いよいよ3ヶ月公演の開幕。集中して申し込んだために多めにチケットが確保できたので職場の7人をお誘いして観劇。初日だけあって、1階席のセンターの最後列には音楽監督の山口也さんやダブル・トリプル・クワトロキャストの出演の番でないメンバーが総見していた(今井、岡、今、シルビア・グラブ、駒田、佐藤、瀬戸内...)。休憩中には訳詞者の岩谷時子先生が『ミス・サイゴン』プレビュー初日と同様にロビーにいらっしゃった。
さすがは初日の雰囲気。今回の公演は読売新聞の協賛を得ていて、終幕後は「レ・ミゼラブルいよいよ開幕」と題した号外が参加者に配られていた。1回の公演で何回も観るくらい好きな作品の場合、こういう雰囲気がよくて初日観劇はくせになってしまうのだ。
『レ・ミゼラブル』のストーリーはよく知られたものなので省略。
キャスト評にすぐ入る。
ジャン・バルジャン=別所哲也
前回の公演からの配役。別所哲也の舞台は初めてだったが1回観て、けっこう気に入った。歌はまだまだ語りの延長だが芝居が巧いのでこれはいいキャスティングだと思い、もう1回観劇日を増やしたくらいである。司教の家での粗野な食事の仕方、司教が銀の燭台をくれた時のどう受け止めたらいいのかというしぐさは、その後「兄弟」と呼ばれ諭されて生まれ変わる決意を抱く心の変化を歌う時の芝居につながっていく。娼婦に身を落としたファンテーヌがバルジャンに唾をはきかけてからコゼットを助けて育てていくと語り、死を看取るという流れも感情無理がない。「ブリング・ヒム・ホーム」の独唱は老いて死んでいく自分を両の手を見つめるという表現で演じ、若いマリウスにコゼットを託すという気持ちがしっかり伝わってくる。砦で銃で撃たれ傷ついたマリウスを下水道の蓋を持ち上げて引き込むあたりの芝居もなかなか細かい。次は別所ラクでまた観たい。
ジャペール=鈴木綜馬
前々回の公演からの復活配役。待ってました!高島政弘があまりよくなかった(他の人と差をつけようと工夫しすぎて煩わしかった)ので交代と思われるが大正解。以前に観た時は鈴木さんの人柄がにじみ出てしまって「いい人が無理やり冷たい人間を演じている」ような雰囲気があったが、今回は冷たい表情も自然で、あの大きな目が冷たい輝きを持ってきた。信念に生きる男が冷徹に生きてきたのにそれがバルジャンを追いその生き様に打たれてアイデンティティ・クライシスを起こしてしまい、そこから逃げたいあまりにセーヌ河に身を投げるという流れがよりくっきりした。歌はもう文句なくきかせてくれるので至福!
ファンテーヌ=マルシア
前回の公演からの配役。前回はその前に演じて大好評だった『ジキル&ハイド』の娼婦ルーシーを観る方も引きずっていたのか、最初の女工の時から娼婦っぽい雰囲気がして気になった(娘もそう感じたとのこと)。今回は薄幸の女工さんにきちんとなっていました!だから後半娼婦に身を落としたところとの差がくっきり。その一皮向けた演技に感心。「夢やぶれて」と死ぬ前のシーンは泣かせてくれる。
エポニーヌ=坂本真綾
前回の公演からの配役。かつては母親と一緒になっていじめていたコゼットが裕福になって現れ、自分が恋こがれているマリウスと運命的な一目での相思相愛になり、その仲立ちまでマリウスに頼まれても断れずに恋文をコゼットに届けて砦に戻る途中に政府軍に撃たれてマリウスの腕の中で死んでいく。坂本はこの役にぴったりの切ない声を出せる。前回の公演から公演時間短縮のために全体がテンポアップされているが、「オン・マイ・オウン」は最もたっぷり歌って欲しい曲。ところが前回初役のエポは皆さん、早く歌いすぎ!!歌舞伎ではないが「たっぷり」と言いたい。
コゼット=知念里奈
今回初役。容姿はコゼットとして申し分ないが、残念ながら出だしの歌の高音部でまずつまずいた。月刊『ミュージカル』でも正直に語っているが裏声が苦手でそれを使わなければならない歌が多いというこの作品、そこをクリアできなければ、次回は辞退した方がいいと思う。
マリウス=泉見洋平
前回の公演からの配役だが、学生のひとりで出ている日しか観ていないので今回が初見。『ミス・サイゴン』では婚約者に一途な敵役だったが、今回も一目ぼれしたコゼットへの恋に一途な若者としての切ない思いがあふれていた。若々しいしナイスキャストだ。
アンジョルラス=坂元健児
