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一昨日の夜の深い時間、普段はビールを注文する若きゲストがやって来て、いつも通りエーデルピルスを2杯飲んだ後、しばらく間を置いておもむろにシングル・モルトを飲んでみたいとオーダーしてくれた。
そして実はこれまでそんなにシングル・モルトを飲む機会がなく、その美味しさが未だにわからないという彼女に、まずは入門編とも言えるスペイサイドの「マッカラン」を勧め、出来るならばストレートでゆっくり味わってほしいとお願いし、そのあとこれまたアイラの中でもひと際バランスが良く“アイラの女王”とも形容される「ボウモア」を飲んでもらったところ、かなり気に入ってくれたようだったので、さらに今度はかなり癖のある、だけど個人的にはとりわけ気に入っている「ラガーブーリン」へと杯を重ねていくこととなった。
そして途中、こういうときのためにひそかに?用意してあるスコットランドのミネラルウォーター「 Deeside 」をシングル・モルトと同量加える、いわゆる 『 トワイスアップ( twice up )』 で味の変わり具合を楽しんでもらったりし、夜は徐々に更けていったのでありました。
そしてそんなことがあった翌日である昨日、そう言えばと思い出し手にしたのが、ご近所のフレンチレストランのオーナーシェフが先日貸してくれた村上春樹のこの本だった。
シングルモルトウィスキーの産地であると同時に聖地でもあるアイラ島とアイルランドを巡る言わば「聖地巡礼」とでも言うべき旅行記エッセイとなっているこの本(それにしても氏のネーミングセンスはやはり天才的だなあ)、文体そのものは相変わらず翻訳小説を読むような村上春樹ワールドだけど、
「うまいアイラのシングル・モルトがそこにあるのに、どうしてわざわざブレンディッド・ウィスキーなんてものを飲まなくちゃいけない? それは天使が空から降りてきて美しい音楽を奏でようとしているときに、テレビの再放送番組をつけるようなものじゃないか」
といった具合に地元の人から『託宣』を受けたり
にぎやかなところで飲むよりは、馴染んだ部屋で、馴染んだグラスで、一人穏やかに飲みたい酒だ。そのほうが味がずっと生きてくる。シューベルトの長い室内楽を聴くときのように、目を閉じて息を長くとって味わったほうが、味の底が一枚も二枚も深くなる。
とボウモアを評したりしながら、ベースに流れるシングル・モルト、そしてアイルランドの人たちに対する畏敬の念が読んでいて、なんとも心地好い。
加えて、例えば
レストランで生牡蠣の皿といっしょにダブルのシングル・モルトを注文し、殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。う~ん。いや、これがたまらなくうまい。牡蠣の潮くささと、アイラ・ウィスキーのあの個性的な、海霧のような煙っぽさが、口の中で和合するのだ。どちらが寄るでもなく、どちらが受けるでもなく、そう、まるで伝説のトリスタンとイズルデのように。それから僕は、殻の中に残った汁とウィスキーの混じったものを、ぐいと飲む。それを儀式のように、六回繰り返す。至福である。
人生とはかくも単純なことで、かくも美しく輝くものなのだ。
といった文章に出会ってしまうと、もういけない。
すぐにスコットランドへ行くわけにはいかないけれど、まずは次の休みあたりに是非とも食したいと思ってしまいますよね、岩城シェフ!
そしてそして、あとがきにある
人の心の中にしか残らないもの、だからこそ何よりも貴重なものを、旅は僕らに与えてくれる。そのときには気づかなくても、あとでそれと知ることとなるものを。もしそうでなかったら、いったい誰が旅行なんかするだろう?
との言葉に大きくうなづき、今宵もまたシングル・モルトのボトルに手が伸びることとなりそうなのであります。
ちなみにずっとシングル・モルトを飲み続けてそろそろといったタイミングで、さりげなく〆に自らギネスをオーダーした彼女もまたすっかり男前で、おじちゃんはすっかり驚かさせられちまったよー。ナハハ
今日の1曲 “ One ” : U2
One life
But we're not the same
We get to
Carry each other
Carry each other
One...One
”一度だけの人生”
でも、僕らはお互い
全く同じってわけじゃないんだよ
お互いを支えあって行かなければ
支えあって…
ひとつへ… ひとつへと…
今週末に、おかげさまで15周年「呑んで、喰って、騒いで、義援金を!」を行う、実はこの本を貸してくれたロベール・デュマの岩城シェフからのオススメの一曲。
ご紹介するしかない心に響く名曲であります。
一昨日の夜の深い時間、普段はビールを注文する若きゲストがやって来て、いつも通りエーデルピルスを2杯飲んだ後、しばらく間を置いておもむろにシングル・モルトを飲んでみたいとオーダーしてくれた。
そして実はこれまでそんなにシングル・モルトを飲む機会がなく、その美味しさが未だにわからないという彼女に、まずは入門編とも言えるスペイサイドの「マッカラン」を勧め、出来るならばストレートでゆっくり味わってほしいとお願いし、そのあとこれまたアイラの中でもひと際バランスが良く“アイラの女王”とも形容される「ボウモア」を飲んでもらったところ、かなり気に入ってくれたようだったので、さらに今度はかなり癖のある、だけど個人的にはとりわけ気に入っている「ラガーブーリン」へと杯を重ねていくこととなった。
