ナスペリオンの王様

2016-02-23 11:05:24 | 配合論

日本に入ったナスペリオン(NasrullahとHyperionの組み合わせ)の王様といえば、母父にHornbeamを持ちHyperion5×3・5とNasrullah=Rivaz5・5×4を持つトニービン

┌Hyperion
Hornbeam
│┌Nasrullah
└△

これぞナスペリオンと言うべきナタの斬れを伝え、(サンデー産駒が登場するまでは)東京の大レースでは無敵の存在でした

産駒の配合においても「ナスペリオンを継続クロスしつつ、トニービンに希薄な米血を1/4異系的に取り込む」というのが黄金配合で、パロクサイド牝系との間にエアグルーヴを、テスコボーイとの間にウイニングチケットを、Nureyev(Special)との間にジャングルポケットを、Blushing Groomとの間にレディパステルを出したのはご存知のとおり
http://db.netkeiba.com/horse/1998101786/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1990102314/

 ┌Nasrullah
┌○
パロクサイド
└△┌Hyperion
 └△

 ┌Nasrullah
┌○
テスコボーイ
│┌Hyperion
└△

  ┌Hyperion
 ┌○
┌○
Special
│ ┌Nasrullah
│┌○
└△

 ┌Nasrullah
┌○
Blushing Groom
│   ┌Hyperion
│  ┌○
└△┌○
 └△

2013年以降の芝G1勝ち馬で、トニービンの血を引くものはジャスタウェイ、ドゥラメンテ、ラブリーデイ、コパノリチャード、ヌーヴォレコルト、ハープスター、ワンアンドオンリーですが、この7頭がトニービン以外に血統表内に持つナスペリオンは

ジャスタウェイ…なし(Bushel-N-Peck)
ドゥラメンテ…Nureyev、Mill Reef、Hornbeam※、パロクサイド
ラブリーデイ…Nureyev、Mill Reef、Hornbeam※、シャダイチャッター
コパノリチャード…Blushing Groom
ヌーヴォレコルト…Nureyev、Indian Hemp
ハープスター…Fairy King
ワンアンドオンリー…Thatch(=Special)
※ドゥラメンテはHornbeam≒パロクサイド6×5・5、ラブリーデイはHornbeam6×5

最も有力なナスペリオンであるSpecialとの配合で最も成功しているのは当然といえば当然で、ドゥラメンテの配合なんて「3/4Northern Dancerクロス,1/4サンデーサイレンス」と「Hornbeam≒パロクサイドのニアリークロスを軸とするナスペリオンの継続クロス」、この二つ以外に語りようもない
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012104511/

ジャスタウェイだけはトニービン以外にナスペリオンを持ちませんが、Wild Againの母Bushel-N-Peckは父父がHyperionで母はNearco+Mahmoudなので極めてナスペリオンな血脈構成といえます
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106461/

 ┌Hyperion
┌○
Bushel-N-Peck
│ ┌Nearco
│┌○
└△┌Mahmoud
 └△

トニービンとWild Againといえばトランセンドがワイルドラッシュ×トニービンで、福島牝馬S3着フィロパトールはジャングルポケット×Wild Again

だからジャスタウェイの産駒の配合を考える場合も、トニービンとBushel-N-Peckのナスペリオンをどういじるか、まずそこから考えてみるのが入り口で、となるとNureyevとMill ReefとHornbeamを持つキングカメハメハ肌はひとまず有力な筋でしょう


コメント (17)    この記事についてブログを書く
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17 コメント

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Unknown (ノーマン)
2016-02-23 14:01:11
トニービン好きとしては、嬉しいエントリーです。個人的には、7頭の中にトニービン父系の産駒がいないのが寂しいです。
ジャングルポケットにももう一花咲かせて欲しいんですが。
後継で期待されるのはトーセンジョーダンでしょうか。種牡馬になるタイミングが難しかったですね。配合はサンデーとナスペリオンの取り込みが必要と考えて、産駒を待ちます。
返信する
Unknown (メテオ)
2016-02-23 14:05:40
前に栗山さんもコメントされてたと思いますが、ナスペリオンの王様トニービンのクロスはズブくなりそう。
今のところ出世頭はプラチナブロンドですか?
他で相当スピードを固定する必要がありそうですね。
返信する
Unknown (Unknown)
2016-02-23 16:35:36
グレイソブリンは特にハイペリオンと相性がよい印象があります。

少しずれるのですが、ナスキロの相性の良さの血統的根拠はどこら辺なんでしょうか?

