写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

お見事!

2007年05月13日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 毎月10日が近づくと毎日新聞を開くのが楽しみとなる。前月掲載された読者投稿エッセイ「はがき随筆」の内、入選3篇・佳作7篇が発表されるからである。

 昨日(11日)の朝、今日あたりには発表されるのではないかと思いながら、いつものようにそのページを開いた。優秀作品を読むことは、自分の勉強にもなる。

 あった。4段抜きの大きな文字で、入選した3人の名前が書いてある。入選1席に何と我ら「岩国エッセイサロン」の副代表であるHさんの作品「名前の行方」が選ばれていた。

 30年も前から投稿活動をしている女性で、七十数歳の現在でもなお活発に投稿を続けている、大変活力ある人である。

 朝7時半、少し早いとは思いながら早速お祝いの電話を入れてみた。すでに新聞を見て、このことは知っていた。

 山口県内の投稿数は毎月200篇前後だという。その中の最優秀作品に選ばれたのだからこれはすごい。心からお祝いの言葉を贈った。

 私も日々努力を重ねて、Hさんに少しでも近づきたいと思っている。以下に、Hさんの作品を掲載いたします。軽妙なエッセイ、お読みください。
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 「名前の行方」

 昭和32年11月5日に結婚し名字は変わったが、名前は変えていないのに、その日から「オイ」に変わった。以来50年。「オイ」と呼ばれ「ハイ」と返事をし、オイ、ハイの生活が始まった。

 せっかく親が吟味してつけてくれた名前はどこへやら消えてしまった。照れもあり、亭主の威厳も示したいのか、悪気ではない事だけはわかっているのだが。子どもからはお母さん、孫たちはおばあちゃんと呼ばれ、遂に名前の出番はなくなった。

 女は三界に家なしと言うが、名前までなくなるとは思いもしなかった。まあせめてお位牌にでも明記してもらうとしようか。
 (2007.04.07毎日新聞「はがき随筆」掲載・入選)
 (写真は、入選発表の「毎日新聞」)