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パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

心を軽やかにする小林一茶名句百選

2024-06-02 | book
昭和35年生まれの大学教授、齋藤孝の「心を軽やかにする小林一茶名句百選」を読んだ。令和5年6月刊行。

なぜ一茶に惹かれるのか。まず、わかりやすい。そして思いがにじみ出ていること。さらに有季定形であることだ。

一茶は信濃、柏原(現在の長野県、野尻湖の近くの信濃町)の出身。江戸の後半、文化文政の頃の俳人。といっても芭蕉や蕪村といった教養人ではなく、農家(といっても地方では資産家)の出。この生涯が壮絶だ。
3歳で母と死別。後妻との折り合いが悪く、長男なのに15歳で江戸へ奉公に出される。10年間に、いろいろな職業に就く。そして俳諧師として歩むことになる。30歳から7年にも及ぶ西国行脚。39歳で父が亡くなる。その遺言により義理の弟と遺産相続でもめ、やっと51のときに決着を見る。そして故郷に帰り、52歳で結婚し子供を設けるが、妻や4人の子が次々と亡くなる。64歳で3度目の結婚。一茶は65歳で亡くなるも、その翌年に5人目の女児が生まれる。

私に百句を解説する能力はない。ただ、楽しめばよいと思う。見開きで一句鑑賞。右に句と季語。時たま著者の手書きイラストあり。左ページに解説と関連句。

ただ、句が3行に分かれていること、目次の句が上中下を分けるため一字空きになっていることに違和感がある。

可燃物

2024-05-19 | book
1978年生まれのミステリー作家、米澤穂信の「可燃物」を読んだ。2023年7月刊行。推理短編5編を掲載。2020年、2021年、2023年に月間文芸誌に掲載された群馬県警の刑事、葛(かつら)の名推理を描く。

米澤は、2014年平成26年の『満願』で
「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」1位の史上初のミステリ・ランキング3冠に。
翌年の2015年の『王とサーカス』で
2年連続でミステリ・ランキング3冠に輝いた。
そして、2022年令和2年、『黒牢城』で
直木賞、そして、2021年の「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」の国内部門1位で、史上初となるミステリ・ランキング4冠を達成した。
この可燃物で、
4度目の「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」のミステリ・ランキング3冠に輝いた。

崖の下
中学生の頃からの仲良し5人が、スノーボードに興じるため、群馬県のスキー場に来ていた。その中の後藤と水野が崖の下で発見される。後藤は首筋を刺され、死んでいた。犯人は水野か。しかし、凶器が見つからない。

ねむけ
群馬県で一人暮らしの76歳の女性が襲われ、金品を持ち去られていた。3人の容疑者のうちの一人、田熊は翌日の朝、3時に信号交差点で軽乗用車と事故を起こした。田熊が信号無視で事故を起こしたなら逮捕できる。信号は赤だったのか、青だったのか。2台ともドライブレコーダーを搭載していなかった。そこに4人の証言者が現れる。4人とも赤だったという。

命の恩
バラバラの人の死体が確認された。遺体は塗装業を営む58歳の男性野末。野末の部屋から手書きの借用書が出てきた。それも特定の男性宮田村から金を借りていた。次々と見つかる遺体。宮田村は娘と山で遭難した際に、野末に助けられていた。野末は生命保険に加入していた、受取人は息子。宮田村は殺人を自供する。遺体の中で首が見つかっていなかった。

可燃物
12月、可燃物のゴミ収取場所で放火事件が起きる。7件の不審火も起きる。着火に使われたさまざまな紙。3人の不審人物が浮かび上がる。その一人が60歳代の大野原だった。7年前の家具店火災に関わり、今はスーパーの警備をしていた。そして放火がピタリと止まる。

本物か
ファミレスで男が立てこもっていると連絡が入る。当時の様子を聞きこむ葛。犯人に34歳の前科一犯の志多が浮かび上がる、店内には46歳の店長、20代後半の女性のホールスタッフ、そして6歳の志多の息子がいるらしい。