はっきりしたものを見かけた事がないので(自分ではパッと思いつかないのです。)よろしければご教授ください。
返信する
Unknown (MJ)
2016-02-23 17:28:58
NasrullahとPrincequilloの間に配合的な根拠、強いクロスやニアリークロスは生じないですね
Nasrullahの柔らかな体質+Princequilloの長手の体型、これが良質のストライドを生んだというのが私の考えです
返信する
Unknown (たろう)
2016-02-23 18:46:57
ナスぺリオンやナスフリートなど、また新しい造語が誕生しましたが、ナスキロ、ハイインロー、グレビオ、クロぺリオンなどの旧作も合わせてみると、ナスぺリオンだけはかなり異質に感じられます。
ナスぺリオン以外の用語はニックスに関するものですが、ナスルーラとハイぺリオンは、世代こそ近いものの、ニックス関係にあるとは言えないでしょう。
父ナスルーラ×母父ハイペリオンの配合では、これといった大物は出ていませんし、父ハイペリオン×母父ナスルーラでも、ホーンビームが唯一のG1級の活躍馬でした。
しかし、望田さんが指摘されるように、現代の競馬ではナスぺリオンの血が猛威を振るっています。
これはどういうことなのだろうかと、ずっと考えていたのですが、たどり着いた結論は以下のようなものです。

