ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/01/26 亜門×市村×大竹×スウィーニー・トッド=○

2007-01-26 23:57:00 | 観劇
1981年の帝劇での染五郎(現・幸四郎)×鳳蘭の初演のチラシ、はっきりと覚えている。ミートパイの写真が組み合わされたもの。あらすじを読んで大量殺人→人肉パイ?!と引いてしまって観ていない。それ以来「伝説の舞台」と化してきた作品。プログラムを読んだら鈴木忠志演出だったという。ここで私が鈴木忠志との遭遇を逃していたことがわかった。

今回は、市村×大竹初共演!これは絶対観ないといけない!!亜門×ソンドハイムは「Into the Woods」(感想はこちら)がかなり面白いと思ったので躊躇せず。
そしていよいよ観てきたが結果は○。
ゆっくり書いている時間がないので、恐縮だがまず日生劇場の公式サイトよりの引用。
「太平洋序曲」でブロードウェイ演出家デビュー、トニー賞作品ノミネーションの快挙を果たした宮本亜門。ソンドハイム・ミュージカルで真骨頂を発揮する彼が、満を持して選んだ次作…それが「スウィーニー・トッド」だ!!
前世紀のロンドンに実在したといわれる殺人床屋と、殺した人肉でパイを焼いて大繁盛した女主人…めくるめく復讐のドラマがカタストロフィーに向かって疾走する。
世界中がテロにおびえ、各地で戦火が燃えさかる今、最も同時代性を感じさせる、ソンドハイム作品の中でもきわめつけの話題作を市村正親・大竹しのぶと超豪華、 実力派キャストで上演!!

今回のキャストは以下の通り。
スウィーニー・トッド=市村正親 ミセス・ラヴェット=大竹しのぶ
乞食女=キムラ緑子 トバイアス=武田真治
アンソニー=城田優 ジョアンナ=ソニン
ターピン=立川三貴 ビードル=斉藤暁
阿部裕、大須賀ひでき、岡田誠、越智則英、小関明久、さけもとあきら、中西勝之、水野栄治、山田展弘、秋園美緒、北澤装子、菅原さおり、高橋桂、福麻むつ美、三木麻衣子、山崎ちか

ところが冒頭の「スウィーニー・トッド」の話をきいてくれという合唱からいきなり違和感。不協和音多用の音楽なのか、耳障りで仕方がない。しかし「Into the Woods」でも冒頭の違和感があったことを思い出して我慢して聞いていく。
すると主要キャストの歌でどんどん物語に入っていけてしまう。ソンドハイムは芝居の要素をかなり重視しているので、市村と大竹の台詞を歌っているような歌い方がまことにハマっている。大竹は井上ひさしの「太鼓たたいて笛ふいて」で歌えるのはわかっていたが、本格ミュージカルは初めてだというのにこれほど歌えるとは畏れ入った。さすがに天才肌の女優だ。
そしてとにかくラヴェット夫人の大竹しのぶが可愛い女全開なのだ。市村のトッドが好きでどうしようもない感じがあふれている。ラヴェット夫人だけが普通のメイクで他の人は大なり小なりゾンビのような目の周りに隈を濃く入れたようなメイク。そういう顔の市村正親もけっこういい男に見えてしまって、年増の女にぞっこん惚れこまれるのも無理はない感じがしてよかった。このふたりの共演は大成功だ。

トッドの脱獄の旅の途中で知り合った水兵アンソニーの城田優が背の高い二枚目で歌も上手いのでどんな人かとプログラムで見るとテニミュに出ていた経歴の持ち主。なるほど~。トッドの娘でアンソニーと恋に落ちるジョアンヌのソニンの高い声がまた綺麗。多少ビブラートがかかりすぎるところもあったが許容範囲内。
トバイアス=トビーの武田真治が本当に少年っぽさがあってよかった。歌は多少今イチだが、この透明感は貴重。トート閣下を見ていないのだが今後の期待も膨らんだ。
敵役のターピンの立川三貴とトッドをゆすって殺された床屋の中西勝之はオペラっぽい歌い方。わざとそういう歌い方で敵役を際立たせたのかとか思ってしまった。「キャンディード」の時と違ってオペラっぽい歌い方もこれくらいの使い方ならば、ミュージカル全体の中で浮くということがない。
ビードルの斉藤暁も「亜門版ファンタスティクス」で観てから安心して観ていられる。キムラ緑子も井上ひさしの「夢の痂」で歌えるのがわかっているし、気の狂った乞食女、実はトッドの妻だったという難しい役をよくやっていた。

冒頭に抱いた違和感は一幕終了の時点では全く払拭され、ソンドハイムの曲の中毒性が身体半分に沁みている。幕切れは幕開きに歌われた曲を「これがスウィーニー・トッドの話」だ~と歌うのだが、もうすっかりと虜になっている。

これがソンドハイムの魅力なのかなぁと納得する。しかし難曲揃いだった。これは歌うほうはかなり大変だと思う。千穐楽近くでこんな感じだと初日すぐだと虜にならなかったかもしれないとは思ってしまった。再演があったら一度は観るだろう。
おおっと、その前にジョニー・デップ主演の映画が公開されるだろう。それも絶対に観ることにしよう。
追記
①TBをいただいたbutlerさんの記事のコメントのやりとりのところで「オリジナルは黄泉の国から死人が甦るところから」ということが書かれていて、ゾンビメイクにようやく納得できた。再演では演出でそのあたりもわかりやすくされることを期待する。
②ソンドハイムについてウェブ検索したら宮本亜門氏の文章がヒット!またまた勉強できてしまって嬉しい限り!!(→こちら
写真は日生劇場の公式サイトよりのチラシの画像。
さてさて、明日は「朧の森に棲む鬼」千穐楽だ~。その次の日は蜷川シェイクスピア「コリオレイナス」。大丈夫か、自分(笑)