いずれも状況証拠を丹念に積み上げ、真実に迫っていく。先入観の怖さ。話の展開が読者を引き付けて離さない。短編が故の緊張感が続く。

流人道中記

2024-05-05 | book
1951年生まれ。浅田次郎の「流人道中記」を読んだ。平成30年2018年7月から令和元年2019年10月までの新聞小説。令和2年2020年3月初版。

不義密通の罪に断じられた格式高い旗本、青山玄蕃。切腹のところを蝦夷福山の松前氏預かりとなる。その押送の係を命ぜられたのが、200石取り町奉行与力、19歳の石川乙次郎だった。この2人の道中で起こるさまざまな出来事を玄蕃は飄飄と関わっていく。乙次郎はその都度、巻き込まれることになる。

乙次郎は30俵2人扶持の足軽同心の次男坊だったが、婿養子の口がかかる。妻は15歳のきぬ。乙次郎との同行を命ぜられた50過ぎの最古参の同心、田中弥吾郎は出立早々出奔してしまう。

杉戸宿 旅籠ゑびす屋の女主人おはま。41の厄日前に夫に先立たれ、子どもはいない。宿を閉めようとしていた。
中田関所 御番頭の加藤軍兵衛
佐久間宿 按摩の得悦 
芦野宿 懸賞のかけられた強盗の稲妻小僧の勝蔵、勝蔵と同郷の幼馴染、33歳の飯盛り女のお栄、賞金稼ぎの浪人、40過ぎの野老山(ところやま)権十郎、
仙台領の大河原宿 常陸の国宍戸松平家の家来、神林家の部屋住みの次男坊30の内蔵助。親の仇を追って奥州を徘徊すること7年。相手は奥州訛の俳諧好みの佐藤竹亭。本懐を祈願するため訪れた仙台ご城下の大崎八幡で1人の雲水と出会う。仙台城下の薬種問屋千歳屋の丁稚、16歳の亀吉は強盗の引き込み役に嵌められた
有壁宿 生類憐みの令に端を発する宿村(しゅくそん)送り。病を得た旅人が故郷に帰りたいを願ったらその街道の宿駅はその意思をかなえてやるというもの。奥州盛岡の百姓お菊。45歳。伊勢詣での帰り、一関の宿で重体となり、宿村(しゅくそん)送りを願い出る。沼宮内宿へ。そこに青山玄播と乙次郎が通りかかる。

青山玄播が自分の出自と今回の不義密通の件を乙次郎に語り始める。

道中、さまざまな人との出会いがエピソードとして語られ、最後に玄播の己が生き様で大団円を迎える。浅田次郎の新聞小説ならではの緊張感のある各章のストーリー。引き込まれ、上下2巻を一気に読んだ。

大名倒産

2024-04-28 | book
浅田次郎の痛快ファンタジー時代劇「大名倒産」を読んだ。2019年令和元年12月第1刷。
時は幕末、黒船来航の頃、佐渡に近い新潟の越後丹生(にぶ)山3万石の松平和泉守信房は若干21歳で13代当主となる。四男だが、長男のいきなりの逝去により、次男病弱、三男いささか能力欠如と、お鉢が回ってきた。
登城するも足止めをくらい、幕閣から幕府への上納金が滞っていると指摘を受ける。藩の借金は25万両、利子だけでも年間25万両という。どうも先代は私腹を肥やすだけこやして、倒産してしまおうともくろんでいるらしい。
それを何とか立て直そうとする若き当主。助太刀をする当主の幼馴染2人を側近にして、元武士の水売りを採用。参勤交代でお国入りを果たし、鮭の養殖や加工を手掛ける育ての親、三男の嫁の父の旗本大番頭などの個性派が当主を支える。さらに改心する貧乏神と七福神の面々がハッピーエンドに道をつける。



王とサーカス

2024-02-25 | book
1978年生まれのミステリー作家、米澤穂信の「王とサーカス」を読んだ。2015年平成27年7月刊行。
米澤は、2022年令和2年、『黒牢城』で直木賞、そして、2021年の「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」の国内部門1位で、史上初となるミステリ・ランキング4冠を達成した。少年期から小説を書き出したという。

