昼の部の感想をこれで完結。
3.『芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)』
三遊亭円朝の落語を歌舞伎にした演目。初演は世話物が得意だった六代目菊五郎。当代の菊五郎の世話物もいいのでこれは期待度大。
あらすじは以下の通り。
魚屋の政五郎はぼて振りの魚屋だが酒好きで怠け者。「酒はやめてまっとうになる」と宣言したので女房のおたつは気がせいて一刻も早く魚河岸に送り出していた。真っ暗な芝浜海岸で河岸があくのを待つのに煙草を吸っていると足に何か当たる物がある。何かと思ってさぐってみると大金入りの革の財布。仕入れはやめて早速帰宅。朝湯に行く道々声をかけた大工の勘太郎らの飲み仲間が集まって大酒盛り。政五郎が正体なくなるとお開きだ。おたつは政五郎がすぐに誓いを破ったことに打ちひしがれるながら、預けられた財布を前にひと思案。大家さんにも相談し.....。
一晩寝て目覚めると金貸しのおかねが返済の催促に来た。預けた財布の金で返そうとおたつに出せというがそんなものは知らないという。何度たずねても取り合わず、夢でも見たのだろうと言われてしまう。自分で自分が情けなくなった政五郎は今度こそ改心する。酒を断ち、まじめに働くことを誓う。
そして3年後の大晦日。政五郎は店を構えて繁盛する魚屋になっていた。掛取りから戻った政五郎におたつは秘密を明かす。おたつが落し物としてお上に届けていたお金が落とし主が名乗り出ずにお下げ渡しになったのだった。政五郎は怒りもせず、むしろ感謝する。ちょうどそこに勘太郎が町内のお役でお助け小屋への募金を集めに来た。そっくり財布の金を寄付し、3年ぶりの酒を女房と楽しみながら幸せな年越しを迎えて、幕。
今回の配役は以下の通り。
政五郎=菊五郎 女房おたつ=魁春
大家長兵衛=田之助 金貸おかね=東蔵
錺屋金太=権十郎 桶屋吉五郎=亀蔵
大工勘太郎=團蔵 左官梅吉=彦三郎
開演後5分後は入れないというアナウンスが幕間に繰り返され、冒頭が真っ暗な中で煙草の火がついて始まる演出に納得。その火の効果をそがないためだ。
魁春のうらぶれたおかみさんぶりがとてもよくて見直した。後半のきちんとしたお店の女将への変身もよい。こういうお役に磨きをかけてもらいたいと思う。
そして田之助・権十郎・亀蔵・團蔵・彦三郎との酒盛りの場面が生世話物らしくていい。江戸時代の長屋での庶民のくらしがしのばれる。酒盛りが女房自慢大会になるなんて嬉しい驚きだ。亀蔵以外はこんなに庶民の男の役をしているのを見たのは初めてだったのも新鮮な感じがした。特に團蔵が「嫗山姥」で白塗りだったのに、こちらでは江戸っ子というのも変化が大きくて楽しませてもらった。
3年後のお店に正月の飾り付けの手伝いにきていた親戚の娘役にあまり見ない若手が起用されていた(菊史郎)が可愛くてよかった。
江戸の生世話物の菊五郎は軽みのある演技が無類だ。先月の政岡からこんな役まで幅が広いところがさすがだ。また来月の国立の復活物も期待が高まる。
落語では3年ぶりの酒をすすめられても断って「この金が夢になるといけねぇ」とオチがつくらしいが、歌舞伎ではそこは変えている。確かにオチをつけなくてはいけない落語とは違うし、世話物らしくほのぼの終わる幕切れに心があったまる。
4.『勢獅子(きおいじし)』
昼の打ち出しは雀右衛門をいただく常磐津舞踊。赤坂の日枝神社の山王祭で集まった鳶の者と手古舞姿の芸者たちによる賑やかな踊り。
芸者お京=雀右衛門 鳶頭鶴吉=梅玉
鳶頭亀吉=松緑 鳶の者=松江
鳶の者=亀三郎 鳶の者=松也
鳶頭の梅玉が京蔵らの弟子に支えられて雀右衛門の芸者お京を出迎えるという作り方に納得。温かい雰囲気あふれる梅玉が雀右衛門をサポートするのがとても自然。この間の舞踊などで組んでいるのも信頼感が醸成されているのかなと思った。
同じ鳶頭でも松緑は鳶の若手のリーダー的。松江とくんだ獅子舞もなかなかのものだった。亀三郎と松也が他の若手の二人組がつくった馬に飛び乗ったりするのもなかなかの見もの(馬になる方は大変そうだが)。梅玉・松緑の“ぼうふら踊り”も変でおかしかった。いろいろな江戸っ子の風俗を写した踊りが繰り出されたし、30人近く舞台に人が並んで賑やかな感じがあった。ところがなんか散漫だったような記憶。“勢獅子”という名がつく割にはそんなに勢いのある場面はなかったような気がする。あれもこれもと総花的なつくりになってしまったんだろう。とにかく雀右衛門に舞台に出ていただくだけで有難いからいいことにしよう。
写真は『ほうおう』よりの「勢獅子」鳶頭の梅玉。
関連の感想記事はこちらですm(_ _)m
12/10昼の部①「嫗山姥」
12/10昼の部②「将門」
12/25夜の部①「神霊矢口渡」
12/25夜の部②菊五郎の「出刃打お玉」
3.『芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)』
三遊亭円朝の落語を歌舞伎にした演目。初演は世話物が得意だった六代目菊五郎。当代の菊五郎の世話物もいいのでこれは期待度大。
