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人生観を変えるほど衝撃を受けたノンフィクション「セックスボランティア」

2010-03-01 12:22:24 | 読書

        
 この本にたどり着いたのは、映画「アウェイ・フロム・ハー/君に思う」でアルツハイマー病の妻と男の話を観て、痴呆症の情報を検索している時に、偶然この本が飛び出してきた。早速図書館から借り出した。
 最もショックだったのが69歳の男性。
 *脳性麻痺による両上肢機能障害者(日常生活動作不能)
 *移動機能障害(歩行不能)それに気管切開により酸素吸入器常時使用及び言語障害。
 要するに、両腕が動かない脚も動かない言葉も喋れないし、酸素吸入器でしか生きていけない。しかし、食べることや排泄は健常者と同様で、もっと深刻なのは性欲があることだ。 この状態でどのように欲求を処理しろというのか。自慰すら出来ない。施設の人の手を借りているらしい。読んでいくにつれ活字が霞んでくる。神様はいったいどのような考えで、このような人をお作りになったのか? 
 それでもこの人は、女性の肌に触りたい温もりが欲しいと切実な願望を持ち続けた。一生童貞で終わるのは厭だ! 鬼気迫るのは介護の人に風俗店に連れて行ったもらいセックスをする場面だ。
 セックスに吸入器は邪魔になる。酸素の容量は約1時間半だそうだ。それを外して、まさに命を賭けたセックスを敢行する。それほどの思いをどう受け止めればいいのか。涙が止まらなかった。
 今まで障害者の性についてあまりにも無知だった。まるでカウンターパンチを食らったように背筋が寒くなるほどの衝撃を受けた。もっと衝撃的なのは、自分が何が出来るのか、全く見当がつかないことだ。現場の障害者の介護施設では、この問題に真剣な人とあまり考えない人もいてまだまだはっきりとした道筋が見えていない状況のようだ。
 この男性の話以外にも、聴力を失った女子大生が障害者のセックスの相手をする話、女性障害者がホストの男性を自宅に呼びお風呂に入れてもらって、セックスのサービスを受け幸せな笑顔を見せる話。オランダでの取り組みなどが収められている。
 これからの重要な課題として一読の価値がある。著者の河合香織さんは、1974年生まれというから取材を始めた2001年は、まだ27歳ということになる。この人にも敬意以外お届けするものが見当たらない。

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