
怖くなって傍の駐車場の中に駆け込み、メッシュフェンスを介してこの犬と対峙した。「ダイジョウブデス、カミツイタリシマセン」と言いながら、外国人は犬を抱きしめてにこやかな顔をしている。
この男、そこそこ日本語が話せる。近くにある瀟洒な日本家屋を、外国人が数年前に買って住んでいることは知っていたが、この男であることを知った。奥さんは日本人、男の子がいるという。日本語交じりと英語交じりの会話が始まった。
「この犬の種類は何ですか?」「ローデシアン・リッジバックといい、南アフリカ原産です。ライオン狩りに使われる犬で、背中の毛が直線状に頭の方に向かって生え、リッジ(隆起線)があるのが特徴だ」といいながら、背中の毛を逆なでして見せた。
それで分かった。体躯は大きく目も精悍で、体つきは好戦的に見える。こんな犬をペットとして買うのは難しそうだが、見かけよりは優しい犬のようである。「ワタシノナマエハ レング です。L・e・n・gト カキマス。アナタノナマエハ ナンデスカ」といわれて、すぐ目の前にある我が家を指さしながら、きちんと答えておいた。
米軍基地で英語の先生をしていると自己紹介をした。「こんどゆっくり、コーヒーでも飲みながらお話しましょう」と言っておいたが、果たしてLengさん、ほんとに来てくれるかどうか。やってきたら、片言の英語と日本語と両手を使ったジェスチャーで、日米交流が果たせるか。
時遊塾の定款に、「英会話」「国際交流」という項を追加する日は近いようである。「犬も歩けば