キングカメハメハ急死 松田国調教師「夢の固まりだった」
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ちょっと時間がとれないので、キャロットクラブ会報今月号の連載コラム「血は水よりも濃し」よりそのまま再掲します
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大盛況のセレクトセールの傍らで、種牡馬キングカメハメハの引退が正式にリリースされた。
2010~11年のリーディングサイアーで、2012~18年までディープインパクトに次ぐリーディング2位を堅持。ロードカナロア、ドゥラメンテ、ラブリーデイ、ホッコータルマエ、アパパネ、ルーラーシップ、ローズキングダムなど、あらゆるジャンルのチャンピオンを輩出した大種牡馬がついに引退である。
父Kingmamboは“マイルの女王”Miesqueの息子で仏2000ギニー馬。母マンファスは米G1サンタアニタダービーのThe Deputyも産んだ名繁殖。Mr.Prospector、Miesque~Nureyev、Sex Appeal~Buckpasser、Mill Reef、Nijinskyなど、様々なラインの有力血脈を受けており、芝もダートも短距離もマイルも中長距離もOKというオールラウンダーだった。
以前社台スタリオンで見せていただいているときに、事務局の三輪さんと「日本の高速馬場ではディープインパクトに、欧州芝12ハロンではGalileoに、豪州短距離ではRedoute's Choiceに、北米ダートではTapitに後塵を拝するだろうけれど、どこの国で種馬になってもリーディング2位はキンカメじゃないか」と語り合ったのを思い出した。
オールラウンドなだけに非常に配合に素直な種牡馬でもあり、活躍産駒の母方の血とレースぶりを見れば、トニービンとは(ナスペリオンとは)、Mill Reefとは(ナスキロとは)、Specialとは、Buckpasserとは、Tom Foolとは、Nijinskyとは、そんな有力血脈のイメージをだいたい掴むことができるのである。
当クラブの活躍産駒の血統表を見ても、レイデオロ=レイエンダ兄弟は母母レディブロンドが持つTom Foolのニアリークロスを代々継続しているので機動力に富み、折り合いさえスムーズなら俊敏自在なレースができるのが最大のセールスポイントといえる。
リオンディーズはNureyev≒Sadler's WellsとNijinskyのクロス。シーザリオの仔らしい伸びのある体型と豪快なストライドと危うい気性が魅力で、産駒も見栄えのする馬体が目につく。
トゥザグローリー=トゥザワールド兄弟はNureyev4×3。フェアリードール牝系特有の「HyperionとLady Juror」的な粘着力と機動力が武器で、中山や阪神の内回り2000mを力強く捲るイメージだ。
フィフスペトルはキングカメハメハの初年度産駒でオータムHに勝ちマイルCS2着。NijinskyとMill Reef≒Rivermanのクロスで、Bahriとラストタイクーンが強いマイラーらしいマイラーだった。
Northern Dancerの血を全く引かないディアデラノビアとの配合も、ディアデラマドレやディアデルレイなどコンスタントに成功。牝馬は斬れタイプ、牡馬はパワータイプに出るのはこの牝系の特徴といえる。
クリプトグラムは母母父がアンバーシャダイで牝祖シャトーフォモサがHyperion4×4。古馬になってこの母系のスタミナが開眼し3連勝で目黒記念に勝った。
クルーガーはドイツ牝系で、母父ディクタットはIn Realityの欧州パワーマイラーだから、タフな馬場が得意で小脚がきく長めマイラー。豪州遠征は英断だった。
キングカメハメハはNorthern Dancer4×4・6を持つが、オールラウンドで頑強で、様々なジャンルのチャンピオンを輩出したというのはNorthern Dancerの特長そのもの。日本で供用された最もNorthern Dancer的な種牡馬だったと思う。お疲れさまでした。
さて現役時代の過酷なダービーやあちこちでの「あっさり勝ち」の印象も残っていますが繁殖の面でもとても生産孝行な馬だったと。今後少なくとも一定の期間はこのようなタイプの種牡馬にはなかなかお目にかかれないのかなあという気がします。気がするだけかもしれないですが。