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読書 デボラ・シャープ「ママのトランクを開けないで」

2010-06-18 10:37:53 | 読書

            
 シャーベットオレンジのパンツスーツを着て、それに合わせたパンプスを履いたママ62歳のロザリー・デブローが警察署で座っていた。原因はママの車のトランクから男の死体が発見されたからだった。
 ママには三人の娘がいる。長姉のマディ、中学校校長。末っ子のマーティ、図書館司書。そして次女で主人公のメイス、森林公園で動物保護の仕事をしている。
 女四人の個性を際立たせながら、メイスが犯人に近づいていく。犯人探しの物語はどこにでもある。いずれ犯人が分かることも決まっている。そこまでの過程をどう描くかが勝負の分かれ目だ。
 この本は、アメリカン・ミステリーによくあるユーモアや比喩が横溢しているが、ちょっと回りくどく感じるところもある。ところはフロリダ州オキチョビー湖の脇を走る州道98号線にあるヒマーシ(架空の町)。メイスが警察署に入っていって「すみません」と言った。受け付けの彼女は雑誌から顔を上げ、私のことを、道端で踏んづけて靴の底にくっついた何かででもあるかのように見つめた。これはくどいと思った所の一つ。
 マディからの褒め言葉は、七色の猫よりも珍しいとか闇よりほかに何も見えなくなったは、気の利いた言い回し。それに面白いのはメイスの朝食で、バターを塗ったトースト二枚にバナナのスライスを挟んだものだ。食べたことはないが、悪くはない気がする。私の朝食もトマトジュース、ベビーチーズ一個にバナナ一本だから。
 もう一つ面白い比喩。メイスが行方不明になった女性が飼っている猫を誘い出すとき、猫というものは男みたいなもの、興味を示しすぎるとそっぽを向いて逃げてしまう。知らん顔をすると必死で追いかけてくる。というのを思い出す。これは何も男だからでなく、女も同じだろう。
 それに女が男を見る目は、どんな目なのか。厚い胸板に引き締まった腹を見るメイスは疼きを感じる。これなんか男が女の胸や尻に感じるものと共通している。しかもメイスは、寝る時はトランクスを脱ぐのだろうかと頭の中をめぐらす。
 女性たちを個性豊かに描いてあるが、もっと言えば中学校長のマディ、図書館司書のマーティの私生活の描写をサイドストーリーとしてあれば厚みのあるものになった気がする。
 著者は、1954年フロリダ州生まれ。ジョージア大学大学院卒業。USAトゥデイ紙に記者として20年以上勤務したのち、2008年に本書でデビュー。3作まで上梓されている。 

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