波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

大学の階段   №14

2012年08月09日 | 新聞掲載

 丘の上に赤れんがの大学がある。だが、そこで何が行われているのか私は長Photo_2 く知らなかった。「子育て運動の街」稚内の教員として失格かもしれない。大学の敷居は昔から高い。恥ずかしい話だが、最近まで単位不足の悪夢で何回もうなされていた。

 少し変わったのは、大学のすぐ下の中学校へ転勤してからだ。大学で作文を教える機会があった。数学の楽しさを中学生に伝えたい、大学を応援してくれる稚内に貢献したい、という青年たちの熱い思いを知った。生徒と学生の行き来が始まった。遠足をもじった進路学習の「近足」では、「大学生ってすごい。僕たちが絶対に理解できない授業を真面目に勉強している」という感想があった。豊かで真剣な学問の世界を肌で感じることは、若い時ほど大切だ。
 近くて遠い学校が、近くて近い学校に変われば、近道の斜面に道ができ、そこに階段ができるかもしれないと生徒に話した。すると、PTAが鉄製の階段を作ってくれた。往来が急増した。道内初の「公設民営」が、この大学の出発点だったことを思い出した。

 先日、社会人になった教え子が学んでいる夜間授業をのぞかせてもらった。アフリカの「子ども一人育てるには村中の人が必要」ということわざを教わった。この街の精神を、この大学で実らせたいと強く思った。外は暗くなったが、眼下の街の灯に照らされたあの階段が教室の窓から見えた。(8/9 北海道新聞)

今回は苦労した。書きたいことをもっと絞る必要が…と思いつつ時間が無かった。触れておきたいと前から思っていた大学のことを何とか書いた。

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