06/12/25 十二月大歌舞伎夜の部③海老蔵初役の「紅葉狩」


また間が開いてしまったが、十二月大歌舞伎夜の部の思い出し記の最後を書く。
3.『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)』
「紅葉狩」でも新歌舞伎十八番の方は初見。同じような内容の「鬼揃紅葉狩」は昨年の秀山祭で観た。
昨年9月秀山祭の「鬼揃紅葉狩」の感想はこちら
今回の配役は以下の通り。
更科姫実は戸隠山の鬼女=海老蔵 平維茂=松緑
腰元岩橋=亀蔵 局田毎=門之助
侍女野菊=市川ぼたん
従者左源太=亀三郎 従者右源太=市蔵
山神=尾上右近
「鬼揃紅葉狩」と大きく異なるのは以下の点である。
①まず舞台が松羽目物のようではなく、紅葉の下がり物が舞台前面にあって、松の大木までが舞台中央の大道具としてある。だから鬼女は最後にその松の木の上で決まって幕となる。
②更科姫の酒宴でまどろんでしまった維茂のもとに現れて、更科姫が実は人食い鬼であると警告してくれるのはひとりの山神だということ。
③やがて鬼女の正体を顕して襲い掛かるのは更科姫ただひとりで、侍女たちは鬼にならないこと。

海老蔵の女方は「藤娘」が初見で今回が二回目。初役だという。登場すると客席から溜息。確かにビジュアルは完璧に美しい。懸念していた前半の姫の時の声で現実に引き戻される。やはり私の許容範囲を超えている。途中で鬼の片鱗をみせるところもメリハリはあるのだが、どうみても鬼女ではない。男の鬼的な猛々しさがすでに見えてしまう。着物の裾が大きく開くような足さばきはこれはいいのかとちょっと疑問に思ってしまうほどだった。後半の鬼の場面はもうすごい迫力。荒れ狂う‘鬼’そのもの。周りを侍女たちの鬼女も従えていないから余計に一匹の‘鬼’と維茂の対決になってしまった。パリ公演に出すようだが、まぁ鬼女と鬼の違いなんて気にする観客はあまりいないだろうし、このメリハリは受けること間違いないだろう。
松緑は昼の「将門」でしっかりと存在感を確認できていたが、維茂も初役でつとめて好演。決して二枚目でなく武者絵のような顔がこういう役の時はとても映える。身体の動きも美しい。海老蔵とのバランスもよかった。これからもこういう役をもっと極めていただきたいと思った。
侍女野菊は海老蔵の妹の市川ぼたんがつとめたのだが、大人の女性が歌舞伎座の舞台に立つことは珍しい。パリ公演にもきっと一緒に出るのだろう。舞踊の市川流の方でぼたんを襲名されたということで、とても端正な舞だった。ただ周りの男性に並ぶと女性の身体はやはり華奢なんだなぁとあらためて感じた。
山神は演じる役者によっては翁にすることもあるらしい。今回は尾上右近で若い山神。六代目菊五郎の血を引くという右近は菊五郎の部屋子になって精進しているという。本当にきびきびしていてこれからが楽しみだった。
三枚目の腰元岩橋の亀蔵を観て、昼の「嫗山姥」で兄の市蔵が見せた三枚目の腰元も思い出してなかなか面白い配役をするものだと感心。なかなかよかった。

新歌舞伎十八番は市川家の「家の芸」なので海老蔵も繰り返しつとめていくだろう。頑張って女方の声の安定的な発声を身につけてもらいたい。あんまり目をむきすぎずに身体の動きももう少し研究してほしい。
この間、1月に新刊で出た文春文庫版の関容子さんの「海老蔵そして團十郎」を読んだ。戦後ブームになった海老さまから市川家の三代を見守り続けた関容子さんの文章はあたたかかった。海老さまに姿だけでなく気質もよく似た孫の当代の海老蔵も研究熱心だということがわかったので、これからの彼の精進ぶりを私もしっかりと見守っていく気になっている。

