俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」 A History of Violence

2006年06月26日 23時39分55秒 | 時系列でご覧ください
淡々としながら何やらただならぬ雰囲気が充満していた長い長いファーストカットを観て、この映画の監督がデビット・クローネンバーグであることを思い出し、なるほどと納得。

ストーリーそのものは、罪深い昔の出来事を隠し温かい家庭を築き平凡な人生を歩んでいた男が、ふとしたことから昔の世界に連れ戻されそうになるという、西部劇あたりによくありそうな物語を踏襲していて、それ自体に新鮮味はない。

しかしながらそこに描かれる暴力の数々はまるで日常の延長というかすぐ隣にあるもののように思え、かつ死に方がもがき苦しむことのない殺され方をしている分だけ、カタルシスもなければ、おぞましさも感じなくなりそうな世界がここにはある。



常日頃いじめられっ子だった息子がはじめて暴力を自分の手にしたとき「暴力では何も解決しない」と息子に諭しながら、結局自分自身も暴力でしか問題解決の道を見つけられなかった主人公トム。
チアガールの衣装で「10代の頃に出会いたかった」と話して過去に遡ろうとしつつ、過去を知ったあとの暴力的な階段でのやりとりに行き場をなくす妻のエディ。
さらには父親を助けるために自ら銃で人を殺してしまう息子。

愛と暴力という表裏一体ともいえるテーマが重くのしかかる作品だった。

そしてトムの過去の姿が明らかになるにつれ、平穏だった生活の中に影が落とされ、不安から疑い、そして憎しみを経て、さらには理解へと進んでいこうとする家族の姿を描き出すラストシーン、家族のあり方すらここでは問われていたような気がした。



ある意味、キワモノ的評価がついてくるクローネンバーグだけど、そういった面は限りなく抑えられていて、いったいどこで正当性を見るべきか、あるいは国家レヴェルまで連鎖する「暴力」というものに対して真っ向から問いかけている力作であることに間違いないと思う。



今日の1曲  “ ATOMIC ” : BLONDIE

デビット・クローネンバーグといえば、やっぱり「ビデオ・ドローム」。「ビデオ・ドローム」といえばジェームズ・ウッズ、そしてブロンディのデボラ・ハリーということに勝手になってしまう、ということでブロンディ79年リリースの4枚目のアルバム“ Eat To The Beat ”からこの曲を。
74年、ニューヨークにて結成され“ CBGB ”で活動、76年にファースト・アルバムを発表したこのブロンディ、デビー(デボラ)・ハリーのキュートな歌声をフィーチャーし、シンプルでストレートなポップ・ロックを聴かせて80年前後にかなりブレイクしたバンドでした。
動画は毎度御馴染みのコチラから




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2 コメント

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おはようございます♪ (ミチ)
2006-06-28 11:23:31
またもやすごい映画に遭遇したという気分です。

銃でぶち抜かれた頭のアップなどは映す必要があるのか?と思うほどですが、そこがクローネンバーグたる所以ですね。

ラストは希望的な解釈をしてしまいましたが、エディの表情はどちらにも取れるような気がして・・・。
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こんばんは (mimia )
2006-07-03 23:50:00
>ある意味、キワモノ的評価がついてくるクローネンバーグ



苦手ですね~、私は恐がりなもので…。(冷汗;)

でも今回ちょっと見直しました。鬼才と呼ばれるわけがわかったような気がします。

やっぱり西部劇なんですね。私もそのテイストを感じました。
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