そして途中、こういうときのためにひそかに?用意してあるスコットランドのミネラルウォーター「 Deeside 」をシングル・モルトと同量加える、いわゆる 『 トワイスアップ( twice up )』 で味の変わり具合を楽しんでもらったりし、夜は徐々に更けていったのでありました。
そしてそんなことがあった翌日である昨日、そう言えばと思い出し手にしたのが、ご近所のフレンチレストランのオーナーシェフが先日貸してくれた村上春樹のこの本だった。
シングルモルトウィスキーの産地であると同時に聖地でもあるアイラ島とアイルランドを巡る言わば「聖地巡礼」とでも言うべき旅行記エッセイとなっているこの本(それにしても氏のネーミングセンスはやはり天才的だなあ)、文体そのものは相変わらず翻訳小説を読むような村上春樹ワールドだけど、
「うまいアイラのシングル・モルトがそこにあるのに、どうしてわざわざブレンディッド・ウィスキーなんてものを飲まなくちゃいけない? それは天使が空から降りてきて美しい音楽を奏でようとしているときに、テレビの再放送番組をつけるようなものじゃないか」
といった具合に地元の人から『託宣』を受けたり
にぎやかなところで飲むよりは、馴染んだ部屋で、馴染んだグラスで、一人穏やかに飲みたい酒だ。そのほうが味がずっと生きてくる。シューベルトの長い室内楽を聴くときのように、目を閉じて息を長くとって味わったほうが、味の底が一枚も二枚も深くなる。
とボウモアを評したりしながら、ベースに流れるシングル・モルト、そしてアイルランドの人たちに対する畏敬の念が読んでいて、なんとも心地好い。
加えて、例えば
レストランで生牡蠣の皿といっしょにダブルのシングル・モルトを注文し、殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。う~ん。いや、これがたまらなくうまい。牡蠣の潮くささと、アイラ・ウィスキーのあの個性的な、海霧のような煙っぽさが、口の中で和合するのだ。どちらが寄るでもなく、どちらが受けるでもなく、そう、まるで伝説のトリスタンとイズルデのように。それから僕は、殻の中に残った汁とウィスキーの混じったものを、ぐいと飲む。それを儀式のように、六回繰り返す。至福である。
人生とはかくも単純なことで、かくも美しく輝くものなのだ。
といった文章に出会ってしまうと、もういけない。
すぐにスコットランドへ行くわけにはいかないけれど、まずは次の休みあたりに是非とも食したいと思ってしまいますよね、岩城シェフ!
そしてそして、あとがきにある
人の心の中にしか残らないもの、だからこそ何よりも貴重なものを、旅は僕らに与えてくれる。そのときには気づかなくても、あとでそれと知ることとなるものを。もしそうでなかったら、いったい誰が旅行なんかするだろう?
との言葉に大きくうなづき、今宵もまたシングル・モルトのボトルに手が伸びることとなりそうなのであります。
ちなみにずっとシングル・モルトを飲み続けてそろそろといったタイミングで、さりげなく〆に自らギネスをオーダーした彼女もまたすっかり男前で、おじちゃんはすっかり驚かさせられちまったよー。ナハハ
今日の1曲 “ One ” : U2
One life
But we're not the same
We get to
Carry each other
Carry each other
One...One
”一度だけの人生”
でも、僕らはお互い
全く同じってわけじゃないんだよ
お互いを支えあって行かなければ
支えあって…
ひとつへ… ひとつへと…
今週末に、おかげさまで15周年「呑んで、喰って、騒いで、義援金を!」を行う、実はこの本を貸してくれたロベール・デュマの岩城シェフからのオススメの一曲。
ご紹介するしかない心に響く名曲であります。
でも、個人的にはすっかりモルトと縁遠くなってしまいました…。
まぁ、最近よく顔を出す店が水割り中心ということもあるのですがw…。
あの芳醇というか、くっさ~いというか、アイラの個性的な味わいが懐かしく感じられる今日この頃です…。
なんとソソラレル文章…!
その本も前から読みたかったのです。
生牡蠣とシングルモルトかぁ、美味しそう…
ということで、生牡蠣はないけれど、機会があればまた
そのくっさ~い味わいを楽しみに来ておくれ。
また貸しになってしまうけれど、よろしければ貸すよん。
そしてこの夢の食べ合わせ、今度のパーティで、出てきてくれたら
さぞや楽しいだろうね。ウヒッ
この本は、大好きです。
思わず、コメントしてしまっています。
大学時代を金沢で過ごしました。(おそらく息子さんと同じ大学だと思います)
今は名古屋で博士号をとりながら、大学講師をしております。
金沢には友達も多く、2か月に1回は訪れています。
金沢、大好きです。
ウイスキーと、言葉、という二つの単語が、
すごく会う気がします。
ブログ、拝読させていただいています。
日々の選曲も、楽しみにしております!
言葉、ウィスキー、確かに響きあう組み合わせですよね。
この本を読んでからシングルモルトを飲む機会が多くなってしまいました。
拝読という言葉には恐縮せざるを得ないブログではありますが、
選曲を楽しんで頂いている人がここにもいらっしゃると知って
何とも嬉しかったりしたのでした。
ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。