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藤田湘子 新版 実作俳句入門

2024-01-07 | book
明けましておめでとうございます。
「暑」が昨年の漢字一文字だった。今年はどんな年になるのだろうか。
皆、元気で過ごせることを念ずる。

平成17年に79歳で亡くなった俳人の藤田湘子(昭和元年1926年–平成17年2005年)の「新版 実作俳句入門」を読んだ。平成24年2012年初版。これは昭和60年(1985)刊行、平成12年(2000)に改訂された「新実作俳句入門」を改訂、改題したもの。

1 実作の前に
(1) 自分は何のために俳句を作っているのか。誰のためでもない。自分のためだ。俳句は、この過酷な世の中を自分がどう生きているのかという証。そうした自分を見つめ、自ら慈しむ気持ち、それが俳句の根底にないと、読む人の心をうつ俳句は作れない。自分のためには自愛の心につながる。
(2) 俳句の素質とは何か。俳句を作ることを継続することが出来るかどうかで素質のあるなしが決まる。
(3) 投句をしなさい。選者と投句者というかかわりにより、投句者側が育つ。これ以外の方法で上達しようと思ってもなかなかうまくいきません。
(4) 自分の俳句を作るとは何か。常套的で公式的な作り方になってしまう。自分の心、眼、発想、ことばをしっかりと持ってつくろう。それまでには5年10年といった修練期間が必要だ。その修練期間にやることを設定するために、1期と2期に分ける。
(5) 1期は初学から3,4年までの人たち、そして、2期は5,6年から10年ぐらいまでの人たちだ。まず、その人たちの学び方を伝授する。
ア 第1期の人は 
とにかく投句。そして作りなさい。ひたすら作ることに専念しなさい。良い真似をしなさい。真似は2、3年で終わりなさい。歳時記をよく読み、季語を記憶しなさい、季語を自由に使いこなしなさい。
イ 第2期の人は
正岡子規以降の著名な俳人の句をよく読みなさい。19人2句を掲げる。読んでいくうちに必ずハッと感じる句にぶつかる。眠っていた詩情が刺激される。それを何度も何度も朗読しなさい。朗誦しなさい。的確な言葉や表現力を学ぶことができる。リズム感が体内に入っていく。自分で納得できなかったら次の句へ進んでよい。ただし、朗誦はしなさい。

2 俳句の三つの基本
(1) 17音字ではない、五・七・五という型の魅力・特徴に触れる。
(2) 俳句のいのちとして季語を二つ目に。
(3) そして、切字の効用、「や」「かな」「けり」を述べ、
(4) 俳句の基本形を提案する。それは、A[上五に季語+や]、そしてB「中七と下五(名詞)」をひとくくりにするものである。これは配合、取り合わせ、二句一章、二物衝撃といわれるものだ。この典型どおりの作り方をものしてしまえば、俳句の基本が身についたといっても過言ではないと言い切る。俳句は型であると。

3 実践篇1 実作のポイント…14項目 こう詠ったらうまくいく、こう詠うと失敗するポイントだ。
(1) 気取りのポーズをなくす
普通の言葉で自分や自分の身辺を詠ったほうがずっと力がある。
(2) 陳腐なものは陳腐
神社仏閣。常識(家族団らん、夏の向日葵のまぶしさ、訃報の動揺)
(3) 省略は佳句の出発点 
(4) 今を描写する 
写生は俳句の基本。それが目的ではなく、手段として大切だ。無視してはいけない。
(5) 季語は離して使う。
離すのにも頃合いがある。その頃合いを知るのも俳句の修行だ。
(6) 「だから」ではない 
AとBが「だから」で結ばれている。これでは「詩」ではない。だからで季語を選ぶな。
(7) 季語を修飾するな 
ぽつんとあるだけで色々な連想が沸いてくる。飾り立てたり、余計な紹介をしなくてもよい。
(8) 一句一動詞 
先人の知恵。俳句という詩型を有効にしよう。動詞を少なく。叙述してはいけない。しゃべろうという姿勢を規制するもの。読んで安定感がある、印象も鮮やか。名詞が働いている。
(9) 「てにをは」の妙味
俳句の散文化が進んでいる。悪い表現のサンプル「なにがなにしてなにとやら」。文語表現を学べ。
(10) 中七の字余りは解消せよ
(11) 下から読んでも 中七が上五、下五どちらにつくかちゃんと決めろ
(12) 孫に名句なし
(13) テレビ屋になるな 
俳句は現場第一主義がいい。小さなイヌフグリを見て春の到来を知る喜び、緑陰で得たひとすじの涼風に憩い、秋の花野にあそんで若き日を回想し、寒さの中に自分の生き方を見つめる。対象にじかに接して自分の中に湧き上がるのを待つ。
(14) 風流ぶりをやめよ 
風流がりや気取りのポーズ、道徳観や倫理観、分別臭さや教訓、駄洒落や謎解き、低劣な擬人法、かなし。淋しうれし小主観を安易にあらわに出す、理屈、わざとらしいお涙頂戴の浪花節人生

4 実践篇2 作句のテクニック…16項目。項目ごとに、実践例として、それぞれに名句を味わう。鑑賞することで理解が進み、テクニックが学べます。テクニックとは自分の詠いたいことをより強く、より確かに読み手に伝えるための手段です。自分のものにしてより多彩な表現方法を身につける。
(1) 絞る 目の前の一番小さな季語を選ぶ。全体から部分へ
上五 → 中七 → 下五
遠    中    近
大         小
全体        部分
(2) 命令 自分への命令→厳しい表現欲求 と対象への命令→挨拶・呼びかける
(3) 否定 否定した物や事柄が、肯定する形で言った以上に見えてくる。
(4) 疑問・推量 知っているのに知ったふりをして、疑問の形、推量の形で表現する。
(5) 擬音 擬声語、擬態語 当たり前の言葉は逆効果。意外性があって、対象の質感や臨場感が十分に伝わるもの
(6) 繰り返す リフレイン 目立たずに作者の狙いどころが見えてくることが肝要。
(7) 並列・対称 言葉のリズムが快感をもたらす
(8) 比喩 やうなる・ごとき→直喩 極めて困難で、危険率が高い。君子危うきに近寄らず
(9) 我を出す いい句には俳句の後ろにいる作者を感じることが出来る。作者の生き方などがおのずから伝わってくる。
(10) 体の部分も 「我」では出過ぎる。作者の息遣いを出したい。身体のある部分を出す。
(11) 字余り 有効な技法のひとつ。いい加減な字余りは何の薬にもならない。5・7・5の定型句を作り、リズムの上で物足りなかったときに字余りを考えてみる。
(12) 色彩
(13) 数詞 この数字以外では様にならぬようにできているか
(14) 地名を詠む
(15) 人名を詠む
(16) 慶弔と贈答の句 自然観照がおろそかになってはいけない。意味を抑える。

5 佳句を味わう 42人の俳人の句 1句42句 藤田湘子先生の解説付き
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