東京都多摩市の多摩映画祭TAMA CINEMA FORUMが始まった。
今年で22回目となるからよく続いている。各地で映画祭が町興しの一環のように行われた時期があったが、持続するのが難しいのが現状だ。
多摩の映画祭は、一般の映画愛好家が中心となって運営している映画祭で、最優秀作品から、話題作品、新人作家作品、はたまた日本のヌーベルヴァーグ作品などと幅広い内容だ。
期間も11月17日(土)から24日(土)までと長い。上映館は、多摩センターがパルテノン多摩小ホール、聖蹟桜ヶ丘がヴィータホール、永山がベルブホールである。
今年の最優秀作品・受賞作は、「この空の花-長岡花火物語」(監督:大林宣彦)、および「桐島、部活やめるってよ」(監督:吉田大八)。
多摩映画祭のHPは、 http://www.tamaeiga.org/2012/
*
11月18日(日)に、新人映画人のコンペティションである第13回「TAMA NEW WAVEコンペティション」が多摩・聖蹟桜ヶ丘のヴィータホール行われた。
僕は、ここ数年一般審査員として参加している。一般映画館では上映しない、若い作家の映画を観るいい機会でもある。
朝10時過ぎから夜7時過ぎまで、応募120作品から選ばれた選考作品5本の映画を観た。
上映のあと、ゲスト・コメンテーターとして、篠崎誠、鈴木卓爾監督が出席して、出品作品に関して感想を語った。
今年は、質のいい作品が揃ったと感じた。
出品映画の題名と簡単な僕の個人的感想を記しておきたい。(上映順)
○「ひねくれてもポップ」(監督:村松英治)
主人公の女性は、人生の目的もなく、始めたアルバイトも遅刻と早退の繰り返しだ。ふとしたことから、食事する人間ばかりを撮っている変わった写真家と知り合ったことにより、彼女の心に少し波風が立つ。
小品だが、今どきの若者の倦怠と窒息感が伝わってくる。主人公の女性のやるせなさと最後の表情の変化が味を出している。
○「大童貞の大冒険」(監督:二宮健)
何の取り柄もない、女にモテない童貞の学生である主人公が、学内の美女を好きになり、彼女の所属する演劇クラブに入って熱烈純情アタック。ところが、現実は夢と化す。
過剰な演技が目につくところがあるが、劇中劇、現実か空想かといったスケールの大きさを含ませ、学生らしい鋭敏な感覚が全体を覆っている。
○「かしこい狗は、吠えずに笑う」(監督:渡部亮平)
不細工に生まれたと思っている目立たない女子高生の女の子に、同じクラスの可愛い女の子が、ある日から急接近する。全く正反対のような二人だが、瞬く間に親友と呼ぶような仲になるが、待っていたものは驚くべきことだった。
思春期の親友という領域に深く入り込もうとする感性豊かな作品である。サスペンス仕立てを装っているが文学的な嗜好があり、現代の湊かなえの「告白」から、谷崎潤一郎の「少年」まで、SMの香りも漂わせる。
主演の女子高生役の二人の拮抗が、映画に厚みを持たせている。
○「月の下まで」(監督:奥村盛人)
高知県のカツオ漁師である主人公は、腕はいいが知的障害を持っている息子を抱えてトラブルが絶えず、経済的にも逼迫している。純真な天使のような息子と、正面から向き合って生きていこうとするのだが。
作品としては新人離れした完成度の高い内容、構成となっている。その完成度の高さゆえに、贅沢にも不満が残る。主人公の漁師役が、映画全体を引き締める演技をしている。
○「魅力の人間」(監督:二ノ宮隆太郎)
工場で働く若者たちのなかにも友情やいじめがあるように、ふとした諍いは起こるものである。こうした働く若者の日常の出来事を描いている、かのように映画は進展していく。しかし、物語はそこにとどまらない。静かで孤独な男の、以前知り合っていた女とのふとした情事、女の家から出てきた先で出会った先輩の同情心に対する、男の暴力。この、ある夜の落とし穴のような出来事から、次の日、奇妙な仕返しの儀式が行われるのだった。
監督のプレーイング・マネージャー、つまり演出兼主演ともいえる準主演である。平凡と見せかけた巧妙なトリックが仕掛けてある、心に棘を突き刺したような傷を残す、奇妙な作品である。
審査の結果、第13回「TAMA NEW WAVEコンペティション」は、以下の映画および役者が受賞した。
◎大賞:「かしこい狗は、吠えずに笑う」(監督:渡部亮平)
◎特別賞:「魅力の人間」(監督:二ノ宮隆太郎)
◎ベスト男優賞:那波隆史 「月の下まで」
◎ベスト女優賞:mimp*β(ミンピ) 「かしこい狗は、吠えずに笑う」
○G・C男優賞:アベラヒデノブ 「大童貞の大冒険」
○G・C女優賞:北村美岬 「ひねくれてもポップ」
今年で22回目となるからよく続いている。各地で映画祭が町興しの一環のように行われた時期があったが、持続するのが難しいのが現状だ。
