写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

相乗効果

2015年09月11日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画

 9月10日、正午すぎ、豪雨で鬼怒川が決壊し、広範囲に浸水した。午後の情報番組をテレビで見ていて、水の勢いで壊れかけた家の屋根の上にペットの犬を抱いて逃げ出し、自衛隊の救助のヘリに助け出される様子をもどかしく見ながら、ことの重大さをひしと感じた。

 台風18号から変わった温帯性低気圧と東の海上を北上する台風17号の影響で、記録的な大雨が降り、鬼怒川の堤防が決壊した。未曾有の河川水害である。9月10日といえば、昔はよく二百二十日といって、立春を起算日として220日目の日に当たり、農家にとっては二百十日と共に天候が悪くなる三大厄日とされていた。統計的に、台風が二百十日から9月下旬にかけて襲来することが多く、
二百十日よりも二百二十日の方を警戒する必要があるとされていた。

 ちょうどその日に当たる9月10日に、鬼怒川は氾濫し決壊にまで至った。翌日の毎日新聞では、1面に大きな写真と共にこのことを伝えている。最下段の「余録」というコラムにも、この大洪水のことが書いてある。その文章の中に、豪雨となった理由が書いてあるが、ちょっと違和感を感じる表現があった。

 「台風から変わった日本海の低気圧と、東方海上を北上する台風17号との相乗効果により長大な降水帯が停滞していたのだ」と書いている。「ちょっと待ってちょっと待って、お兄さん」とは言わないが、この表現ちょっとおかしいと思って辞書で調べてみた。

 「相乗効果とは、ある要素が他の要素と合わさることによって、単体で得られる以上の結果を上げること」とあり、使い方としては「相乗効果により、全体の最適化、効率化が発揮されるなど、主によい意味として使われる為、事故や災害では使われることはない」と書いてある。

 相乗効果により、ある悪い状況が、さらに悪くなったような時に、こんな言葉は使わない。「相乗作用」とでもいう方がよいのではなかろうか。被災者の立場からいえば、こんなひどい自然のダブルパンチを「相乗効果」などと言って欲しくはなかろう。地震、台風、噴火、竜巻、津波などの災害列島に生きる心構えをもう一度確認しておきたい。