ナスぺリオンは、笠さんの『サラブレッド血統史』が提示した父系の流れの、現時点での最高到達点である。

ちょっと大風呂敷に聞こえるかもしれませんが、それぐらい大きな意義を持つビッグキーワードであり、ナスキロなどのニックス用語とは次元の違う概念であると思います。
『サラブレッド血統史』によれば、19世紀末から20世紀初めの欧州馬産界の最大のテーマは、保守本流であるストックウェルの系統と、新興勢力であるガロピン~セントサイモンの系統との、対立と止揚ということでした。
その意味での最も成功した止揚パターンは、ファラリス×チョーサーのニックス配合であり、問題は一応の解決をみたと言ってよいでしょう。
しかし、20世紀に入ると新たに2つの問題、抬頭してきた米国血脈をどう取り入れるか、レディジョセフィン~マムタズマハルの快速母娘のスピードをどう活用するか、が大きなテーマとして浮上してきました。
とはいえ、この2つのテーマは、「ヘロド系」というキーワードでくくれば、根っこは同じ問題ともいえます。
20世紀前半における米国血脈とは、ようするに19世紀に米国で猛威を振るったヘロド系のスピードの血が蓄積されたものです。
ダイオメド(レキシントンの4代父)やグレンコーのように、欧州から売り飛ばされてやってきたヘロド系の種牡馬のスピードが幾重にも積み上げられて、米国血脈のスピードの基礎となりました。
ヘロド系は、クロスを重ねれば重ねるほどスピードが増すので、安直な近親交配が大きな成果をあげ、欧州でのハイフライヤーの系統や米国のレキシントンの系統は、セントサイモンの悲劇と同様の問題を引き起こして崩壊していきました。
しかし、アメリカで蓄積されたヘロド系の血は、レディジョセフィンの母父アメリカスに最良の形で濃縮されています。
アメリカスは、ノーフォーク=ザナン2×2の全兄妹クロスを持ち、その兄妹の配合は、父レキシントン×母父グレンコーという、19世紀米国ヘロド系の2大スターによるニックス配合でした。
一方、レディジョセフィンの父サンドリッジの配合は、『サラブレッド血統史』では、ロックサンドの配合と同様、ポカホンタスへの戻し交配として説明されています。
しかし、サンドリッジのスピードに注目するならば、ベイミドルトン≒グレンコー(ポカホンタスの父)7・6×6・6・6と見なすことも出来るでしょう。
サンドリッジとアメリカスの双方でグレンコー絡みのクロスが重要な働きをしています。
娘のマムタズマハルは、フランスで生き残っていたヘロド系の血を、アイルランドのエドワード・ケネディが蘇生させて作り上げた、ザテトラークを父に持ちます。
ヘロド系のクロスのスピード増幅効果を、日本人にも分かりやすく見せつけたのが、トキノミノルにおけるザテトラーク3×4でした。
レディジョセフィン~マムタズマハルのスピードは、欧州に残っていたヘロドの血と、米国で蓄積されたヘロドの血との再会によって生まれたと言えます。
さて、米国血脈と快速母娘の問題を、最もシンプルかつスマートな配合として解決したのは、ナスルーラだったでしょう。
父はストックウェル×セントサイモンの止揚の頂点に君臨するネアルコ、そして、祖母がマムタズマハルですから、まさに新時代の幕開けにふさわしい配合です。
しかし、なぜかアガ・カーン3世の評価は高くなく、引退と同時にアイルランドに売られ、やがてアメリカへと流れていくことになります。
ナスルーラは英米両地域でリーディングサイアーに輝き、20世紀後半はナスルーラ系の時代になるかと思われましたが、そこへ待ったをかけたのがノーザンダンサーでした。
『サラブレッド血統史』の提示した諸問題に対する、最も簡潔で美しい解答であったはずのナスルーラが、辺境のカナダからやってきたノーザンダンサーの軍門に降った理由は何だったのでしょうか?
その答えこそ、「ナスぺリオン」であったと思います。
ノーザンダンサーにナスルーラの血はありませんが、ネアルコとマームードの血をあわせれば、ほぼナスルーラでしょう。
つまり、ノザンダンサーの正体とは、「隠れナスぺリオン」であったということです。
ナスルーラとノーザンダンサーの違いとして、ハイぺリオンではなくネイティヴダンサーのほうに注目する考えは、残念ながら筋違いだと思います。
なぜなら、ノーザンダンサー以後に抬頭した最大の系統は、もちろんネイティヴダンサーの孫のミスタープロスペクターですが、いまだにノーザンダンサー系を王座から引きずり下ろすことに成功していないからです。
ナスルーラとハイぺリオンは、冒頭で触れたようにニックスと呼べるような相性のよさはありませんが、ひとたび嵌れば、とてつもない万能性と高いアベレージを叩き出し、のちのちまで大きな影響力を発揮しつづけます。
日本におけるナスぺリオンの万能性と破壊力を最初に見せつけたのは、テスコボーイ~トウショウボーイの親子でしょう。
ハイペリオンの血の有無は、プリンスリーギフトとテスコボーイ~トウショウボーイとの間に、越えがたい大きな溝を作りました。
トウショウボーイが、なぜ「お助けボーイ」になれたのか、という問いの答えも、ナスぺリオンというキーワードにあると思います。
こうした例は、他にも多く見られます。
ヘイローとサンデーサイレンスとの違い、ロベルトとブライアンズタイム&ダイナフォーマーとの違い、ミスプロとキングマンボとの違い、ハビタットとスティールハートとの違い、ネヴァーベンド&リヴァーマンとミルリーフとの違いなど、決定的ともいえる相違を作り出しているのです。
ナスぺリオンが機能すれば、アベレージが高く大物も出て、芝もダートも走り、欧米日どこへ持っていっても一定の成果をあげます。
例えば、ヘイローの血は、ほぼ南北アメリカ限定のローカル血統でしたし、大レースに強くない印象がありましたが、ハイペリオンが入ることによって、サンデー、グローリアスソング、デヴィルズバッグなどの大物が出ました。
ロベルトのほうも、自身は大レースに強かったものの、産駒は超一流のレースになかなか勝てなかったのですが、ハイペリオンを取り込んだブライアンズタイム&ダイナフォーマーからは、次々と大物が出ています。
ミスプロの血も北米を席巻したわりには、ケンタッキーダービーになかなか勝てなかったように大レースに強いとは言い難く、欧州進出も難航し、日本でもおおむねダート血統で片づけられていましたが、ハイペリオンの塊であるミエスクの血によってキングマンボが生み出されると、欧州でも日本でも大活躍、芝でも大物を輩出しつづけています。
キングマンボ以前にも、ミスワキが欧州進出に成功したかに見えましたが、ハイペリオンの血の無いミスワキは、日本ではマーベラスクラウンが目立つ程度でしたし、父系も伸びていきませんでした。
ナスぺリオンの成功例に共通する、万能性、ハイアベレージ、大物、後世への影響力は、ナスぺリオンというキーワードが、血統の歴史における現時点での最高到達点であることを示していると思われます。
望田さんは、途方もない大金脈を掘り当てたのではないでしょうか。
もちろん、ナスルーラとハイぺリオンの両方の血を持つ馬はたくさんいますが、ニックスではないので、ナスぺリオンとして機能しているか慎重に見きわめる必要があります(ナス+ぺリオン≠ナスぺリオン)。
しかし、ノーザンダンサーに引きつづき、サンデーとキングマンボの血が世界血統として大きな影響力を発揮していく可能性が強まっている昨今、ナスぺリオンの時代はまだまだ続きそうです。
簡潔で美しい血統史の総決算のような配合のナスルーラに足りなかったものが、欧州傍流血脈の親玉的なハイペリオンの血であったとは、なんとも皮肉なものですね。
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Unknown (MJ)
2016-02-23 21:02:26
これはおそらく、ブログのコメントとしては世界最長ではないでしょうか、gooの中の人もビックリ(・∀・)
そもそもNearco×Hyperionが逆ニックスと言われ、最も成功したNearcticから(Chaucer~St.Simonについての緊張→緩和によって)Northern Dancerが出たんですよね
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Unknown (Unknown)
2016-02-23 21:29:31
ご回答ありがとうございました!
以前、ニックには血統的な根拠がある、という考えにとても衝撃を受けたのですが、ナスキロには見当たらなかったもので、以来長年の疑問だったのです。

すっきりしました!
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Unknown (GoldAllure)
2016-02-23 23:33:53
たいへん読み応えがありました。
だから血統は面白い、深い、眺めるのがやめられないです
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Unknown (アサクサスケール)
2016-02-24 03:12:44
先日のアルーアキャロルもゴルア(ヌレイエフ)ですが「同じ理屈なのか…」と思いながら拝読させていただきました。

コパノリッキー…Woodman,トニービン,Alydar
マルカプレジオ…トニービン,Alydar

あたりもナスペリオン継続の良い影響でしょうか?
ま、みんな脚質は違いますが。
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Unknown (MJ)
2016-02-24 09:38:37
単体だとAlydarは圧倒的にBull LeaとRaise a Nativeの影響下にあるし、Woodmanは配合どおりラトロ肩とパワーを伝えますね
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