紆余曲折を経ながら、長い時間をかけてつくりあげてきた「陶芸家の家」。いろいろなことを考えてつくった家ですが、そのなかでずっと頭の中にあったのは、陶芸家という仕事について。
原料となる土に体全体で向き合い、釉薬や焼成についての理論に向き合いながら作品をつくるというのは、本来的にはとても孤独な時間なのだろうと思います。
でもそれは、寂しいものではなく、制作上の微細な変化に耳を傾け、時に一喜一憂し、変化に富んだ日々なのではないかと思うのです。
1階の工房と、2階の住居を往復する日々。暮らすことと仕事をすることが同一であることを受け止める、ぐっと深く沈み込むような場所をつくりたいと思いながら設計に取り組んできました。
わくわくするようなエンターテイメントを家のなかにつくるのではなく、身近なものごとの微細な変化や情緒をじんわりと感じられるような場所をつくりたい。
テレビを観ながらリラックスできるような優和な雰囲気と、本棚の書籍の背表紙を眺めながら、陶芸について考える思索的な雰囲気が共存した空間をつくりたい。
長い時間をかけて、それらのイメージをゆっくりとあたためることができる仕事となりました。
その要となったのは、光、そして質感。