二十一歳のときの「パウル・クレエと音楽」で音の中にも色があり、色の中にも音があると書いた人である、絵画から触発された作品も多々ある、きわめて絵画的な音楽を創る人なのだろうー現代音楽は遠ざけて聴いていないが今回の展覧会を観て興味がわいた、音楽家武満徹の回顧展をオペラシティに観に行く、「ぐるっとパス」でただではいるが内容はまことに充実している。
まずは武満が実験工房に属していたことから始まる、ビデオが流れているので見ると「はじめにカオスがあった、神は退屈していた、神は親切であった、原子力を与えた」などとやっている、オートスライドというもので音声とスライドを組み合わせたものだという。
瀧口が武満の娘に与えたという作品も面白いバーント・ドローイングといってろうそくの炎で紙を焦がした作品だ。
ルドンの作品「眼を閉じて」、ルドンはこの題目で何回か作品を創ったようだが武満もルドンに触発されて三つ作品を創ったとか。
マンレイが、デュシャンを撮影した作品も興味深い、五角形の頭を撮った写真だがこれに触発されて「鳥は星型の庭に降りる」が創られたとか。
芸術家同士の丁々発止だ、刺激合いだ、瀧口とミロの合作も面白い。
「坊主三人、面壁三年、空を食って生きる、こじき三人その余りを乞う」ときたもんだ。
ミロといえば武満が移り住んだ長野に美術館ができ、そのオープンにミロの絵画と彫刻の展覧会があり、それを見た武満が「ミロの彫刻のように」を創る、それが彼の絶筆だ。
図形楽譜というのも展示される、ムナーリという人の「読めない本」に指示を書き入れたりする武満、楽譜も絵画になるーそれどころか武満自身絵を描いていたという。
映画音楽も武満の得意とするところ、年間三百本以上の映画を観たという、そのポスターずらり。
会場には武満の音楽をヘッドホンで聴くコーナーあり、武満のアトリエの再現ありと興味ある人にはたまらない。
時代と格闘した芸術家ーオペラシティはいま音楽美術共同プロジェクトで武満一色だ、他館の展覧会チラシも一切置いていない、繰り返すが好きな人にはたまらない展覧会だ。