Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

伸び代に先払いする飲み代

2009-09-16 | 試飲百景
醸造家レープホルツとのハイキングは面白かった。ゾンネンシャインと呼ばれる大きな谷の出口の片方に広がる斜面を散策した。そのゾンネンシャインの一部ガンツホルンが、ドイツワイン法の弊害から無視されて、再びこの二年前にやっとVDPの一級地所として区分けされたのは当然である。

その説明は、彼に言わせると氷河のべろが押されてより古い地殻である層に堰き止められた場所がゾンネンシャインであり、内側に折れ曲がって堆積物が積み上げられた場所が雑食砂岩の瓦礫なのである。なるほどその辺りは古い石切り場も存在して、所謂ハールト山系が始まる所となっている。谷を隔てて反対側の斜面にあるのがカスタニエンブッシュと呼ばれるロートリーゲン層の地所でこれまた独特の味覚のワインが出来るのである。

ゾンネンシュタインの貝殻石灰部分は、昨年栽培を止めた近隣の農家から買い付けて拡張して新しい苗を植え始めていた。また、ガンツホルンの古い苗がボロボロとなると新たな苗をその切り取った株に這わせて植えることで、古い地下茎を利用して早く有利に葡萄の木の新陳代謝を計っている。

また興味深かったのは9月15日に全ての葡萄の糖比重を計り、既に先代からのノートが積み上げられているという事で、それが貴重な資料となっているのは間違いない。葡萄の病気の話しが話題となったのだが、何よりもその葡萄の摘み取り前の様子が髣髴とされた。

日曜日は前日の百人を越える参加者より大分少なく十分に話を伺えた。2009年の葡萄の成長は、現時点まで完璧なまでに推移しているので、余計に農家はそれを皮算用しないと言うのである。すると何か起きると思うのは、「誕生日を前には祝わない」とする心理と同じなのであろう。

特別に貰ってきた化学的数値を見ると、流石に葡萄の糖比重は押さえてあって、ガンツホルンでは92エクスレにしか至っていない。十月末の収穫と言うが、酸、残糖が8.3G、8.8Gと思わせないほどの辛口なのである。流石に貝殻石灰土壌のゾンネンシャインの方は僅か150Mしか離れていないに拘らず高い比重95エクスレから各々7.6G、8.5Gと、高いアルコール濃度に醸造されているが、飲み口はその石灰分によって酸が丸くなっていて極辛には仕上がっていない。

どちらが好みかと言われれば、やはり雑食砂岩のストレートさが活きたガンツホルンと必ず答えるだろう。ここのワインも新しいものや古いものを色々と飲ませて貰ったが、これほど素性がハッキリしているリースリングも少なく、頭が下がった。

土壌や手入れに関しては、農業局から講師を招いて当日セミナーが開かれていて余所の醸造所で顔見知りの女性達にご挨拶をしたが、ビオデュナミーがテーマになっていた。なるほどレープホルツの葡萄はそのレヴェルには至っておらず寧ろ貧弱気味であった。伝統的な方法とそうでない方法の利点欠点を述べていたように、この醸造所の葡萄もまだまだよくなる伸び代は十分に窺いしれた。

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