2014年平成26年の『満願』で「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」1位の史上初のミステリ・ランキング3冠に。翌年の2015年の本作も、2年連続でミステリ・ランキング3冠に輝いた。

舞台はネパールの首都カトマンズ。2階建てのホテル「トーキョーロッジ」に宿泊する28歳の女性ライター、太刀洗万智(たちあらい まち)が主人公だ。新聞社を辞め、フリーで仕事を探していると、雑誌の編集者からアジア旅行の記事を書かないかと誘われ、下見のつもりでネパールを訪れた。そこに王室の虐殺事件が起こる。
王宮に詰め寄る民衆。外出禁止令も出されるなか、その事件を知ろうと万智は、軍人のラジェスワルと接触する。万智は、ラジュスワルが殺されているのを見つける。王宮事件と関わりがあるのか。軍人の死を追う万智。そして、トーキョーロッジに泊まる他の3人の客。道案内の少年。
土地勘のない異国の街。言葉の通じないもどかしさ。誰がラジェスワルを殺したのか。その意図は何なのか。
題名の「サーカス」は軍人のラジェスワルが万智との会話の中で出す言葉だ。



よもだ俳人子規の艶

2024-02-11 | book
テレビ番組の「プレバト」でお馴染みの俳人夏井いつきさん1957生まれ66歳と、映画監督で俳優の奥田瑛二さん1950生まれ73歳の対談を中心にした共著「よもだ俳人子規の艶(つや)」を読んだ。2023年9月1刷。新聞俳句欄で紹介されていた。
著書名から、正岡子規をめぐる話だというのはわかる。ことの発端は、子規の句を読んで推し10句(うち3句は遊里に関するもの)を選んでくるものだったという。巻末の両氏の推し10句の下にページ数があり、2人の解説箇所がわかる。

そこから子規の句に遊里に関するものが多いということになり、映画監督らしい、句と映像の奥田ワールドが展開する。正岡子規は明治元年の前年生まれなので、亡くなった明治35年が35歳ということになる。巻末の艶(つや)俳句一覧には、明治22年から明治35年までの360句が掲載されている。

奥田
人と句を読むのが苦手。句会とも縁遠く、1人で淡々と、「独りぼっちの俳句」
俳句は教養を磨くためのものではなく、心を鍛えて抜く覚悟がないと続けていけない。
俳人にとっては自分が老いていくことは、主観的には嫌なことだけど、客観的には興味の対象となる。
俳句はわずか17音でありながら最も長なる文学。想念の世界は無限大。作り手はわずか数語のヒントしかくれない。受け手はどこまでも想像の羽根を伸ばせる。
書き続けることが子規の生きるエネルギー。子規俳句は彼がどう生きたかの証。
師匠もいなくて我流で30年続いている。うまく詠みたいとか、周りから評価されたいというのではなく、俳句という表現の中で、自分の感覚を外界とつなげられるのが快感なのだ。夏井「奥田にとって俳句とは季語と自分とが対話する17音の宇宙なのだ」
句を声に出して、耳で聞き、大学ノートに書くという。
松山の上人坂を歩いて伊月庵を訪れ、坂の上の宝厳寺の山門で道後の風にも吹かれた。

夏井
自分が作った句がなかなか評価されないからやめようという人が大勢いる。俳句は傑作を求めるものではない。たまたま見事な句ができても呼吸がきれいにいきまったぐらいなものだ。
制約がある中で自分になにができるか。それをとことん楽しめ。大切なのは自分が楽しむことがなによりも先頭にあること。他人が評価してくれないなんて、あんたなんのために俳句やってんの。
子規の淡々とした描写に魅力を感じる。奥田監督は情感までも詠み込んだ句がいいという。
同じ風景を眺めて、同じ季語を使っても生まれてくる句は個性を反映する。作り手ばかりでなく、読み手の心も反映してくる。奥田「流れ移ろう心を切りとって17音にのせる、魂の写生なのかも」

