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読書 高杉 良「混沌」

2007-09-07 10:01:17 | 読書

              
 上下巻800頁以上になるが、読ませるというものではない。バブルがはじけて金余りで浮かれ騒いだツケが巨額の不良債権として金融界を大津波のように襲った。 日本の超一流といわれた銀行が軒並み傾いた。税金の注入で一息ついたものの、単独では立ち居かない銀行も多く合併が促進された。
 いまの銀行名で、旧銀行を推し量ることは出来ないくらい合併に次ぐ合併だった。そんな状況を一都市銀行の広報部長竹中治夫の目を通して描かれる。ただ、出てくる人物の特徴、例えば身長や体つきルックスそれに着ている服装などが書き込まれていないので人物像を具体化できない。

 例えば、不倫相手の24歳の恋人などに苛立ちを覚える。美人というだけでイメージをこちらに任されたままだ。たまに服装にふれているが、若い恋人の淡いブルーの上着にベージュのスラックスだったかスカートのどちらかだったが、この配色はメリハリに乏しく野暮ったい。
 ロンドンのビジネススクールに留学するほどの女性なら、もう少し垢抜けしてもよさそうだ。それ以外にも首をかしげたくなるのが多々ある。そんな具合に全体として垢抜けない。
 
 物語はまるで舞台劇のように、動きが少なくほとんど銀行の内部でのやりとりで退屈する。それに会話に緊迫感がなくしかもサラリーマンのペコペコする様が嫌になる。
 ここに書かれているような、歩いて十分ほどの相手銀行に行くのに社用車を使うとか。部内の打ち合わせに秘書を煩わしてお茶を出させるなどがある。
 実際にこんなことをしているのだろうか? だとすれば昔の企業体質から抜け出ていない。効率も悪いし行動力を疑う。これでは外資にしてやられるのは目に見えている。意識の転換が急がれる。

 800頁にも及ぶ長大さに、なぜなのだろうと思っていると、巻末に初出として東京スポーツ2003年4月8日~2004年4月4日までの新聞連載とあった。要領よく書けば400頁で充分だろう。いずれにしても、この作家のほかの作品を読むことはないだろう。
 ちなみに、著者は1939年東京生れ。科学業界専門誌の記者、編集長を経て、‘75年「虚構の城」でデビュー。以来、綿密な取材に裏打ちされたリアリティに富む経済小説を次々に発表と図書館の検索ページにあった。

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