ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/12/31 TVで勘三郎の魅力全開の「四の切」!

2007-01-03 15:17:32 | 観劇

十八代目中村勘三郎襲名興行の打ち上げの京都南座顔見世大歌舞伎。大晦日のNHKで一部を観ることができた。勘三郎の「四の切」と藤十郎の「雁のたより」の2演目の放映。写真は入手してあった南座のチラシをアップで撮影したもの。

1.「義経千本桜 川連法眼館」
11月の花形歌舞伎で海老蔵の「四の切」を観たばかりなので、記憶が鮮明なうちに見比べができるのは楽しみも大きい。
海老蔵初の「四の切」の感想はこちら 
今回の主な配役は以下の通り。
佐藤忠信(実は源九郎狐)=勘三郎
源義経=仁左衛門 静御前=勘太郎
亀井六郎=橋之助 駿河次郎=翫雀
勘太郎が膝の故障で休演していたのが元気に復活しているのを見るのは嬉しい。仁左衛門の源義経は私には嬉しいご馳走物。勘太郎の静御前も頑張っていたが残念ながら釣合いがとれるにはまだまだ。こうやって胸を借りて勉強していただきたい。
勘三郎の前半の本物の忠信の生締め姿はイマひとつ好きではないのだが、源九郎狐となって登場すると魅力全開だ。
狐言葉もそれらしく聞こえるし、しぐさの端々に狐の可愛らしい愛嬌とともに親の初音の鼓への想いが全身から滲み出ている。静にその想いを語る場面では情があふれている。想いが堰を切る台詞では鼻をすする音まで聞こえ、そこまで感情移入しているのかとこちらまでグッとくる。本物の忠信の登場で親にさとされて家に帰ることを決意するが、別れを惜しんで四つ這いになって回る場面では飛び跳ねながら回っていてそのリズミカルな動きに圧倒される。
勘三郎の源九郎狐の親への慕情の想いが深く熱いので、静の詮議を御簾の後ろできいていた義経が姿を現し、親を慕う狐の情に打たれる場面の仁左衛門の重厚な芝居とかみあって一気にクライマックスへ。
いつもある館を襲う僧兵との立ち回りを舞台の上でせず、外でやっつけるからということのようで、義経に鼓を与えられた源九郎狐が大喜びで去っていく。こういう演出は初めて観たが、これまでここの立ち回りで緊張感が途切れる感じがあったので省く演出はとてもいいと思った。これならば宙乗りのようなケレンで再度盛り上げる必要がない。
勘三郎の源九郎狐の喜びを爆発させたような花道の引っ込み(狐六方でいいのかな?)は、TVの画面で見ているだけでもこちらまで胸がウキウキするようだった。うん、まさにこういうところが勘三郎の魅力なのだとあらためて思った。
それに花道のこういう引っ込みはいいお席でないとじっくり観ることができないので今回のTV放送には大感謝である。

2.「雁のたより」
あらすじは以下の通り。
前野家の若殿・左治馬(愛之助)が身請けした芸者・司(扇雀)の気散じに有馬温泉に逗留している。司の局はいくら機嫌をとっても司の機嫌が直らない。気晴らしに面白そうな宿の裏手にある髪結・三二五郎七(坂田藤十郎)を呼んできたら、予想以上に司が気のある風を見せる。それを利用して若殿や取巻き連中が司からの偽艶書を三二五郎七に届けて笑いものにしてやろう......と最初は上方和事でじゃらじゃらしたお芝居。
不義者間男めと家老・高木治郎太夫(段四郎)が槍で斬りかかると三二五郎七の槍先をかわす姿に侍であることが明らかになる。司に執着する若殿も国許から至急帰参の連絡にあわてて戻っていく。そして司こそ三二五郎七の許婚だったのが騙されて郭にいたこと、司はその矜持を保ち誰にも肌を許していないことがわかる。そして三二五郎七のお家再興と二人が手に手をとってHappy End!

私はけっこうじゃらじゃらした上方和事は好きな方なので楽しめた。宿の花車お玉の秀太郎と藤十郎の上方言葉のやりとりは聞いていて気持ちがいい。亀鶴の下剃の安もいい仕事をしている。愛之助のお馬鹿な若殿も可愛かったので○。扇雀の気位の高いお局さまもハマリ役。
しかしながら髪結床に来た若旦那の翫雀と藤十郎のやりとりの中、役を離れたお遊びのやりとりがあった。よくあることとは思いながらも、親子でやるのはちょっとやりすぎの感が強かった。

今回の年末年始の歌舞伎関係のTV番組はテレビガイド雑誌も買い込んでしっかりとGコード予約録画できた。元日の「芸能桧舞台」の雀右衛門の六歌仙の小野小町もじっくり見た。しかしながらNHKのカメラワークって本当によくないと実感。カメラの台数けちりすぎじゃないかな。1/2の三津五郎の「京鹿子娘道成寺」も初舞台中継もちゃんと録画。じっくりと観たいと思いながら、年末に届いた『RENT』のDVDを観ようと娘にデッキを占拠されたりもする。今晩1/3の夜は唐沢寿明のTVドラマスペシャル「明智光秀」もあるし、なかなか忙しい。

追記
フジTVの「明智光秀」はとにかくストーリーが好みではなかった。「瑠璃色の海」という言葉を濫発しすぎ。上川隆也の信長は一豊とまるで対極にある役なのにさすがの出来。洋装の拵えも素敵だった。時代劇の谷原章介は初見だったが狸の義昭というには無理があるが公家っぽさは○。唐沢寿明の光秀、柳葉敏郎の秀吉はまぁまぁくらいの出来。長沢まさみの光秀妻にはかなり無理があった。このドラマ、ながら見くらいでちょうどよかった。