写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

トリオ・ステレオ

2007年05月26日 | 生活・ニュース
 午前中は、昨夕からの梅雨のようなうっとうしい雨が降っていた。廊下を見ると、どこから入ってきたのかナメクジが1匹這っている。

 梅雨はもうそこまで来ているように感じた。こんな日は気の効いた音楽でも聴きたくなる。ふと昔よく聴いたレコードのことを思い出した。

 2階の南向きの部屋には、セパレートのステレオがオブジェのように置いてあり、ここ20年間ほとんど使ったことはない。

 CDやラジオを聴く時には、別な部屋にミニコンポがあり、もっぱらこれを愛用しているからだ。

 旧友を尋ねるような気持ちでそのステレオの部屋に入った。TRIO ST-8000と表示された横幅1.9m、高さ67cm、奥行き44cmの大きさのものがある。

 昭和42年ころ、十数万円で買ったことを覚えているが、月給の数か月分にも相当した。ともかくも高い買い物であった。

 そのスイッチを入れてみた。ラジオはちゃんと聞こえる。FMは、丸めていた専用のアンテナを伸ばしてやると、ステレオ放送と同調して音楽が聞こえてきた。

 プレーヤーはゴムのベルトドライブ方式だ。数年前にこのベルトが切れたため、接着剤を使って手作りしたものを取り付けているが、長さが適切でないため回転数が少し遅い。

 昔買ったレコードをかけてみた。よく聴いていたウェルナー・ミューラー管弦楽団のコンチネンタル・タンゴが心地よく流れてきた。レコード盤に傷があり、時々針が飛ぶが、それはそれでレコードらしくていい。

 今度広島に行った時に、正規のゴムベルトを買い求め、正調のコンチネンタルタンゴを、黄色のニー・チェアーに座り、コーヒー片手に聴いてみたい。

 年代物には年代物のよさがある。年では負けない私も、このステレオに負けていられない。隠していた年代物のよさを、じわり出してみるか。
 (写真は、40年前に買った「トリオのステレオ」)