かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

日本で一番暑い町、四万十市のこと

2013-08-17 01:14:26 | 気まぐれな日々
 日本列島は暑い日が続き、連日ニュースは各地の猛暑関連の報道で始まるのが常道となっている。
 去る8月12日、高知県四万十市で41.0度Cという、国内最高気温を記録した。そのとき、観測所の近くの江川崎駅近くに立てられた、「暑さ日本一」の看板を、メディアは報道した。
 それまでの記録は、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市の40.9度だった。
 四万十市の江川崎駅と聞いて、僕は、去年四国を旅した時に通った駅だとすぐに思い出した。この駅は、予土線の窪川から宇和島に到る途中にある小さな駅だ。そのとき、僕は高知から愛媛県の宇和島に行く途中で、その江川崎駅で列車が長らく留まったので、印象に残っているのである。(写真)
 四万十市は、その名の通り、市の真ん中を四万十川が通っていて、中村市と西土佐村が合併してできた市である。
 煩わしいことに四万十市の北に、やはり蛇行して流れる四万十川を持つ四万十町がある。この四万十町は、窪川町、大正町、十和村が合併してできた町である。
 この「四万十」の名を持つ二つの市と町は、違う地方自治体である。
 この四万十市の江川崎駅のことを、僕は去年2012年9月24日のブログ「再び四国から九州へ③四万十川に沿って宇和島へ」に、次のように書いている。

 *

 高知発13時50分発の中村行き、土讃線「あしずり5号」で、高知をあとにした。列車は途中の窪川までがJRで、その先の中村、終着駅の宿毛までは土佐くろしお鉄道になっている。
 中村までは行かず、窪川で予土線に乗り換えて宇和島に行くことにした。
 窪川に14時53分に着き、15時01分発の予土線、宇和島行きに乗った。予土線は、すべて各駅停車である。
 列車は、四万十川に沿って走った。片側に山が、もう一方側にゆったりとした川が現れたり消えたりして、列車は山間を走った。
 「家地川」の駅は、ホームのすぐ目の前にトンネルがある。宇和島方面から来ると、「トンネルを過ぎると、そこは駅のホームだった」となる。
 四万十川は、ゆったりと緩やかに流れている。心が落ち着く川だ。川渕から岬のように出道を作ったところがあり、そこに車が止まっていた。
 列車の窓から山と川を眺めていると、四万十川を舞台に少年の思いを描いた小説「四万十川 あつよしの夏」を思い出した。
 列車が「土佐大正」駅を過ぎたと思ったら、「土佐昭和」駅に着いた。次は、「土佐平成」とはいかない。

 「江川崎」に止まったとき、ホームの駅の表示板に、前の駅が「はげ」と平仮名で記されていた。う~ん、どんな漢字をあてるのだろうと気になった。やはり「禿」の字ではなく、予想できなかった「半家」であった。
 江川崎の駅には16時ちょうどに着いたのだが、出発が16時37分と車掌が言って、運転手も電車を降りて行った。駅の周りを見回したが、閑散としていて大きな街ではない。37分の待ちとはあまりにも長いので、僕も電車を降りて駅の改札口を出ると、そこに売店があった。数人の高校生がたむろして、テレビゲームをやっている。
 小さい駅なのに売店があるのは、待ち時間に時間を持て余して何か食べたり、物色する人がいるためだなと思って、僕もアイスクリームを買った。そして、売店のおばさんに、「どうして、こんなに待ち時間が長いの?」と訊いてみた。
 すると、「トロッコ列車の時間に合わせたから、この時間になったのよ」と、思いもよらない返事がかえってきた。
 「えっ、トロッコ列車が走っているの?」と訊いてみると、「夏の7月と8月に走っていたけど、もう終わったわね」と、おばさんは言った。
 さらに駅の窓口の人に訊いてみると、トロッコ列車は季節によって1日1往復、部分運行していて、トロッコ列車を連結している電車は、トロッコを引かないときの普通の電車より少しスローになる。であるから、下りの窪川から宇和島行きでは、ここ江川崎で時間調整しているとのこと。
 しかし、トロッコ列車を運転していないときは、トロッコ列車の時間に合わせなくて、普通の速さの時刻ダイヤにすればいいのでは、という疑問が湧く。その疑問をぶつけると、窓口の人は、う~ん、と口を詰まらせ、それだけでなく、上り線の待ち合わせもあるので…と付け加えた。
 トロッコ列車は、黒部峡谷に行ったとき、宇奈月から乗ったことがある。しかし、ここ予土線で走っているとは知らなかった。

 *

 今年は東京も、最高気温は連日30度台の半ばを記録しているが、僕の個人的な最も暑い体験はいつだろうと思い起した。
 おそらく、ちゃんとした記録は不明だが、1994年5月のインドの旅の途中であろう。
 その日、インドのデカン高原の中央部にある古い遺跡アジャンタにいた。朝からじっとしていても汗が出て、日中は暑さでばてていた。どうしたのだろう、とそのときは思った。
 後日、日本に帰って見た旅行時の朝日新聞に、「インドとパキスタン、熱波で400人以上が死亡」という記事が出ていた。それによると、「インド国内の最高気温はセ氏50度で昨年と変わらない。ただニューデリーの最高気温が50年ぶりに46度台になるなど、今年は45度以上の日が例年より多く、栄養状態のよくない貧困層や病人が次々に犠牲になっている。」と報道されていた。
 おそらく、僕がいたアジャンタも40度以上あったに違いない。確かに、インドは暑い。それにしても、インドの最高気温は例年50度もあるのか。これでは、労働意欲も減退するというものだ。

 日本の最高気温が41.0度となると、知りたいのは世界の最高気温である。
 イラクのバスラは暑さで知られるが、世界の最高気温は、気象庁によると、米カリフォルニアの砂漠地帯、デスバレー国立公園で1913年に記録した56.7度だという。
 想像できないが、おそらく立っていられないだろう。

 細長い日本列島。今回、日本で最も暑い町になった高知県の四万十市だが、思うに、最も暑い町に、熱帯に近い南の沖縄や小笠原がランクインしていないのが不思議だ。
 新聞に記載されている、来たる1週間の日本各地の最高・最低予測気温を見比べても、この猛暑の続く中でも、沖縄の那覇市は東京や福岡より低いのだ。年間の平均気温は高くても猛暑はさほどなく、凌ぎやすいということか。

 ともあれ、四万十市の江川崎よ、日本一おめでとうと言うのも変だが、記録として名を残すことになった。
 今、この駅を通るトロッコ列車は走っているのだろうか。

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