多摩の映画祭は、一般の映画愛好家が中心となって運営している映画祭で、最優秀作品から、話題作品、新人作家作品、はたまた日本のヌーベルヴァーグ作品などと幅広い内容だ。
期間も11月17日(土)から24日(土)までと長い。上映館は、多摩センターがパルテノン多摩小ホール、聖蹟桜ヶ丘がヴィータホール、永山がベルブホールである。
今年の最優秀作品・受賞作は、「この空の花-長岡花火物語」(監督:大林宣彦)、および「桐島、部活やめるってよ」(監督:吉田大八)。
多摩映画祭のHPは、 http://www.tamaeiga.org/2012/
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11月18日(日)に、新人映画人のコンペティションである第13回「TAMA NEW WAVEコンペティション」が多摩・聖蹟桜ヶ丘のヴィータホール行われた。
僕は、ここ数年一般審査員として参加している。一般映画館では上映しない、若い作家の映画を観るいい機会でもある。
朝10時過ぎから夜7時過ぎまで、応募120作品から選ばれた選考作品5本の映画を観た。
上映のあと、ゲスト・コメンテーターとして、篠崎誠、鈴木卓爾監督が出席して、出品作品に関して感想を語った。
今年は、質のいい作品が揃ったと感じた。
出品映画の題名と簡単な僕の個人的感想を記しておきたい。(上映順)
○「ひねくれてもポップ」(監督:村松英治)
主人公の女性は、人生の目的もなく、始めたアルバイトも遅刻と早退の繰り返しだ。ふとしたことから、食事する人間ばかりを撮っている変わった写真家と知り合ったことにより、彼女の心に少し波風が立つ。
小品だが、今どきの若者の倦怠と窒息感が伝わってくる。主人公の女性のやるせなさと最後の表情の変化が味を出している。
○「大童貞の大冒険」(監督:二宮健)
何の取り柄もない、女にモテない童貞の学生である主人公が、学内の美女を好きになり、彼女の所属する演劇クラブに入って熱烈純情アタック。ところが、現実は夢と化す。
過剰な演技が目につくところがあるが、劇中劇、現実か空想かといったスケールの大きさを含ませ、学生らしい鋭敏な感覚が全体を覆っている。
○「かしこい狗は、吠えずに笑う」(監督:渡部亮平)
不細工に生まれたと思っている目立たない女子高生の女の子に、同じクラスの可愛い女の子が、ある日から急接近する。全く正反対のような二人だが、瞬く間に親友と呼ぶような仲になるが、待っていたものは驚くべきことだった。
思春期の親友という領域に深く入り込もうとする感性豊かな作品である。サスペンス仕立てを装っているが文学的な嗜好があり、現代の湊かなえの「告白」から、谷崎潤一郎の「少年」まで、SMの香りも漂わせる。
主演の女子高生役の二人の拮抗が、映画に厚みを持たせている。
○「月の下まで」(監督:奥村盛人)
高知県のカツオ漁師である主人公は、腕はいいが知的障害を持っている息子を抱えてトラブルが絶えず、経済的にも逼迫している。純真な天使のような息子と、正面から向き合って生きていこうとするのだが。
作品としては新人離れした完成度の高い内容、構成となっている。その完成度の高さゆえに、贅沢にも不満が残る。主人公の漁師役が、映画全体を引き締める演技をしている。
○「魅力の人間」(監督:二ノ宮隆太郎)
工場で働く若者たちのなかにも友情やいじめがあるように、ふとした諍いは起こるものである。こうした働く若者の日常の出来事を描いている、かのように映画は進展していく。しかし、物語はそこにとどまらない。静かで孤独な男の、以前知り合っていた女とのふとした情事、女の家から出てきた先で出会った先輩の同情心に対する、男の暴力。この、ある夜の落とし穴のような出来事から、次の日、奇妙な仕返しの儀式が行われるのだった。
監督のプレーイング・マネージャー、つまり演出兼主演ともいえる準主演である。平凡と見せかけた巧妙なトリックが仕掛けてある、心に棘を突き刺したような傷を残す、奇妙な作品である。
審査の結果、第13回「TAMA NEW WAVEコンペティション」は、以下の映画および役者が受賞した。
◎大賞:「かしこい狗は、吠えずに笑う」(監督:渡部亮平)
◎特別賞:「魅力の人間」(監督:二ノ宮隆太郎)
◎ベスト男優賞:那波隆史 「月の下まで」
◎ベスト女優賞:mimp*β(ミンピ) 「かしこい狗は、吠えずに笑う」
○G・C男優賞:アベラヒデノブ 「大童貞の大冒険」
○G・C女優賞:北村美岬 「ひねくれてもポップ」
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