子規俳句の解説だけでなく、両氏の俳句に対する姿勢が垣間見れて楽しいひとときだった。

藤田湘子 新版 実作俳句入門

2024-01-07 | book
明けましておめでとうございます。
「暑」が昨年の漢字一文字だった。今年はどんな年になるのだろうか。
皆、元気で過ごせることを念ずる。

平成17年に79歳で亡くなった俳人の藤田湘子(昭和元年1926年–平成17年2005年)の「新版 実作俳句入門」を読んだ。平成24年2012年初版。これは昭和60年(1985)刊行、平成12年(2000)に改訂された「新実作俳句入門」を改訂、改題したもの。

1 実作の前に
(1) 自分は何のために俳句を作っているのか。誰のためでもない。自分のためだ。俳句は、この過酷な世の中を自分がどう生きているのかという証。そうした自分を見つめ、自ら慈しむ気持ち、それが俳句の根底にないと、読む人の心をうつ俳句は作れない。自分のためには自愛の心につながる。
(2) 俳句の素質とは何か。俳句を作ることを継続することが出来るかどうかで素質のあるなしが決まる。
(3) 投句をしなさい。選者と投句者というかかわりにより、投句者側が育つ。これ以外の方法で上達しようと思ってもなかなかうまくいきません。
(4) 自分の俳句を作るとは何か。常套的で公式的な作り方になってしまう。自分の心、眼、発想、ことばをしっかりと持ってつくろう。それまでには5年10年といった修練期間が必要だ。その修練期間にやることを設定するために、1期と2期に分ける。
(5) 1期は初学から3,4年までの人たち、そして、2期は5,6年から10年ぐらいまでの人たちだ。まず、その人たちの学び方を伝授する。
ア 第1期の人は 
とにかく投句。そして作りなさい。ひたすら作ることに専念しなさい。良い真似をしなさい。真似は2、3年で終わりなさい。歳時記をよく読み、季語を記憶しなさい、季語を自由に使いこなしなさい。
イ 第2期の人は
正岡子規以降の著名な俳人の句をよく読みなさい。19人2句を掲げる。読んでいくうちに必ずハッと感じる句にぶつかる。眠っていた詩情が刺激される。それを何度も何度も朗読しなさい。朗誦しなさい。的確な言葉や表現力を学ぶことができる。リズム感が体内に入っていく。自分で納得できなかったら次の句へ進んでよい。ただし、朗誦はしなさい。

2 俳句の三つの基本
(1) 17音字ではない、五・七・五という型の魅力・特徴に触れる。
(2) 俳句のいのちとして季語を二つ目に。
(3) そして、切字の効用、「や」「かな」「けり」を述べ、
(4) 俳句の基本形を提案する。それは、A[上五に季語+や]、そしてB「中七と下五(名詞)」をひとくくりにするものである。これは配合、取り合わせ、二句一章、二物衝撃といわれるものだ。この典型どおりの作り方をものしてしまえば、俳句の基本が身についたといっても過言ではないと言い切る。俳句は型であると。

