会場出口で売っていた大原美術館で開かれたこの人の生誕百年の展覧会のカタログを求めた。
なんと言っても今回の展覧会はこの人と大原家とのかかわりを軸にした展示だからだ。
「わだはゴッホになる」、世界に名をはせる棟方志功、しかしその名前を急速に広めたのは毎年のようにデパートで開催された棟方の展覧会であることをそのカタログで知った。
ついでに版画家棟方を装飾の世界に導きいれたのが大原美術館の大原総一郎であったことも知る。
確かに大原邸の子供部屋にかかっていたというミミズクの絵や「宝珠界童女図」「文殊天童子図」などこれがあの棟方かというほどにかわいい!
チラシにも載っている「風神雷神図」などもかわいらしいといったほうが正解だ。
しかしそこは棟方、仕事になると別人になる。
総一郎の書斎にかかっていたという「断」という文字は決然として力強く強靭な意志を感じる。
そして株式会社クラレだ、大原によって創設され、国産合成繊維ビニロンの工業化という大事業に乗り出すにあたって棟方はベートーヴェンの運命とニーチェのツァラトゥストラにヒントを得た膨大なる板画柵をこしらえる。
文字ばっかり入っていて読みにくいことこの上ないがそれこそ棟方の真骨頂。
この展覧会では当時の倉敷レイヨンの連絡月報の扉絵を描いたのが棟方ではないことが東京展の直前にわかるというおまけまでつく、でその「連絡月報」は「参考資料」として展示される。
棟方の決然たる意思と愛らしくくつろいだ作品の二面性が伺える展覧会は大丸東京にて17日まで。
カタログは今回の展覧会むけのは薄べったく、文字も小さく1500円するのを考えると2000円で大原美術館発行のを求めたほうがよいと思う、こちらでも大原家と棟方のかかわりは充分わかる。