4. 朝日新聞と本書の関係 ( 雑学・朝日新聞の歴史 )
5. ガウディの生涯
著書紹介の最後になりました。4. は、大そうなタイトルですが。中身はありません。274ページに、こんな記述がありました。
「この著書を、亡き妻に捧げる」とか、
「本書は、献身的協力をしてくれた出版社の、〇〇氏と〇〇氏に捧げる」
とか、そんな献辞に似ています。
・本書は、1993年朝日新聞社刊朝日文庫として出版された、『ガウディの生涯 - バルセロナに響く音』に、加筆修正したものである。
これで私は、著者の思想的立場を理解しました。朝日新聞は、戦前は「大東亜戦争を賛美し、国民を煽動し、」戦後は「GHQに言われるまま、日本が悪かった、日本だけが間違っていた」と報道する、変節の過去を持つ新聞社です。
そこから出版されていた文庫本が、加筆修正されたものというのなら、著者も反日・左翼の仲間だということです。
・抵抗空しくスペインは、フランコの独裁政治という暗黒時代に突入する。
こういう文章で、フランコ将軍を悪人に仕立てるはずです。朝日新聞が得意とする、人道主義、平和主義的美辞麗句の匂いを、私は感知したのでしょうか。最初から氏の文章に馴染めず、違和感を覚えた訳です。わざわざ書くほどの内容でありませんが、私の朝日嫌いがここまで敏感なことを、息子たちに伝えたかったのです。
「私の偏見は、見習う必要がありません。」
過激な偏見や思い込みは、物事を解決するには障害になることが多いので、息子たちに伝えたいと思いました
〈 4. 朝日新聞と本書の関係 ( 雑学・ 朝日新聞の歴史 ) 〉の項目は、これだけの内容です。しかし 5. には、中身があります。
〈 5. ガウディの生涯 〉
北川氏の著作に戻ります。
・ガウディが、ワーグナーに魅せられた理由は、他にもあった。
・それはワーグナーが題材とするものが、常にゲルマン民族を称える、ドイツの民族伝説であることと、キリスト教や仏教、東洋哲学までも含むものであったことである。
・ガウディは、ワーグナーの祖国ドイツに対する愛と、広い宗教観に、深く感動したのであった。
174ページの文章です。ヒトラーもそうでしたが、ガウディも、ワーグナーの音楽に心酔していました。荘重な旋律に込められた、祖国愛の強さと気高さに魅せられたのです。
ガウディは祖国愛に燃える建築家で、ワーグナーのように、愛と哲学と宗教観の満ちた建築を目指していました。彼はそれを、「総合芸術」と名付け、「サグラダファミリア教会」は、彼の建築物の集大成でした。こんな知識もないまま、私は教会の前に立ち、感動していたのです。
北川氏のおかげで、ガウディが熱烈な愛国者だったことを知りました。彼の場合は、ゲルマン民族のドイツというより、ドイツの中のカタルーニアという土地への愛です。日本の中で、会津の人が会津を愛し、鹿児島人が鹿児島を愛してやまないのと、同じことです。
たくさん教えられたので、感謝していますが、引っかかるものがあり、素直に感謝できないのが残念なところです。
ガウディの祖国愛を、本の至る所で賞賛しているのに、氏は日本を愛する日本人への理解がありません。朝日新聞的と言えば、そうなのでしょうが、矛盾の塊としか見えません。
今一つ引っかかるのは、氏が外尾逸郎氏について一言も触れていない点です。
ここまでガウディに魅了され、「サグラダファミリア聖堂」の素晴らしさについて語るのなら、聖堂の建設に参加している唯一の日本人である外尾氏に、一言も触れない不自然さに疑問が生じます。
建築家同士ですから、外尾氏を知らないはずはありません。
「もしかしたら、ライバル心があったのだろうか。」
だとすれば氏の心は、私の狭い心と大して変わらないことになります。安心して良いのか、悲しむべきことか、最後まで書評の難しい著作でした。とは言え、「温故知新」の読書ですから、教えてもらったことには感謝して、今回で終わりとします。