フランスの言う「金のない中国」に、ODA ( 政府開発援助 ) の名目で、永年多額の支援をしてきたのは日本でした。前回も紹介しましたが、外務省は次のように広報しています。
「経済インフラ整備支援等を通じて、中国経済が安定的に発展してきたことは、」「アジア太平洋地域の安定にも貢献し、日中の民間経済関係の進展にも、大きく寄与しました。」
誇らしそうな叙述ですが、江畑氏が「東シナ海と南シナ海」の章で、力をつけてきた中国が、どのように「アジア太平洋地域の安定に貢献」しているのかを、説明しています。
「台湾の軍備近代化に対し、北京の心中は当然穏やかではない。」「かと言って、台湾の軍備近代化を上回る増強を行うには、」「経済状態が許さない。」
やはり話の始まりは、台湾との「軍事バランス」でした。
「1992 ( 平成4 ) 年2月、東西冷戦の終焉を受け、中国は全人大会の常務委員会で、」「〈領海法〉を採択し、承認、公布した。」
「これは東シナ海から南シナ海一帯を、中国の領海と規定するもので、」「中国の主張を認めるなら、二つの海はほとんどが、中国領になってしまう。」「472万平方キロのうち、300万平方キロが中国の領海になるのである。」
ソビエト連邦が崩壊したのは、忘れもしない1991 ( 平成3 ) 年の12月でした。ソビエト連邦共産党の解散を受け、全ての連邦構成国が主権国家として独立しました。世界のマスコミは、「ベルリンの壁崩壊」に続く「大国ソ連の崩壊」に目を奪われ、中国の「領海法」については、ほとんど報道しなかったのではないでしょうか。
なぜ中国が火事場泥棒のように、このような行動に踏み切ったのか、氏が説明します。
「北京が、日本を含む、アジアの周辺諸国との衝突、緊張を覚悟の上で、」「領海法を制定・公布したのは、東シナ海と南シナ海に眠る、」「膨大な地下資源の存在があったと解釈できる。」
150億トン以上の石油と、 300億トンを下らない天然ガスの存在が確認され、金額にすると2兆5千億ドル相当です。金のない中国が、目をつけないはずがありません。中国の狙いはそれだけでなく、繰り返される密輸の取り締まりにもあったと、氏は言います。
「中国と台湾の貿易額は、1985 ( 昭和60 ) 年頃は10億ドルであったのが、」「1992 ( 平成4 ) 年 には、74億ドルにまで伸びている。」
把握できているだけでこの数字なので、密輸の額は、相当なものであろうと語ります。
「関税収入が入らないだけでなく、国内製品が密輸品に圧迫されるのだから、」「密輸の取り締まりはどの国でも、国家の経済基盤を守るため、」「最優先の課題である。」
中国が突然、尖閣諸島や沖縄を自国の領土だと言い出したのは、海底資源が確認されたからだと、何かの報道で見たことがありますが、密輸の取り締まりという事情もあったとは、知りませんでした。
「国連海洋法条約」によりますと、領海と接続水域内では、「無害航行の原則」が適用されます。船籍を示す旗を上げ、海上交通の規則に従っている限りは、沿岸国は航行を妨害してならないことになっています。ただし、沿岸国の財政を乱す密輸に関しては、相応の根拠があれば、捜索・拿捕ができます。
「ねこ庭」を訪問される方々にご報告したいのは、次の説明です。
「もちろん、無害航行することはできるが、何しろ中国の領海であるから、」「中国がその必要を感じたときは、いつでも必要な措置を取れる権利がある。」
「まして他国の軍艦や、沿岸警備隊の船舶が、」「領土権を主張しての警備、補給活動を行うとか、」「漁業の保護を行うなど、中国にとっては、とんでもない話と言うことになる。」
日本政府のODA援助が、果たしてアジア地域の安定に寄与したのか。日本のODAに感謝している中国が、日本の船舶に何をしたのか。
データを示し、氏が丁寧な説明をしています。次回は、日本への中国式感謝について、ご報告します。