写真はこの日に3階で食べた「めでたい焼」。なんと私が最後の一個だった。時間がなくて中のお餅の紅白の色まで確認できなかったのを後から気づいて後悔した。
関連の感想記事はこちらですm(_ _)m
12/10昼の部①「嫗山姥」
12/10昼の部②「将門」
12/10昼の部③「芝浜革財布」「勢獅子」
12/25夜の部①「神霊矢口渡」
12/25夜の部②菊五郎の「出刃打お玉」
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コメント
 
 
 
TBをうちました (六条亭)
2007-02-05 16:26:46
十二月大歌舞伎の感想は詳しく書かないまま終ってしまいましたのに、コメントありがとうございました。私の方からはTBをうてました。

関容子さんの『海老蔵そして團十郎』を同じように読まれたんですね。歌舞伎好きにはたまらない好著ですし、今後の海老蔵の舞台を見守りたくなりますよね。
 
 
 
★六条亭さま (ぴかちゅう)
2007-02-05 21:47:22
TB、コメント有難うございますm(_ _)mTB返しは成功しました。ジュゲムのシステムはセキュリティが厳しいのかもしれませんね。
お風邪で薬を飲んでの観劇だったようで、残念でした。『海老蔵そして團十郎』の本は六条亭さんのところで1月に文春文庫版が出たと知って本屋に走った次第です。いろいろと情報アップしていただき、本当に有難いです。海老蔵はあまり好みのタイプではなかったのですが、どうしても定点チェックせざるをえない若手でした。この本を読んだら愛情が少し湧いてきてしまいました(^^ゞ
 
 
 
TBさせて頂きました (dream)
2007-02-06 00:43:29
TB&コメントありがとうございました。
パリ公演はこの演目『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)』が上演予定と聞いて・・・是非、観たいと思い千穐楽に足を運びましたが、歌舞伎座の辺りは大雨で驚きました。

さて・・・いつもオーラのある海老蔵様!
今回は特にヤル気満々と言う感じが伝わってきました。更科姫の姿は本当に美しいですね。でもお声が・・・これから、修正される事を期待して私も見守ります。関容子さんのご本「海老蔵そして團十郎」・・・是非、読んで見たいと思いました。
 
 
 
★「夢日記」のdream様 (ぴかちゅう)
2007-02-06 01:30:45
dream様の記事へのTBは「紅葉狩」がいいなぁと思っていたものですから、すっかり遅くなってしまいましたm(_ _)mTB返しを有難うございます。
海老蔵丈は博多座で「船弁慶」の静御前と知盛の二役をどのようにつとめられるのでしょうかと情報まちです。後半はきっといいと思います。前半の台詞ですね。それが心配。
関容子さんのご本、文庫本になって私にも手が届くようになりました。読んだら海老蔵への見守りモードが高まり、團十郎丈への敬意が膨らみました。
 
 
 
Unknown (♪~)
2007-02-06 21:35:32
本日は鯛焼き関連で別ブログにTBさせていただきますm(_ _)m
1月は一階で販売されてましたね♪

ところで項目違いで失礼しますが、3月の国立小劇場の玉様作品、一般売りは即日完売の様子ですね。
やっぱりすごい人気ですわ
 
 
 
★♪~様 (ぴかちゅう)
2007-02-06 22:53:58
「めでたい焼」つながりで「風の記憶」からのTBを有難うございますm(_ _)m
めでたい焼をお家で解体しての写真も楽しいです。
>ただし、3階にしかない.....というところ「月によってけっこう変わります」とコメントしてきてしまいました。1月にチェック済みだったんですね。さて今月はどこにあるかしら。
来年の1月で建替えのために現歌舞伎座とはお別れです。この一年、しっかりと通うつもりです。
さらに~、国立の歌舞伎もあってあっちこっち大変です。そうですか、3月の小劇場の一般前売、即日完売ですか!チケットとれててよかった~。
 
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