すっかり涼しくなった。夕方の散歩に出る時間も早くなり、今日は5時きっかりに西に向かって家を出た。自転車で家路を急ぐ女学生に何人も出会う。どの子も、自転車をこぐ速度は私の倍くらい早い。若い力の素晴らしさに圧倒される。
昔からの民家が並ぶ小道で、道を挟んだ所に菜園がある。顔見知りのお婆ちゃんが同居している娘さんと畑仕事をしているところであった。「相変わらずお元気ですね」と言おうと思った時「お元気そうですねえ」と先に声をかけられた。私が子どものころから知っているお婆ちゃんである。娘さんといっても50歳くらいであるが、笑いながら「喧嘩しながら仕事をしています」とこぼす。
「喧嘩するほど仲が良いと言いますからね」と言葉を返した。畑を見ると、きれいに畝が作ってある。その畝の真ん中に、竹箒に束ねてあるような細い竹の小枝が数本ずつ並べてある。一体何のために置いてあるのか聞いてみると「スズメ対策」だという。
この時季、何かの種をまいた後、スズメがその上で砂浴びをして種を掘り出してしまう。スズメが砂遊び出来ないように、邪魔なものを置いておくということであった。現代であれば、ネットを張ったりプラスチックフィルムで囲ったりする手もあろうが、昔ながらのこんなやり方があるのを見て心なごむ思いがした。
「この畑では竹の小枝を並べているが、モミを撒いたりすることもあるよ」と教えてくれる。こんなことは遠い昔からの農家の知恵であろうが、何でもない細い竹の小枝が野菜作りに役立っていた。