ミャオの家より

今はいないネコの飼い主だった男の日常

ワタシはネコである(41)

2008-04-14 16:15:21 | Weblog
4月14日 快晴の空が広がり、その青空に満開の山桜の花がきれいだ。気温も20度くらいにまで上がった。
 どっこい、ワタシは元気に生きていたのだ。11日の昼過ぎのこと、飼い主が出かけた後、ベランダで寝ていると、オスネコの声がした。ワタシは体が少しだるい感じで、余り気乗りしないのに、そのオスネコがしつこくするので、とうとうキレて、ケンカになってしまった。相手の気持ちも考えない、デリカシーのない男どもにはウンザリだ。
 しかし、体の小さなワタシは、したたかにやられてしまった。二箇所に傷を受け、血が滴り落ちていた。家のドアは閉まっている。どこかに逃げないと、また襲われるかもしれない。飼い主と行く散歩コースの一つ、家から遠く離れたあそこなら、他のネコも来ないはずだ。
 ワタシは、その人の住んでいない家の軒下で、ひたすら傷が治るのを待ったのだ。腹はすくし、サカナも食べたかったが、飼い主が戻ってきているかどうかも分からない家に、帰るわけにはいかない。あのオスネコがうろついて、危険なのだ。
 11日の夕方から、12、13日と過ぎ、そして今日の昼前、懐かしい飼い主のワタシを呼ぶ声がして、思わずワタシもそれに応え、お互いにミャーミャーと鳴きあった。久しぶりに見る飼い主の顔は、その鬼瓦のような顔が、涙でクシャクシャになっていて、ワタシを抱きかかえて頬ずりをした。
 500mほど離れた家に戻る間、飼い主はワタシを抱いたまま歩いて行こうとしたが、ワタシはそれほど弱っているわけではない、何度もイヤイヤをして下におろしてもらった。
 家に着くと、飼い主がキャットフードとミルクを用意してくれたが、三日も食べていないのに、余り食欲はなく、ミルクを少しなめただけだった。それでもともかく、飼い主のいる安全な場所で、日の光がいっぱいのベランダで、ゆっくり寝ることができるだけで十分だった。
一方で、飼い主に話は・・・。
 「今日の朝、あのおじさんの所へ、キャットフードを持って、よろしくと頼みに行ったのだが、なんとミャオは来ていないとのこと。
 どこに行ったのだミャオは、悪い予想が頭の中を駆け巡る。よその人にはなつかないから、誰かについていくとは思えない。用心深いから、クルマにはねられることはありえない。考えられるのは、病気かケガをして、その回復のためにどこかに潜んでいることだ。前に、精神的なショックから食べられなくなり、草むらにいたことがあったからだ。
 それで、何としてでも探そうと、最悪の事態も覚悟して、歩き回ったのだ。そしてよく行った散歩先の所で、名前を呼んだ時、何度目かに、小さく声が聞こえ、さらに強く呼びかけると、はっきりと鳴き応えてくれた。
 何と嬉しい、ミャオの声だったことだろう。良かった、本当に良かった。この三日間の辛い思いと緊張が、一気にはじけてしまい、あふれる涙を抑えることができなかった。他に誰もいないからいいのだ、ミャオとオレだけだから。
 家に戻ってきて、オマエがベランダに寝ている姿を見て、やっと安心することができた。しかしよく見ると、右の耳の傍に血の塊のカサブタが一つ、さらにアゴの所にも一つある。今まで見たこともないような傷だ。怖かったんだな、ミャオ。
 とてもそんなオマエを残して、あと二日で、北海道に行ってしまうわけにはいかない。少なくとも、一週間は先に延ばさなきゃ。それとも連休明けにするか。せっかくのバーゲン・チケットが無駄になってしまうが、そんなことは言ってられない。ともかくオマエが落ち着くまでは、ちゃんといるから。」