あらすじは以下の通り。
魚屋の政五郎はぼて振りの魚屋だが酒好きで怠け者。「酒はやめてまっとうになる」と宣言したので女房のおたつは気がせいて一刻も早く魚河岸に送り出していた。真っ暗な芝浜海岸で河岸があくのを待つのに煙草を吸っていると足に何か当たる物がある。何かと思ってさぐってみると大金入りの革の財布。仕入れはやめて早速帰宅。朝湯に行く道々声をかけた大工の勘太郎らの飲み仲間が集まって大酒盛り。政五郎が正体なくなるとお開きだ。おたつは政五郎がすぐに誓いを破ったことに打ちひしがれるながら、預けられた財布を前にひと思案。大家さんにも相談し.....。
一晩寝て目覚めると金貸しのおかねが返済の催促に来た。預けた財布の金で返そうとおたつに出せというがそんなものは知らないという。何度たずねても取り合わず、夢でも見たのだろうと言われてしまう。自分で自分が情けなくなった政五郎は今度こそ改心する。酒を断ち、まじめに働くことを誓う。
そして3年後の大晦日。政五郎は店を構えて繁盛する魚屋になっていた。掛取りから戻った政五郎におたつは秘密を明かす。おたつが落し物としてお上に届けていたお金が落とし主が名乗り出ずにお下げ渡しになったのだった。政五郎は怒りもせず、むしろ感謝する。ちょうどそこに勘太郎が町内のお役でお助け小屋への募金を集めに来た。そっくり財布の金を寄付し、3年ぶりの酒を女房と楽しみながら幸せな年越しを迎えて、幕。
今回の配役は以下の通り。
政五郎=菊五郎 女房おたつ=魁春
大家長兵衛=田之助 金貸おかね=東蔵
錺屋金太=権十郎 桶屋吉五郎=亀蔵
大工勘太郎=團蔵 左官梅吉=彦三郎
開演後5分後は入れないというアナウンスが幕間に繰り返され、冒頭が真っ暗な中で煙草の火がついて始まる演出に納得。その火の効果をそがないためだ。
魁春のうらぶれたおかみさんぶりがとてもよくて見直した。後半のきちんとしたお店の女将への変身もよい。こういうお役に磨きをかけてもらいたいと思う。
そして田之助・権十郎・亀蔵・團蔵・彦三郎との酒盛りの場面が生世話物らしくていい。江戸時代の長屋での庶民のくらしがしのばれる。酒盛りが女房自慢大会になるなんて嬉しい驚きだ。亀蔵以外はこんなに庶民の男の役をしているのを見たのは初めてだったのも新鮮な感じがした。特に團蔵が「嫗山姥」で白塗りだったのに、こちらでは江戸っ子というのも変化が大きくて楽しませてもらった。
3年後のお店に正月の飾り付けの手伝いにきていた親戚の娘役にあまり見ない若手が起用されていた(菊史郎)が可愛くてよかった。
江戸の生世話物の菊五郎は軽みのある演技が無類だ。先月の政岡からこんな役まで幅が広いところがさすがだ。また来月の国立の復活物も期待が高まる。
落語では3年ぶりの酒をすすめられても断って「この金が夢になるといけねぇ」とオチがつくらしいが、歌舞伎ではそこは変えている。確かにオチをつけなくてはいけない落語とは違うし、世話物らしくほのぼの終わる幕切れに心があったまる。
4.『勢獅子(きおいじし)』
昼の打ち出しは雀右衛門をいただく常磐津舞踊。赤坂の日枝神社の山王祭で集まった鳶の者と手古舞姿の芸者たちによる賑やかな踊り。
芸者お京=雀右衛門 鳶頭鶴吉=梅玉
鳶頭亀吉=松緑 鳶の者=松江
鳶の者=亀三郎 鳶の者=松也
鳶頭の梅玉が京蔵らの弟子に支えられて雀右衛門の芸者お京を出迎えるという作り方に納得。温かい雰囲気あふれる梅玉が雀右衛門をサポートするのがとても自然。この間の舞踊などで組んでいるのも信頼感が醸成されているのかなと思った。
同じ鳶頭でも松緑は鳶の若手のリーダー的。松江とくんだ獅子舞もなかなかのものだった。亀三郎と松也が他の若手の二人組がつくった馬に飛び乗ったりするのもなかなかの見もの(馬になる方は大変そうだが)。梅玉・松緑の“ぼうふら踊り”も変でおかしかった。いろいろな江戸っ子の風俗を写した踊りが繰り出されたし、30人近く舞台に人が並んで賑やかな感じがあった。ところがなんか散漫だったような記憶。“勢獅子”という名がつく割にはそんなに勢いのある場面はなかったような気がする。あれもこれもと総花的なつくりになってしまったんだろう。とにかく雀右衛門に舞台に出ていただくだけで有難いからいいことにしよう。
写真は『ほうおう』よりの「勢獅子」鳶頭の梅玉。
関連の感想記事はこちらですm(_ _)m
12/10昼の部①「嫗山姥」
12/10昼の部②「将門」
12/25夜の部①「神霊矢口渡」
12/25夜の部②菊五郎の「出刃打お玉」
TB成功していますように。アーメン。宜しくお願いしま~す。
「芝浜~」「勢獅子」の季節感は牧場(OK!)でした。楽しかったです。
TB成功してますよ~。有難うございますm(_ _)m
>「芝浜~」「勢獅子」の季節感.....確かにそうでしたね。それにしてもかしまし娘さんの記事を読めばもう観なくてもいいっていうくらい楽しいです。
今月は夜の部もかなり期待できそうで期待が高まってます。2日連続で文楽も観てきました。嬉しく追われつつ感想アップ頑張りま~す(^O^)/