日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
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まずカミングアウトすると、実は監督としてのクリント・イーストウッドはあまり好きではなかった。
もちろん、対で戦争を冷酷に描写した「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」は傑作だと思っていたが。

ところが、最近の「チェンジリング」でフまずァースト・ダウン(2009-03-15 チェンジリングCHANGELING 間違いなく今年有数の傑作)
続いてヤバイかもと身構えたにもかかわらず、「多民族国家」の意味が変質しつつあるアメリカ自身を描き、ぶっ飛ばされた超魔球「グラントリノ」(2009-05-03グラン・トリノ Gran Torino 「名作」と呼ぶにふさわしい傑作」)
駄目押しは、昨年のベスト10にも入れた「インビクタス」(2010-01-28 インビクタス Invictus 開始5分で既に号泣(笑) これまた強烈な1発にノックアウト!)

一方で、この3連作ではほとんど感じなかったが、積極的にハマれない部分がある。
それは音楽。
監督だけでなく、イーストウッドは常に音楽も担当しているが、どうもこの相性が良くないのだ。
いくつかのシーンで、ここまでメロディアスな音をバックに配するセンスはないだろう、と思ってしまうことが多かった。
彼は自分の映画のみならず他の映画に曲を提供したりの経験もある(さよなら いつかわかること)
またジャズ・ピアノの腕前も「ピアノ・ブルース」などで拝見しても上手なのは認識している。
あくまでも個人的意見だが、音楽についてはぐっとこらえて他人にまかせた方がいいのではないかと感じることがある。


そして今回のヒアアフター。
ショッキングなオープニングに続き、「生」と「死」をメインテーマに物語が多重に深まっていく。
「死別」に苦しむ登場人物たちに、クリントの「眼差し」が映画全体を通して降り注がれ続けることを感じる(って凄いことだよね)
微妙なライティングやカット割り、そしてやはり「甘めの旋律」が映画を通して流れることで、それが実現される。

物語の進行でもふれられるが、「死後の世界」をあからさまに語ることは、そのコンテンツが直ちに「キワモノ」扱いされかねない「タブー」。
この映画はそれと正面から向き合っており、正に「キワモノ」扱いになりかねない内容。
なのだけれど、クリントの「眼差し」が降り注がれ続け、微妙にコントロールされることで、その扱いから逃れることが出来ている。
こうなってしまうと、気になってきた音楽も、彼の一部として受け入れざる得ないし、この映画の監督が、彼以外ではありえなかったことを理解した。

この映画を「恋愛もの」と強引にカテゴライズする方がいるようだが、とんでもないと思う。
異色作ではあるが、これも名匠(と言わざる得ない)イーストウッドが達した「境地」のひとつなのだ!
そういう点で、見逃せない1作。
公開は、2月19日(土)から。



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