Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

小作り顔の「苦痛の母」

2020-03-06 | 文化一般
予想以上にいいものを観れた。画材も主題も想定上のものがあった。そうしたものは工房の親方デューラーやクラナッハ、また場外にもカールツルーへのグリュンヴァルトとも比較が出来た。ハンス・バルテュンク・グリーンを序でに観たことがあってもこうして中心に置くと視座が変わる。カールツルーヘでも1950年代以来のようだから価値がある。要するにその主題などが今日的になってきているという事だろう。

同じような宗教改革時代の主題でも全くクラナッハとは世界が違うのは当然としても、やはりその絵が中々よい。クラナッハのあの乾いただけの絵との違いが大きい。

一番最初の十八歳の自画像は小さめの目がパチクリで、その斜に被った帽子と表情がとてもいいのだ。まさにデューラー自画像とも勿論クラナハらとは住んでいる世界が違う。さわやか青年である。そしてそのように描くのがおかしなナルシズムにもなっておらずこの人物の趣味の良さ否その作品の全てを表している。

それに続いて目を引いたのはクリーヴランドにある有名なグレゴールのミサという三枚組の祭壇絵である。これだけは写真を撮ろうとしたが断られた。要するに持ち主のクリーヴランドの美術館が見せたがらないのだろう。確かに大作で如何にも彼の地で喜ばれそうな大変魅力的な色彩である。

しかしその次の部屋にあった「苦痛の母」はもっとよかった。光彩の後ろ側にある枝ぶりの不思議な木が胸に刺さる槍と微妙な角度になっていてとても構造的に気が利いている。自画像で分かるようにグリーンの感覚は絶妙である。工房の職人として重宝したと思う。クラナッハの所で散々こうした大工房のモデュールにしてそれらを組み合わせたような仕事ぶりを知ったが、こうした構成力などは、矢張り天の配剤なのは音楽でも全く同じで、職人的な腕だけでは到底叶わない。

そしてこの女性の顔がまたその自画像に釣り合った表情や顔つきで目元だけでなくて口元がいい。女性像のデッサンはヌードも多数あって、娘とは言いながらも当時の美意識から下腹が出ていたりはするのだが、顔つきは似通っている。要するに母親の顔立ちが大体浮かび上がって来た。目元も口元も小振りなのだ。そもそもシュヴェービッシュの人だから今でもその手の顔つきの人はそこに少なくない。

デューラーの工房を26歳で出て、ハレでの仕事の後シュトラスブルクで結婚してから、更に人気が出て、フライブルクのミュンスターなどからの依頼が絶えなかったようだ。またポートレートなどの通常の依頼とは別に鑑賞目的の絵を依頼されている。とても趣味が良い人なので当時の貴族や富裕層などにもとても人気があったのはよく分かる。

それでも祭壇画やステンレスグラスの仕事ぶりや納め先がカールスルーへからそう遠くない所ばかりで、まるで京滋周辺の仏閣に収められている美術品を一堂に集めて観るような塩梅になっていた。最終週ゆえか予想以上に沢山の人が押しかけていた。幸い団体さんはフランスからの二班のグループだけで、学校のそれなどは無かった。

行きには予定したよりも時間が掛かった。理由はHereWeGoの指示に従わずに自身の慣れた道筋を走ったばかりに大きな工事にぶつかってしまったからだ。それでも何とかUターンして目的の道へと入った。大分早く着く筈がシュロースパークの駐車場に入ったのは10時を過ぎていた。幸い予想された大雨も降らず、殆どコリドーを歩くことが出来たので、帽子だけで帰路も全く問題が無かった。

出かけたのが8時40分ほどで、10時25分頃に入場して、車に戻って来たのが12時30分頃、二時間二十七分注射で4.50ユーロ、スーパーに寄らなければ14時前には帰宅していた。結局六時間近く外出していたことになる。そのスーパーでは客と店員が態々エルボーで挨拶していた。

苦沙弥をした人は一人いたが、あまり気にしている人はいなかった。但し濃厚接触とはいかないが、結構絵の前では皆寄り添っていたので感染者がいると厳しかったかもしれない。少なくとも洟を咬んだり咳などをしていると係員が立ち寄って来たのは間違いないだろう。こちらは急に腹の調子が怪しくなってきた。お腹を下すようなものを食した覚えはないのだが、展示を観ているうちに腹が落ち着かくなってきていた。(続く)



参照:
ラストチャンスを活かす 2020-03-05 | 雑感
モデュール構成の二百年 2008-01-19 | 文化一般

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