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記録として重要な外間守善著「私の沖縄戦記~前田高地・六十年目の証言」

2015-08-04 16:59:59 | 読書

             
 ユージン・B・スレッジ著「ペリリュー・沖縄戦記」を読んだあと、沖縄戦について日本側の戦記を探してこの本を手に取った。

 前半は米軍との戦闘と敗戦後の様子が語られ、後半は従軍した人の手記が掲載されている。当然のことながら、スレッジの書いた米軍側とこの本は、貝合わせのようにぴたりと符合する。

 米軍が沖縄に上陸したとき殆ど抵抗がないと記述があったが、この本では米軍をできるだけ引き付けておいて、隊列が長く伸びるのを待って両側から挟み撃ちの攻撃を目論んだとある。

 これを従深防御というらしい。この作戦は、ペリリュー島で実践していて、スレッジも書いている。

 戦局が日本に不利になるにしたがって、天皇直属の最高指揮機関である「大本営」が戦果を捏造していて、外間たちが頭上を数百機が通り過ぎるのを期待を持って眺めたのも、二日後「台湾沖航空戦で撃沈空母11、戦艦2、巡洋艦3、撃破空母8、戦艦2、巡洋艦2」と大本営は発表した。これが嘘だと後で判明する。というのも、これだけの戦力が阻害されればアメリカ機動部隊は壊滅したはずだ。それが上陸作戦に姿を現した。

 国民を欺き通した大本営。両軍の死闘は広島・長崎への原爆投下で終わる。この著者も言う。首里攻防が終わった時点で降伏していれば、沖縄の悲劇はなかったはずだと。その通りだろう。

 嘘つきの軍部だからそれは毛頭なかったんだろう。本土決戦、竹やり作戦とはなあ。当時の軍部は頭がおかしくなったとしか思えない。

 戦場に付きものの補給という問題。激戦が続くとこの補給がスムーズにいかない。アメリカ軍とて同様、味気ない携行糧食ばかりでは飽きがくる。たまたま戦死した日本兵の背嚢に入っていたホタテの缶詰がことのほか美味だったとスレッジが書くと、外間もアメリカ兵の残したジャムの缶詰をむしゃぶり食ったというから絶えずひもじい思いだったんだろう。

 戦記の書き方が対照的なこの二冊。外間守善の方は、淡々としていて感情の入る余地が少なく記録として重要。スレッジのは、非常に細かい描写があって臨場感を味わえる。そして戦争というものをより深く知ることになる。

 なお、スレッジの「ペリリュー・沖縄戦記」と海兵隊員として太平洋戦争に従軍したジャーナリストだったロバート・レッキーの「Helmet of my pillow」をベースにしたテレビ・ドラマ「ザ・パシフィック」が作られている。スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスの製作による。このシリーズでは、ロバート・レッキーとユージン・スレッジが海兵隊員として名前を連ねている。ほぼ原作に忠実のようで、生々しい戦場が再現されている。
           

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