goo blog サービス終了のお知らせ 

ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

佐藤愛子氏著『九十歳。なにがめでたい』

2017-12-18 15:14:14 | 徒然の記

  佐藤愛子氏著『九十歳。なにがめでたい』( 平成28年刊 小学館 ) を読了。

 文句なしに愉快で、笑わせていただきました。評判の本で、大いに売れているらしく、向かいの家の奥さんから家内が借りてきました。本の袴に読者の声が印刷されていますので、一部を紹介します。

  ・最高に面白かった。特に犬のハナちゃんの話。思わずほろり! (60才女性)

  ・痛快 ! 爽快 ! 私もこのように生きたい。(62才女性)

  ・こんなにゲラゲラ笑ったのは、久しぶりでした。ありがとうございます。(66才男性)

 読者の感想はまだありますが、確かに愉快な本でした。大正12年生まれの氏は、今年94才です。直木賞、菊池寛賞、紫式部賞などを受賞した作家ですが、作品は読んだことがありません。

 世に出ている氏の作品が、どれも楽しく愉快だったのかは、知りません。

 2才年上の私の母と比較しますと、とてつもない元気さで、カクシャクとしていて、敬意を表したくなる明るさです。

  ・私は九十二年の人生を、後先考えずに生きて来たもので、そのため次々と災難を引き寄せて来た。

  ・誰のせいでもない、そんな私の性が引き寄せる災難であるから、どこにも文句のつけようがない。

  ・どう考えても私の我儘や、協調性のなさや、猪突猛進の性のため、降りかかった苦労であることは明らかであるから、恨むなら自分を恨めということとになって、仕方なく諦める。

  ・反省して諦めるのでなく、あっさりすぐに諦めるから、懲りずにまた同じ過ちをくり返す。

  ・人生いかに生きるかなんて、考えたこともない。その場その場で、ただ突進するのみだった。

 こういう調子で、飼い犬の話、ドロボウの話、子供の話、人生相談の話などが語られるます。言いたい放題を聞かされる痛快さに、読者は虜になってしまいます。

 しかし、と、私はここで考えました。

 作品は読んだことがないとしましても、佐藤氏といえば、保守的思考の頑固者という噂があったはずです。このままでいいのかと、すこしだけ性格の曲がっている私は素直に納得しません。

 どうせ猪突猛進するのなら、日本の保守たちが憤っている諸問題を、どうして遠慮なく語らないのかと疑問が湧くのです。平和憲法を守れという、反日左翼のたわ言や、二千年の歴史を崩壊させる女系天皇論の危険性や、「捏造報道」で日本を世界の晒し者にした朝日新聞になぜ言及しないのか、そういう疑問です。

  だがもしも氏が、私のいう話題で本を書いたら、人気の出版物にならなかったでしょうし、出版も出来なかったはずと、すぐに気がつきました。

 エッセーが連載されたのは、「女性セブン」という女性週刊誌で、この本は「株式会社 小学館」の出版物です。

 佐藤氏に習い、遠慮なく言わせて頂けば、「女性セブン」は軽薄な女性向けのゴシップ週刊誌です。記事のメインは、皇室の話題と芸能界の裏話ですから、女系天皇の危険性など、掲載してもらえません。

 「小学館」にしても、「ねこ庭」の嫌悪する「反日・左翼」の書を何冊出版しています。

 別途調べて分かりましたが、「小学館」の出版誌は「女性セブン」だけでなく、他に「週刊ポスト」「週刊少年サンデー」「ビッグコミック」「SAPIO」などの雑誌があります。

 保守系の論調もありますが、正統保守ではありません。出版物は、平和とか愛とか、弱い者の人権とか、左翼の言葉を入れないと売れません。

 日本の保守と言われる言論人たちが、なぜ「本音の議論」ができないのかが、ここからも垣間見えます。日本のマスコミは新聞から雑誌まで、朝日新聞とNHKを筆頭に、こぞって反日・左翼です。「腐れマスコミ」などと言おうものなら、総スカんを喰らい、言論人は収入の道を断たれてしまいます。

 佐藤氏と言えども、長年つき合ってきた「女性セブン」や「小学館」の記者や編集者たちと、トゲトゲしい関係にはなりたくないはずです。

 「いちいち、うるせえな。外野席は黙っていろ」

  と、佐藤氏の声が、どこからとなく聞こえますのでこれ以上は止めます。

 図らずも判明した、日本の保守言論人の置かれた状況でした。

 彼らが保守としての意見を発表する場は、狭く限られているということです。

 特別な出版社や新聞社 ( 産経新聞 ) 以外、一般庶民に馴染みのあるマスコミは、たいてい「反日左翼」派なので、「由緒正しい保守の意見」は、世間に広がらない仕組みになっています。著名な保守人には過大な期待できませんと、そういうことを教えてもらいましたので、氏には感謝せねばなりません。

 今の日本では、私のように川面に浮かぶ枯れ葉のような庶民だけが、本音の意見が言えるのです。ネットの世界でなら、無名の人間も自由に意見が言えます。氏のようなベストセラーにならなくても、「国を愛する」者の願いが、ネットを通じて静かに広がっていきます。

 もしかするとネットの世界では、著名な保守人より、無名な私たちの方が、力が発揮できるのかも知れません。ありがたい世の中になったものです。『九十歳。なにがめでたい』の本に、感謝しました。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする