氏は東シナ海と南シナ海を分け、それぞれ説明しています。ご存知の方は多いと思いますが、二つの海が関係している国を整理しておきます。
〈 1. 東シナ海 〉
・ 東シナ海は、中国大陸、台湾、南西諸島、韓国、日本に囲まれた海洋を言う。
・ 日中間では、尖閣諸島の他、東シナ海ガス田の、経済水域の設定争いがある。
・ 中国と韓国の間では、蘇岩礁の領有に争いがある。
〈 2. 南シナ海 〉
・ 南沙諸島、西沙諸島、東沙諸島など、各国の利害が対立している。
・ 関係国は、中国、ベトナム、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイである。
箇条書きの方が分かりやすいので、割愛しつつ「東シナ海」から紹介します。
・ 中国の領海法制定以来、東シナ海では国籍不明の、不審な武装船による発砲、襲撃、臨検事件が急増した。
・ 発生件数・・1991 ( 平成3 ) 年は14回 1992( 平成4 ) 年は33回 1993 ( 平成5 ) 年は、半年で31回。
・ 不審船による被害を受けたのは、ロシア、韓国、ベトナムの船舶も含まれるが、日本船が圧倒的に多い。
・ 日本船だけ多く狙われるので、意図的な何かがあるのではと、推測する向きもある。
・ 不審船のほとんどは中国船と思われるが、国籍を明示する旗を掲載していないことがある。
・ 報告される不審船は、公船らしいのだが、海賊船まがいのものも少なくない。
・ 1992( 平成4 ) 年6月、川崎汽船のタンカー「信濃丸」が、制服を着た4人組に襲われ、自動小銃を発砲され、燃料油の供出を要求された。
・ 1993( 平成4 ) 年5月、「セイザン1号」は、自動小銃で銃撃されたのち、「香港から積んだタバコ」を要求された。
・ 東シナ海に、海賊船が出没するのは事実らしいが、公船でありながら、海賊行為や密輸行為を働いているものもあるようだ。
氏は遠慮しながら述べていますが、これが最大の支援国日本に対する、中国式感謝です。ロシアの対応が説明されているので、泣き寝入りする日本と比較して読めば、違いが分かります。
1993( 平成4 ) 年の6月から7月にかけて、ロシアの貨物船と冷凍トロール船が、威嚇発砲され、拿捕される事件が起きました。ロシアは太平洋艦隊の巡洋艦 ( 1万トン ) と、艦隊補給艦など三隻を即座に出動させています。
「ロシアの船舶を海賊行為から守るため」と、モスクワ放送が伝え、その後巡洋艦は南シナ海にまで足を伸ばしたと言います。ソ連邦が崩壊しても、ロシアは中国の武力行使を容認せず、実力で自国の船を守りました。
自国の船を守りませんが、政府と外務省は「日本国憲法」を守ります。ロシアと同じことをせず、自衛隊の艦船が出動すれば中国を刺激すると、大人の対応です。
参考のため、不審船による威嚇、発砲、襲撃、臨検を受けた船舶の名前を転記します。( 平成5年の海上保安本部の資料からです。)
・長崎船籍「まき網運搬船」( 340トン) ・・威嚇発砲
・長崎船籍「漁船」( 297トン) ・・不審船の乗員10名による臨検
・鹿児島船籍「貨物船」( 2,412トン) ・・威嚇発砲
・沖縄船籍「内航タンカー」( 699トン) ・・サイレンを鳴らす、不審船による追尾
・鹿児島船籍「貨物船」( 454トン) ・・サーチライトを照射する、二隻の不審船による追尾
・沖縄船籍「貨物船」( 299トン) ・・サーチライトを照射する、不審船による追尾
・長崎船籍「鮮魚運搬船」( 214トン) ・・サーチライト照射ながら、追尾・銃撃
・長崎船籍「鮮魚運搬船」( 214トン) ・・不審船の乗員8名による臨検
もう一件、氏が参考資料を掲載していますので、追加します。平成5年7月24日号の「週刊時事」の記事です。
「また増え始めた国籍不明船 " 銃撃 " 事件 」・・これが記事の見出しです。
「2月2日に、久米島沖の北西150キロで、鹿児島県の貨物船〈ゆうしょう〉を、」「威嚇発砲した中国船は、中国公安部の船であった。」
「日本からの抗議で、中国側は、」「密輸を取り締まるために行ったもので、日本船とは知らずに発砲した、と弁明。」「遺憾の意を表明した。」
江畑氏が本に書いてくれなければ、私たちはこうした事実を、知らないままです。中国式感謝のやり方を知りましたので、日本の政治家と官僚諸氏には、ロシア政府の爪の垢でも煎じて、贈りたい気持ちになります。