前回の公演からの配役(だと思う)。歌声はもう『ライオンキング』のシンバ以来の主役声。若々しく自信に満ちた学生のリーダーにぴったり。マリウスと並んだ時のバランスが問題になるが、泉見マリウスとならちょうど釣り合いもとれて、ベストコンビかもしれない。
グランテール=阿部裕
前からの配役(覚えてないので失礼)で、学生集団の中でただ一人民衆蜂起に懐疑的だがアンジョルラスには惚れこんでいてこの集団の中にいる屈折したところが人間臭いこの役は儲け役だが難しい。ガブローシュを可愛がり、マリウスの恋に一番理解を示してくれる暖かい人柄をにじませながらさりげなく演じてくれる彼のグランテールは大好きだ。レミコンの地方公演ではジャベールも演じたようだが、本公演でのジャベールを待っている。
ガブローシュ=局田奈都子
前からの配役(覚えてないので失礼)で、今回のガブローシュ役の中でただ一人の大人の女性だ。浮浪児の親分格で街を守っているのは俺だという気概にあふれた少年の役だが、小柄できゃしゃな身体、少年のような声を生かした熱演で、毎回砦で政府軍に撃たれて死んでいくシーンには胸打たれる。ずっと頑張ってほしい。
テナルディエ=徳井優
前々回?の公演からの復活配役。三遊亭亜郎があまりよくなかった(劇団四季にいたらしく一応歌えますということで中途半端に懸命に歌うし、テナルディエに必要な芝居もできないしでレミコンまでキャスティングされた理由がわからなかった)ので交代と思われるが、こちらも大正解。以前に観た時よりも歌も余裕が少し出てきたような気がする。2000年のカウントダウンパーティーの時、バルジャンに扮してコゼット役の森久美子にぶんぶん回されていたが、その小柄な身体が今回も敏捷に動いて死体から物を盗んでのし上がった人物に見える。
テナルディエ夫人=森久美子
相当前からの配役で、このカンパニーの主のような存在。「宴会こじき」シーンの特注の金歯装着はもうこの役への入れ込みようがよくわかる。彼女が出てくるだけで場がなごむ。夫とともにバルジャンの対極にあるあくどく儲けてでもこの世を楽しく生きる脇役として示す存在力が大きいほど主役の生き方の素晴らしさが浮かび上がる。彼女の存在感は若返ったカンパニーを締める重要なものである。
写真は初日終演後にロビーで配布された読売新聞の号外。次は1900回記念公演を観るのでその時もまた書きます。
さすがは初日の雰囲気。今回の公演は読売新聞の協賛を得ていて、終幕後は「レ・ミゼラブルいよいよ開幕」と題した号外が参加者に配られていた。1回の公演で何回も観るくらい好きな作品の場合、こういう雰囲気がよくて初日観劇はくせになってしまうのだ。
『レ・ミゼラブル』のストーリーはよく知られたものなので省略。
キャスト評にすぐ入る。
ジャン・バルジャン=別所哲也
前回の公演からの配役。別所哲也の舞台は初めてだったが1回観て、けっこう気に入った。歌はまだまだ語りの延長だが芝居が巧いのでこれはいいキャスティングだと思い、もう1回観劇日を増やしたくらいである。司教の家での粗野な食事の仕方、司教が銀の燭台をくれた時のどう受け止めたらいいのかというしぐさは、その後「兄弟」と呼ばれ諭されて生まれ変わる決意を抱く心の変化を歌う時の芝居につながっていく。娼婦に身を落としたファンテーヌがバルジャンに唾をはきかけてからコゼットを助けて育てていくと語り、死を看取るという流れも感情無理がない。「ブリング・ヒム・ホーム」の独唱は老いて死んでいく自分を両の手を見つめるという表現で演じ、若いマリウスにコゼットを託すという気持ちがしっかり伝わってくる。砦で銃で撃たれ傷ついたマリウスを下水道の蓋を持ち上げて引き込むあたりの芝居もなかなか細かい。次は別所ラクでまた観たい。
ジャペール=鈴木綜馬
前々回の公演からの復活配役。待ってました!高島政弘があまりよくなかった(他の人と差をつけようと工夫しすぎて煩わしかった)ので交代と思われるが大正解。以前に観た時は鈴木さんの人柄がにじみ出てしまって「いい人が無理やり冷たい人間を演じている」ような雰囲気があったが、今回は冷たい表情も自然で、あの大きな目が冷たい輝きを持ってきた。信念に生きる男が冷徹に生きてきたのにそれがバルジャンを追いその生き様に打たれてアイデンティティ・クライシスを起こしてしまい、そこから逃げたいあまりにセーヌ河に身を投げるという流れがよりくっきりした。歌はもう文句なくきかせてくれるので至福!
