俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「17歳の肖像」 AN EDUCATION

2010年05月01日 11時55分36秒 | 時系列でご覧ください

舞台はビートルズもまだデビューしていない1961年、ロンドン郊外の町トゥイッケナム。
聡明で美貌にも恵まれ、保守的な両親の元オックスフォード大を目指す16歳の少女がふとしたことから35歳の男と知り合いやがて恋に落ちることで知ることとなる「大人」の世界。
普段の学校生活では味わえない刺激的でぞくぞくする異体験、そしてショッキングな失望も経験しながらやがて大人の階段を上る姿を瑞々しく描いた佳作。

冒頭近く雨降る中、30代のデイヴィッドがあの当時の名車『ブリストル』の中から、チェロを抱えながら雨に濡れて一人歩く主人公ジェニーに声をかけるシーンがなかなか秀逸。

決して軽すぎず、何ともイギリス的なウイットに富んだ誘い方、そしてクルマのチョイスや音楽的知識などを含めた設定が、その後の二人の物語の端緒としてとても納得もので、すっかり感心させられたのだ。



それにしてもこの映画を見ていてふと思い出したのが我が永遠のアイコン加賀まりこ姉さん。
彼女の年齢を考えれば年代的にも重なるし、ちょうどそのころ仕事を一切やめて半年間パリに行った(ちなみにあの頃の世界の文化の中心は間違いなくパリだった、はず)逸話もあることだし、ジェニーの持つ男心くすぐる小生意気さも多分同様だった気がして、とにかく主人公と姉さんが大いに重なったのであります。



まあそれはともかく、「ある教育」というあまりに殺風景な原題にあるように物語の中であちこち顔を出すさまざまな「教育」。
それはとりあえず両親が強いるオックスフォード受験や担当の女教師と語られる勉強の意味といった学習的な教育だったり、
あるいは美術にも詳しいジェニーを有頂天にさせるオークションをはじめとするアート全般に対するものや、大人の女としてのヘアーメイクやファッションに対してだったり、
あるいは、デイヴィッドによるジェニーの両親に対する言葉巧みな「教育」もあれば、当然のことながら大人な恋愛事情への教育などなど多岐にわたって描かれていく。

そしてそんな教育を経ていつだって男子より先に背伸びする女子ならではの世界が、強い知性と多感な感性を持った主人公を見事に演じきったキャリー・マリガンの好演にも助けられ極めて自然に描かれていたのでありました。

   

それにしてもこうした年頃の、そして賢くて可愛い女子はいつだって何とも「ちょい悪」な世界に好奇心がどんどん膨らむことか。
息子しかいないからまだしも、もし娘がいたら何ともたまらんだろうな、なあ~んて詰まんないことまで考えてしまったのであります。アハッ

全国公開はこれからみたいだけれど、あまりパッとしない今年のゴールデンウイーク作品の中では数少ないオススメ作品であります。
機会があれば是非!



今日の1曲 “ Sous Le Ciel De Paris ” :  JULIETTE GRECO

ジャン・ポール・サルトルやボリス・ヴィアンらアーティストのインスピレーションを刺激し、彼らから曲を提供され、「サン・ジェルマン=デ=プレの女王」と呼ばれていたジュリエット・グレコ。
そんな彼女が歌うシャンソンのスタンダード「パリの空の下」は多くの人たちにとってあの当時まだ見ぬパリへの憧れそのものだっただろうなあ。そんな気にさせてくれる名曲であります。



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