3 実践篇1 実作のポイント…14項目 こう詠ったらうまくいく、こう詠うと失敗するポイントだ。
(1) 気取りのポーズをなくす
普通の言葉で自分や自分の身辺を詠ったほうがずっと力がある。
(2) 陳腐なものは陳腐
神社仏閣。常識(家族団らん、夏の向日葵のまぶしさ、訃報の動揺)
(3) 省略は佳句の出発点 
(4) 今を描写する 
写生は俳句の基本。それが目的ではなく、手段として大切だ。無視してはいけない。
(5) 季語は離して使う。
離すのにも頃合いがある。その頃合いを知るのも俳句の修行だ。
(6) 「だから」ではない 
AとBが「だから」で結ばれている。これでは「詩」ではない。だからで季語を選ぶな。
(7) 季語を修飾するな 
ぽつんとあるだけで色々な連想が沸いてくる。飾り立てたり、余計な紹介をしなくてもよい。
(8) 一句一動詞 
先人の知恵。俳句という詩型を有効にしよう。動詞を少なく。叙述してはいけない。しゃべろうという姿勢を規制するもの。読んで安定感がある、印象も鮮やか。名詞が働いている。
(9) 「てにをは」の妙味
俳句の散文化が進んでいる。悪い表現のサンプル「なにがなにしてなにとやら」。文語表現を学べ。
(10) 中七の字余りは解消せよ
(11) 下から読んでも 中七が上五、下五どちらにつくかちゃんと決めろ
(12) 孫に名句なし
(13) テレビ屋になるな 
俳句は現場第一主義がいい。小さなイヌフグリを見て春の到来を知る喜び、緑陰で得たひとすじの涼風に憩い、秋の花野にあそんで若き日を回想し、寒さの中に自分の生き方を見つめる。対象にじかに接して自分の中に湧き上がるのを待つ。
(14) 風流ぶりをやめよ 
風流がりや気取りのポーズ、道徳観や倫理観、分別臭さや教訓、駄洒落や謎解き、低劣な擬人法、かなし。淋しうれし小主観を安易にあらわに出す、理屈、わざとらしいお涙頂戴の浪花節人生

4 実践篇2 作句のテクニック…16項目。項目ごとに、実践例として、それぞれに名句を味わう。鑑賞することで理解が進み、テクニックが学べます。テクニックとは自分の詠いたいことをより強く、より確かに読み手に伝えるための手段です。自分のものにしてより多彩な表現方法を身につける。
(1) 絞る 目の前の一番小さな季語を選ぶ。全体から部分へ
上五 → 中七 → 下五
遠    中    近
大         小
全体        部分
(2) 命令 自分への命令→厳しい表現欲求 と対象への命令→挨拶・呼びかける
(3) 否定 否定した物や事柄が、肯定する形で言った以上に見えてくる。
(4) 疑問・推量 知っているのに知ったふりをして、疑問の形、推量の形で表現する。
(5) 擬音 擬声語、擬態語 当たり前の言葉は逆効果。意外性があって、対象の質感や臨場感が十分に伝わるもの
(6) 繰り返す リフレイン 目立たずに作者の狙いどころが見えてくることが肝要。
(7) 並列・対称 言葉のリズムが快感をもたらす
(8) 比喩 やうなる・ごとき→直喩 極めて困難で、危険率が高い。君子危うきに近寄らず
(9) 我を出す いい句には俳句の後ろにいる作者を感じることが出来る。作者の生き方などがおのずから伝わってくる。
(10) 体の部分も 「我」では出過ぎる。作者の息遣いを出したい。身体のある部分を出す。
(11) 字余り 有効な技法のひとつ。いい加減な字余りは何の薬にもならない。5・7・5の定型句を作り、リズムの上で物足りなかったときに字余りを考えてみる。
(12) 色彩
(13) 数詞 この数字以外では様にならぬようにできているか
(14) 地名を詠む
(15) 人名を詠む
(16) 慶弔と贈答の句 自然観照がおろそかになってはいけない。意味を抑える。

5 佳句を味わう 42人の俳人の句 1句42句 藤田湘子先生の解説付き

徒然草

2023-12-31 | book
家に一冊の文庫本がある。244段からなる吉田兼好の随筆集、徒然草だ。川瀬一馬(1906年明治39~1999年平成11)の校注と現代語訳付き。第1刷が昭和46年1971年。手元にあるのは第11刷の昭和50年1975年発行のものだ。記憶では、高校の古典の授業で徒然草を知り、その世界に触れたいと書店を訪れ、棚にあった同著を買った記憶がある。多分、全部読むのではなく、教科書に載っていた部分を確認するために買ったのだと思う。値段は300円。半世紀前の本だ。

著者の吉田兼好は、鎌倉時代の終わり(1333年)から南北朝時代の人。1350年に68歳で亡くなったという。神官の家に生まれ、漢学から和歌、仏教にも精通していた。30代半ばに出家し、徒然草は50歳ごろに作られたとされる。

