初の長編小説「孤独な噴水」 吉村 昭
常見耕二は21歳。おもちゃ工場で働いている。
凶暴な父や、障がいを持つ姉、夜間高校へ通う弟。ガード下の一間のアパートで暮らしながら、ボクシングジムへ通い、この生活からの脱却を夢見ている。
恋人の強奪や病に倒れた母親の登場。ジムのファイトマネー問題や、さまざまな理由で挫折し拳闘の世界を去る先輩たちなど。戦歴を重ね、夢の実現に一歩一歩近づく一方で、襲い掛かる難題。
この「孤独な噴水」は、昭和39年(1964)、吉村昭が37歳の時の作品。次の長編は昭和41年(1966)の「戦艦武蔵」である。若さ溢れる文体が読み手をぐいぐいと引っ張る。また、このころよく見ていたというボクシング界を、綿密な取材できちんと構築するあたりはさすが。
この頃の吉村は、1959年、62年と4回の芥川賞にノミネートされながら、受賞を逃し、次兄の営む繊維会社に勤めていたという。そこで、出版社から初めての長編小説のお誘いがあり、半年で書き上げた作品。
平成7年(1995)に文庫化するにあたり、あとがきの中で吉村は、若かりし頃のこの作風を、衒気(げんき)と表現し、自分をよく見せかけようとする気持ちがあり、気恥ずかしさを覚えたと表している。
常見耕二は21歳。おもちゃ工場で働いている。
凶暴な父や、障がいを持つ姉、夜間高校へ通う弟。ガード下の一間のアパートで暮らしながら、ボクシングジムへ通い、この生活からの脱却を夢見ている。
恋人の強奪や病に倒れた母親の登場。ジムのファイトマネー問題や、さまざまな理由で挫折し拳闘の世界を去る先輩たちなど。戦歴を重ね、夢の実現に一歩一歩近づく一方で、襲い掛かる難題。
この「孤独な噴水」は、昭和39年(1964)、吉村昭が37歳の時の作品。次の長編は昭和41年(1966)の「戦艦武蔵」である。若さ溢れる文体が読み手をぐいぐいと引っ張る。また、このころよく見ていたというボクシング界を、綿密な取材できちんと構築するあたりはさすが。
この頃の吉村は、1959年、62年と4回の芥川賞にノミネートされながら、受賞を逃し、次兄の営む繊維会社に勤めていたという。そこで、出版社から初めての長編小説のお誘いがあり、半年で書き上げた作品。
平成7年(1995)に文庫化するにあたり、あとがきの中で吉村は、若かりし頃のこの作風を、衒気(げんき)と表現し、自分をよく見せかけようとする気持ちがあり、気恥ずかしさを覚えたと表している。