写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ミラクルフルーツ

2007年05月18日 | 食事・食べ物・飲み物
 バラと生活をしている友人宅に、用事があって立ち寄った。ガーデンチェアーに座り、庭いっぱいの色とりどりのバラを見ながらコーヒーをよばれた。

 短い滞在で帰ろうとした時、部屋の中から透明なプラスチックケースに入った1個の大きなレモンを持ってきた。

 「これを試してみてください」と言って渡された。レモンと一緒に2個の小さな赤い実と1枚の紙切れが入っていた。

 「ミラクル・レモンの食べ方  ミラクルフルーツの赤い実を口に含み、舌の上で2~3分なめていると黒い種だけが残ります。その種を口から出してレモンを食べると、甘くておいしいレモンに変わります」と書いてある。
 
 ミラクルフルーツ? 初めて聞く名前であった。帰ってすぐに調べてみた。

「ミラクルフルーツとは、西アフリカ原産の熱帯地域に育つ低木で小さな赤い実がなる。果肉には少し甘みがあり、その実を食べてレモンを食べると、レモンが劇的に甘く感じるようになるなど、酸味を甘みに変える性質を持っている。」と書いてある。

 早速試してみることにした。赤いミラクルフルーツを、妻と一粒ずつを口に入れた。舌の上で転がしていると、表面の赤い皮がくるりとむけた。やわらかい実を舌の上全体に満遍なく移動させた。

 2分が経った頃、実の割には少し大きめの種だけとなったので、口から出した。やおら、縦割りしておいたレモンを恐る恐るかじってみた。

 何と言うことか、あの酸っぱいレモンが、甘くおいしい果物に大変身をしている。甘いといっても、少し複雑な甘さではある。

 「これは果肉中のミラクリンと言う糖たんぱく質によるもので、ミラクリンと酸味が一緒になると、味覚の甘み受容部を刺激し、脳に甘味信号を送るためと言う。この作用は約2時間続く。」とも書いてあった。

 そうしてみると、ミラクルフルーツをなめたことにより、脳がミラクリンにだまされてしまったということになる。

 舌が詐欺にあったような面白い体験をしたが、強い酸味がうそのように甘く変わるというこのミラクルフルーツ、名前通りのミラクルな出来事であった。
  (写真は、友からもらった「ミラクルフルーツ」)