ファンテーヌ=マルシア
前回の公演からの配役。前回はその前に演じて大好評だった『ジキル&ハイド』の娼婦ルーシーを観る方も引きずっていたのか、最初の女工の時から娼婦っぽい雰囲気がして気になった(娘もそう感じたとのこと)。今回は薄幸の女工さんにきちんとなっていました!だから後半娼婦に身を落としたところとの差がくっきり。その一皮向けた演技に感心。「夢やぶれて」と死ぬ前のシーンは泣かせてくれる。
エポニーヌ=坂本真綾
前回の公演からの配役。かつては母親と一緒になっていじめていたコゼットが裕福になって現れ、自分が恋こがれているマリウスと運命的な一目での相思相愛になり、その仲立ちまでマリウスに頼まれても断れずに恋文をコゼットに届けて砦に戻る途中に政府軍に撃たれてマリウスの腕の中で死んでいく。坂本はこの役にぴったりの切ない声を出せる。前回の公演から公演時間短縮のために全体がテンポアップされているが、「オン・マイ・オウン」は最もたっぷり歌って欲しい曲。ところが前回初役のエポは皆さん、早く歌いすぎ!!歌舞伎ではないが「たっぷり」と言いたい。
コゼット=知念里奈
今回初役。容姿はコゼットとして申し分ないが、残念ながら出だしの歌の高音部でまずつまずいた。月刊『ミュージカル』でも正直に語っているが裏声が苦手でそれを使わなければならない歌が多いというこの作品、そこをクリアできなければ、次回は辞退した方がいいと思う。
マリウス=泉見洋平
前回の公演からの配役だが、学生のひとりで出ている日しか観ていないので今回が初見。『ミス・サイゴン』では婚約者に一途な敵役だったが、今回も一目ぼれしたコゼットへの恋に一途な若者としての切ない思いがあふれていた。若々しいしナイスキャストだ。
アンジョルラス=坂元健児
前回の公演からの配役(だと思う)。歌声はもう『ライオンキング』のシンバ以来の主役声。若々しく自信に満ちた学生のリーダーにぴったり。マリウスと並んだ時のバランスが問題になるが、泉見マリウスとならちょうど釣り合いもとれて、ベストコンビかもしれない。
グランテール=阿部裕
前からの配役(覚えてないので失礼)で、学生集団の中でただ一人民衆蜂起に懐疑的だがアンジョルラスには惚れこんでいてこの集団の中にいる屈折したところが人間臭いこの役は儲け役だが難しい。ガブローシュを可愛がり、マリウスの恋に一番理解を示してくれる暖かい人柄をにじませながらさりげなく演じてくれる彼のグランテールは大好きだ。レミコンの地方公演ではジャベールも演じたようだが、本公演でのジャベールを待っている。
ガブローシュ=局田奈都子
前からの配役(覚えてないので失礼)で、今回のガブローシュ役の中でただ一人の大人の女性だ。浮浪児の親分格で街を守っているのは俺だという気概にあふれた少年の役だが、小柄できゃしゃな身体、少年のような声を生かした熱演で、毎回砦で政府軍に撃たれて死んでいくシーンには胸打たれる。ずっと頑張ってほしい。
テナルディエ=徳井優
前々回?の公演からの復活配役。三遊亭亜郎があまりよくなかった(劇団四季にいたらしく一応歌えますということで中途半端に懸命に歌うし、テナルディエに必要な芝居もできないしでレミコンまでキャスティングされた理由がわからなかった)ので交代と思われるが、こちらも大正解。以前に観た時よりも歌も余裕が少し出てきたような気がする。2000年のカウントダウンパーティーの時、バルジャンに扮してコゼット役の森久美子にぶんぶん回されていたが、その小柄な身体が今回も敏捷に動いて死体から物を盗んでのし上がった人物に見える。
テナルディエ夫人=森久美子
相当前からの配役で、このカンパニーの主のような存在。「宴会こじき」シーンの特注の金歯装着はもうこの役への入れ込みようがよくわかる。彼女が出てくるだけで場がなごむ。夫とともにバルジャンの対極にあるあくどく儲けてでもこの世を楽しく生きる脇役として示す存在力が大きいほど主役の生き方の素晴らしさが浮かび上がる。彼女の存在感は若返ったカンパニーを締める重要なものである。
写真は初日終演後にロビーで配布された読売新聞の号外。次は1900回記念公演を観るのでその時もまた書きます。