ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/12/16 文楽『義経千本桜』後編「伏見稲荷の段」「渡海屋・大物浦の段」

2007-01-08 00:10:33 | 観劇
昨年12/16に観た文楽『義経千本桜』の後半の感想を書く。
前半の感想はこちら
【伏見稲荷の段】
堀川御所を落ち延びた義経一行は伏見稲荷まで到達。そこに静も追いついてきた。義経は初音の鼓を与え京に留まるように申し付ける。静は一緒に行けないのであれば川に飛び込んで死ぬと言い張り、木に縛りつけられて置き去りにされる。一匹の狐がその様子を伺ううち、土佐坊の配下の逸見藤太が静を見つける。危ういところを佐藤忠信が現れ、藤太を討取る。そこに義経らが戻ってきて忠信を褒め源九郎の名も与え、静の警護を命じてさらに落ちていく。
【渡海屋・大物浦の段】
船で九州を目指す義経一行は摂津国大物浦の船宿で日和見をしていた。宿の主人の銀平は義経探索の者を追い払うが、実は義経たちを油断させる計略。義経たちが出船すると平知盛という本性を明かす。既に西海の海に沈んだと思わせている知盛は海の亡霊の仕業に見えるような白衣装に身を包み、艀で義経たちを追っていく。宿の娘お安は安徳帝、女房おりうは即ちお乳の人の典侍局。ともども衣装をあらためて海戦の様子を見守る。
知盛は嵐に乗じて義経を葬る作戦をとったが、全て義経らに見破られており戦も敗れる。帝とともに覚悟の入水の直前に義経が典侍局から帝を抱き取り供奉を約束。典侍局は帝を託して自害。出家をすすめられた知盛はそれを断る。平家の悲劇も元は姫宮を男宮と偽って即位させた父清盛の悪逆のせいだと吐露し、帝の供奉を頼み頼んで碇を身体に巻きつけての入水、幕。

狐忠信の登場の場面を今回観ることができたが、ちゃんと狐の人形も姿を見せてくれたのが嬉しかった。やっと「四の切」にイメージがつながる。
「姫宮を男宮と偽って即位させた」というところで、大河ドラマの「義経」でも清盛の妻の時子が誕生前に決意を語っていたのを思い出した。大河ではやはり男宮にして別の親王とのすり替えによる血の継承の方にストーリーをもっていっていたが。
知盛を遣う玉女もご贔屓なので銀平での登場のところからググッと注目してしまっているが、白装束になってからはさらにカッコいい(一昨年の顔見世の仁左衛門知盛を観なかったことも強く後悔(T-T))。手負いになって最後の碇を巻きつけての後ろ向きの入水の場面は、人形なのでゆっくりと弧を描くようにポーンと飛んでくれるのかと思ったら、さにあらず。予想を裏切って弧も描かない後ろ向きの落ちのスローモーション→逆さまになった足がニュッと残るストップモーション。これはなかなか新鮮な印象が残った。

字幕を見ながらの観劇はけっこうきちんと理解ができるので満足度が高い。けれど苦労せずにわかったものは細かなところが記憶にしっかりと残りにくい。すぐに床本に目を通すとまたきちんと記憶が固定化するのだが、忙しさにかまけてしまうことも少なくない。今回あらためて床本まで読み直してまたよくできた話だと感心。そしてジワジワとこの大作に心動かされてしまうのだ。

声がよいという噂の咲甫大夫のお声もきいて納得。2006年度のNHK「文楽入門」の三味線解説の鶴澤清二郎とのコンビもよい(結局TVで観た方の印象が強い私である)。最後の千歳大夫が大汗をかきながらの熱演も私は好き。こういう戦の場面やギリギリの修羅場の場面などにはこの熱演が合うように思う。

12月の文楽は鑑賞教室もあるので若手で揃えている公演らしいとやっと気づく。顔と名前を一致させようと筋書を見てもいつもの写真のページがない。独立採算を強く求められるようになると、文楽は鑑賞教室のプログラムと両方作る必要があるので本公演の方の筋書の方で経費を少し節約しているのではないかと推測。若手の確認のためにはやはり入れておいていただきたいと思うのだが。

写真は今回の公演のチラシのアップを携帯で撮影(公式サイトのきれいな画像は容量オーバーでgooではアップできず)。
2月の国立劇場小劇場の文楽公演が早くも楽しみだ。
12月文楽の「社会人のための鑑賞教室」前編の感想はこちら
同後半の「恋女房染分手綱」はこちら