私も今年65歳となり、高齢者の仲間入りを果たした。いよいよ兼好法師が亡くなった年齢に近くなってきた。そんな時、図書館で「こころ彩る徒然草 兼好さんとお茶をいっぷく」と出会った。平成29年2017年、5年前に発刊された、昭和34年生まれのエッセイスト、木村耕一の著だ。244段の中から、現代に通じるメッセージを66選び、意訳した生きるヒント集だ。

このヒント集を読もうと、徒然草の解説本を検索してみた。直近では平成27年(2015)初版の「新版 徒然草 現代語訳付」を購入。令和5年(2023)37版だ。川瀬本と同様に、後半にまとめて現代語訳があり、注も川瀬本より少ない。
図書館で昭和54年(1979)第一刷の講談社学術文庫の三木紀人の徒然草を見た。各段に現代語訳、語釈、解説がある。4分冊だが、段落ごとに読む進めることができ、解説も奥深い。購入した本は、令和4年(2022)第50刷だ。つまり40年以上読み継がれているということ。

いずれも文庫本なので如何せん、字が小さい。どうしようもない。そこで、これも図書館で岩波書店の「新 古典文学大系39」の徒然草を見た。A4版の大きさで、現代語訳はないが、脚注が各ページにある。字も大きい。ただ、1989年(平成元年)1月初版(3,000円)。品切れで現在では販売していない。なんとかセカンドハンドで手に入れた。

もっと若い頃に読んでいたらと、よく感想にある。しかし、この境地はそれなりの経験を踏まなければ、心に響かないと思う。65歳にして、徒然草を前にあたふたする自分がいる。法師の心情が染みる。

よいお年をお迎えください。

二つの句集

2023-12-03 | book
今年10月に二つの句集を手に入れた。「六歳の俳句」と「磯見漁師」だ。
前者の作者、かとうゆみさんは、書名のとおり6歳から俳句を始めた。刊行当時の令和5年2023年現在で小学4年生だ。
後者の作者は斉藤凡太さんは大正生まれ。妻の死がきっかけで70歳から俳句を始めた。刊行時の平成24年2012年は87歳で、2022年令和4年2月に95歳で亡くなる。かとうさんは全国紙に、斎藤さんは新潟の地方紙に投句を続けた。

就寝前に、それぞれの感性に触れる時間を持つ。かとうさんには学校生活や家庭での斬新な感受性を、さいとうさんには日々漁師の暮らしの中での感動を。また、知らぬ季語との出会いが楽しい。かとうさんの本には句の背景が書いてある。

日本の不思議な夫婦同姓

2023-10-15 | book
1977年昭和52年生まれ、46歳の社会学者、中井治郎の「日本の不思議な夫婦同姓 社会学者、妻の姓を選ぶ」を読んだ。2021年令和3年12月刊行。

結婚したら夫の姓に。あたりまえと思っていたことを、妻の姓にしたがために起きた現象から過去から今を、そして将来を読み解く。

姓を同一にしなければ結婚できない日本! 
明治の民法の戸主制。家を継ぐこと。次男三男の役割あった。
戦後、戸籍法の戸籍筆頭者と住民基本台帳法の世帯主。

なんと世界で夫婦同姓は日本だけ。結婚したカップルの96%が男性の姓を選択する今。

土地や家業に縛られていた戦前は家族誰もが稼ぎ手。
高度経済成長期の都市への流入・一極集中。男は仕事・女は家庭.
その後の共働き社会。工業社会からの変化。男稼ぎが不安定化する脱工業化社会。1980年から40年で専業主婦は半減。
それでも専業主婦は500万世帯以上。共働き世帯は1200万世帯。追い抜いたのはバブル崩壊の1991年。
恋愛市場や婚活戦線で立ち尽くす若い男たち。
結婚しなくても幸せになれる時代になぜ結婚するのか。自立が試される今。そのリスクと不安。

選択的夫婦別姓が目指すもの。あくまでも選択の一つ。100家族あれば100の家族の形。旧姓の通称使用でOKの反対派。

読み応えあり。日本の社会。