わりとなっていた。父をなじる娘を相手にもmせず頓兵衛は義峯を狙って船を出す。その追っ手から義峯を守るため、瀕死のお舟は櫓の太鼓を打とうとする。邪魔をする六蔵を立ち回りの末に殺し、力を振り絞って太鼓を打つ。その音の中、川の船の上では義興の霊によって頓兵衛が射抜かれて断末魔の叫びを上げていた。幕。

『義経千本桜』の「すし屋」や「櫓のお七」などの趣向も採り入れられたなかなか面白い作品で平賀源内の多才ぶりに驚いた。エレキテルで有名な科学者のイメージしか持っていなかったのだ。しかもこの間読んだ田中優子著『江戸の恋-「粋」「艶気」に生きる』で波乱に満ちた生涯だったこともわかってとても魅力的な人物だったこともわかった。

菊之助はまさにハマり役だと思った。このお舟という情熱的な若い娘をやるのにふさわしい時分の花が大輪と花開いている今やるのが時宜にかなっていると思った。うぶな娘が一目ぼれの情熱のまま十代の恋に殉じるお舟!しばらく封印したいくらいだ。

そのお舟が惚れる義峯が友右衛門というのはどうにもおじさんすぎる。国立劇場に二枚目をかなり持っていかれているので仕方がないのか。でもお声が十分気品に満ちて優しく魅力的だったのでまあいいだろう。
富十郎の頓兵衛は36年ぶりだというが、こういう悪人の役は初めて見たが強欲ぶりがあまりにも素晴らしい。そして今月、予想しなかったほどいろいろな役で活躍の
團蔵の三枚目も堪能。幅の広さに感心。うてなの松也も恋敵にふさわしく綺麗だった。

追記
「櫓のお七」の趣向と書いたが、イヤホンガイドでこちらの作品が先だったという解説があったような記憶が.....。筋書を見ても書いていないが、追記しておく。
関連の感想記事はこちらですm(_ _)m
12/10昼の部①「嫗山姥」
12/10昼の部②「将門」
12/10昼の部③「芝浜革財布」「勢獅子」
12/25夜の部②菊五郎の「出刃打お玉」
12/25夜の部③海老蔵初役の「紅葉狩」